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鍵士無双  作者: キャットフード安倍
第一部・ローゼン王国編
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昇級試験②

 ダンジョンの入り口で試験官でもあるBランク冒険者から説明を受ける。


 試験はいたって簡単なもので地下五階層にいるダンジョンボスを倒して帰還すること。これだけだ。


 「……というわけで俺は緊急時以外手は出さないからそのつもりで臨んでくれ。話しは以上だ」


 お坊ちゃまくんがノリノリで先陣を切ってダンジョンへ入っていく。残された面々は微妙な面持ちで彼のあとを追った。


 ダンジョン内部は石畳が敷かれ、ゴブリンさえいなければどこかの地下通路といった雰囲気である。等間隔で松明が灯されどうやら一階は一本道のようだ。正面の奥まったところに下へ降りる階段が見える。


 「本当に初心者用なんですね……」


 すでにゴブリンと接敵しているお坊ちゃんPTの戦闘を最後尾から見ていたらつい感想が漏れてしまった。


 騎士のお姉さんがゴブリンのターゲットをとり、魔術師が他の個体を眠らせた。修道士から強化魔法をかけてもらったお坊ちゃまくんはゴブリンの背後に周ると頭から真っ二つにし、寝ていたやつも同様に処理した。


 一階にいたゴブリンはこの二体だけだったのでお坊ちゃんPTはさっさと階段を下りて行ってしまった。


 ゴブリンの死体は霞のように消えていった。ダンジョンで生まれた魔物はダンジョンに還るのだ。


 魔物が消えると魔石をドロップするのだが魔石は粉々に砕け散っていた。魔石は魔物の心臓の位置にあるのだが、あのお坊ちゃまくんの倒し方では無傷の魔石を手に入れることはできない。


 「あーあ、もったいないなー」




 地下二階層はさすがに一本道ではなかったがいたって単純な造りだった。魔力を辿って先行しているPTを追うとT字路の前で待ち構えていた。


 「おい!遅いぞ!」


 「はいはい、すいませんでしたー」


 軽くあしらいT字路を左へ曲がると後ろから呼びとめられた。


 「勝手に行くんじゃない!このPTのリーダーは俺だぞ!ここは右だ!」


 「そっちはゴブリンがたくさんいるから左に行った方がいいんじゃないかな」


 「黙れ!ここはリーダー権限で右にいく!」


 そう言ってさっさと右側の通路を進んだお坊ちゃんPTは案の定ゴブリンとの戦闘に突入した。


 「試験官さん、先に行ってもいいですか?」


 「構わんがボス部屋の前で待ってろよー」


 「了解しましたー」


 これ以上あいつには付き合ってられない。護衛の人たちも大変だな。






 最下層のボス部屋の前でかなりの時間待たされている。なぜこんなに時間がかかるのか訳が分からない。


 途中から所々罠が仕掛けられていたがあんな単純なものに引っ掛かるものだろうか。


 しばらく待つと、肩で息をしながらお坊ちゃまくんが到着した。他の者たちは別の意味で疲れているようだ。


 お坊ちゃまくんの休憩が終わり漸くボス部屋の扉を開けようとしたところ試験官が待ったをかけた。


 「ここから先はマルボロと坊ちゃん以外戦闘に参加するのは禁止な」


 「な、なぜです!そのようなことは承服いたしかねます!」


 騎士のお姉さんが食ってかかる。


 「ん?だって他の三人はここへ来るのは初めてじゃないだろ?騎士団の訓練で来たことがあるはずだ。それにここまでの道中だって止めは坊ちゃんが刺してはいるが、実質お前ら三人で倒してるようなもんだしな」


 「「「……」」」


 正論すぎて何も言い返せないという現場を初めて見た気がする。


 「別に構わんぞ。ソロでもいいくらいだ」


 お坊ちゃまくんはボス部屋の扉を開けるとそのまま中に入ってしまった。


 「おいマルボロ!坊ちゃんを守って怪我だけはさせるなよ。なにかあれば俺が怒られるからな!」


 「えー、だったら素直に護衛させとけばいいのに……」


 愚痴りながら中に入ると呪術士タイプのゴブリンにお坊ちゃまくんは突撃していくところだった。


 「おい馬鹿止まれ!」


 思った通り潜んでいた伏兵のゴブリンに取り囲まれてしまった。だが幸いにもお坊ちゃまくんは高価そうな鎧を身につけている。


 「頭だけガードしてじっとしていろ!」


 お坊ちゃまくんがボコボコにされているのを尻目にゴブリンたちを屠っていく。最後の一匹を倒してボスに向き直る。


 「桜花一閃!」


 薄い桃色の残像を置き去りにして一瞬でボスのわきをすり抜ける。


 首のないボスゴブリンの身体が崩れ落ちてあとには魔石だけが残されていた。


 この武技はボス部屋に向かう途中で覚えたものだ。一度も耳にしたことがないのでサクラのオリジナルかもしれない。


 「俺が囮になっている間に貴様が倒す、作戦通りだな!はっはっは!」


 「……」




 気付けば自分とお坊ちゃまくんの足元には宝箱が出現していた。なぜか自分のものは手の平サイズで、しかも中身が入っておらず散々馬鹿にされたが気にしない。


 それは宝箱をすでに鑑定済みでこの箱こそがお宝だと知っているからだ。


 試験はこれで終わりとなり、試験結果は後日ギルドで聞けるとのことでダンジョンを出たところで解散となった。


 それにしても疲れた。自分にPTはむいていないかもしれないな。


 


 


 


 


 

 

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