記憶の在処④
お婆は知っていることは全て話してくれた。だがスキルが発現した要因はわからないという。そもそも死霊術でスキルを付与することなどできないらしい。
いったい自分が誰でどこで何をしていたのか……。
秘密を全て打ち明けて何やらスッキリとしたお婆が提案する。
「千里眼を使えるようになった今なら脳にアクセスすれば何かわからないかね?」
(目)がマルボロたちの頭の中を千里眼を使って見てゆく。他のマルボロには一瞥しただけだったが俺だけやたらと時間がかかっている。
俺の額から視線を外した(目)は他のマルボロをもう一度確認すると備え付けの姿見で自身を確かめると俺の前まで来た。
「お前の頭の中だけ黒くて見えない」
「俺だけ?」
「ああ、お前以外は元の人格からかけ離れ過ぎてもはや別人になってしまったんじゃないか?」
(目)によると俺の頭の中は「天上の楼閣」と同じように黒い靄がかかって見えないらしい。つまり俺の記憶は何者かによって制約を受けているということだ。
あのダンジョンに張ってあった結界を破ることができたということは俺の記憶を封じている何かも解除できるかもしれない。
「とりあえずアクセスしてみるか」
調べ終わった(目)は俺の頭から手を離した。
「アンロックできそうだがどうする?」
「一応影法師を出しておいたほうがいいかもな」
「ああ、用心に越したことはない」
他のマルボロたちが言うようにしたほうが安全だろうが分身体は創らないことにした。
「いや、このまま記憶の封印を解除しよう」
「危険ではないかね」
お婆は心配しているようだが心変わりはない。
「今だって五人のマルボロが存在してるんだよ?さすがにこれ以上増やしてもね」
「それもそうだな。それにこれを解除するのは簡単だし」
そう言ってマルボロ(目)は再び俺の頭に手を添えた。
「アンロック!」
『じゃあな兄弟……』
その念話を最後に俺の意識は途切れた。




