終焉の光
連合国軍は国境を越えた辺りでいったん陣を敷くようだ。すぐに参戦しないところをみると両軍が内輪で潰し合った後でおいしいところだけもっていく腹積もりなのかもしれない。
「俺がゲオルグを背負って連中の向こう側に行く。向こうから壁で挟み込んだらアレスはカコスを呼び出して暴れさせろ。サクラとゲオルグはカコスが討ち漏らした奴をかたずけてくれ」
「マルボロ、それだと時間がかかり過ぎる。ここは僕に任せてくれないか?」
アレスが積極的に意見するのは珍しい。何か策があるのかもしれない。
「……わかった。何か俺たちにできることはある?」
「マルボロは僕らの周りの空間を固定してくれればいい。それから僕が魔法を唱えたらみんな目を瞑ってね。僕がいいと言うまで絶対に目を開けないこと」
「了解した」
アレスが「銀の書」を手にしアガサを呼び出す。
『ハコ!そっちにアガサを向かわせたから戻ってこい!』
連合国軍の頭上に光球を創りだしたアガサはただちに帰還した。
サクラとハコは擬人化を解かせ俺が身につけている。
鉄の壁に遮られて宙に浮かんだ光球しか見えないが、アレスはその光球を標的に魔法を唱えた。
「終焉の光!」
アレスは球体に戻って俺のハーフローブのフードの中に飛び込み俺とゲオルグは光球に背を向け目を閉じた。
念のため普段よりも強固にそして二重に空間を固定した。音も遮断しているため何が起きているのかわからないが目を閉じているにもかかわらず視界は真っ白だ。
アレスから合図があったので目を開き後ろを振り返ると、鉄の壁はドロドロに溶かされ連合国軍がいた場所の地面は大きく抉れ肉片さえ残っていなかった。
影移動を使って集合場所であるネイサン近郊の森までやってきた。
ゲオルグはサラに乗ってこちらへ向かっているが到着するころにはすべてが終わっているだろう。残念ながら影移動で他人を運ぶことは出来ない。本人のみが視界の範囲内の影及び影法師のいる場所へ瞬時に移動できる。ただし擬人化していないハコやサクラは例外だ。
「おい戻ったぞ!」
「「「早すぎだろ!」」」
「アレスが一撃で殲滅したからな。で、戦況は?」
「数の上では大公軍が勝っているが今のところ互角だな」
「大公軍は四方を囲まれているからな。左右からはミア率いるラミア部隊とゼルマン率いるアンロカーズが、背後からは俺たちが倒した元大公軍をぶつけた」
ヘルムート、リーデルの兵士たちは待機させている。連合国軍一万を参戦させれば勝敗は決するとの判断からだ。むざむざ死なせる必要もないだろう。
「ハコ!連中を出してくれ!」
ハコが一万人分の魂を地面にぶちまけた。
「アンロック!」
目覚めさせた元連合国軍の兵士たちに命じる。
「敵は大公軍だ!お前ら俺に続け!」




