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鍵士無双  作者: キャットフード安倍
第一部・ローゼン王国編
33/85

天上の楼閣③

 「天上の楼閣」の最上階まで空中を上ってきた。背負ってきたエマを中空に下ろすとぎゃーぎゃーと騒いでいたが気にしない。これから外の壁を破壊して中に入らなければならないのだから。


 見るからに頑丈そうな外壁だ。金剛化した拳で殴り壊す予定だが身体の生身の部位を保護するため身体を強化しなければならない。骨、肉、皮膚を個別に「ロック」し最後に全体を固定する。これで殴ったときの衝撃から身を守れるだろう。常にこの状態を維持するのもいいかもしれない。


 「金剛!」


 拳を振り抜くと轟音と共に外壁に大穴が開き、中に入ると何もない殺風景な広間の中央に聞いていた通りの男が佇んでいた。


 年齢不詳の線の細い長身の男だ。顔つきは若いようだがその表情は老獪さを漂わせている。


 「あんたがちょっとだけ強くしてくれるとかいう噂のこのダンジョンの主か?」


 「まあ、簡単に言うとそうだね」


  男は手を翳しただけで直した壁を確認しながらやれやれといった具合で答えた。


 『みんな出ていいよ』


 エマの他に連れてきたのはフリッツ、クリスティーナ、ハコだけだ。念のためハコの「擬人化」はロックしてある。


 「さっそくだが頼めるかな」


 「……、君が以前ここへきた者たちの主か……」


 まるで値踏みでもするかのような視線を無視して答える。


 「ああ。それであんたと戦えば強くしてもらえるのか?」


 「んー、今回戦闘は免除するよ。手合わせはただの暇つぶしにやっていただけだから」


 「それではこの三人からよろしく」


 男はエマの額に左手を翳した。





 フリッツとクリスティーナは完全な人に戻りそれぞれ四つ目のスキル「絶倫」「再生」を手に入れて抱き合っている。


 エマは俺たちの事情を知らないため自分だけ四つ目のスキルを得られなかったことに憤慨していた。


 「さて、残るは君と小さいお嬢さんだけだね」


 「いや、俺たちは結構だ。それよりも教えてくれよ。あんたが何故こんなことをしているのかを」


 ダンジョン主が敵である冒険者を強くすることにどんな意味があるのだろうか。


 「僕をここから解放出来る者をおびき寄せるためだよ。随分と時間がかかってしまったがやっと君が来てくれた」


 「お前は人型の魔物の類だろう?おそらくここから出してやることは可能だろうが俺に何の特があるんだ?」


 返答しだいだがこの男は殺すつもりだ。人の姿をしているがダンジョン主なのだから倒すのは当然だろう。それに上手くいけばこいつの能力が手に入るかもしれない。


 「魔物とは酷いな。僕はもともと人間だよ。もっとも遥か昔に人であることはやめたけどね」


 人でないのであれば尚更殺してしまったほうがいいだろう。こいつのスキルがあればみなをもっと強化できるに違いない。


 「おいおい、何か物騒なことを考えているだろう。顔に出てるぞ。頼むよ。むかし神々に喧嘩を売って返り討ちにあってね、かれこれ百三十年程ここに閉じ込められているんだ。もしここから出してくれたら、君のもつ三つのスキルを統合してスキルの枠を二つ空けてあげるよ」





 結局男の提案を受けることにした。


 自分のスキルを二つも自由にできるなんて魅力的すぎる。念願だった武器スキルもいいし他の魔法も使ってみたい。ああ、夢が広がるな。


 「妄想してるとこ悪いけどさっそく始めるよ」


 「あ、ああ頼むよ」


 男はみなのときと同じように俺の額に手を翳すと一瞬の内にことを終えた。


 「で、纏めたスキルは何というんだ?」


 「鍵魔法」


 ……。


 「なんかださくないか?」


 「鍵士が使う魔法だから鍵魔法」


 『ぷっ!あんたにぴったりじゃない!』


 ハコを無視して約束通り塔を覆っていた結界を解除した。


 「ああ!やっと自由の身だ!この時をどれほど待ち望んだことか!」


 「それであんたはこれからどうするんだ?」


 「まあ、しばらくは大人しくしていることにするよ。そんなことより君も気を付けたほうがいい。君も人のことわりから大分外れているようだしね」


 「どういう意味だ?」


 「だって君さ、百三十年前から歳をとってないじゃないか。なぜか僕のことを覚えていないようだけどね」


 男は言い終わると同時にまるで最初からそこにいなかったかのように目の前から消えてしまった。


 「……」


 釈然としないが考えるのはすべてを終わらせてからだ。


 ヘルムートへ戻ったら本格的に戦の支度をしなければならないのだから。


 




 

 


 



 




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