アンロック
露店の主は魔術師然とした灰色のローブを身に纏ったお婆さんだ。
地面に敷かれた絨毯にはアクセサリや用途のわからない魔道具などが乱雑に並べられている。その中にお目当ての剣が鎮座していた。
その剣は赤い鞘に納められ柄は黒い皮紐で巻かれた美しいものだった。
ウサギを狩れるようになってからというもの食費を切り詰めこつこつと貯金していたが足りないかもしれない。
「この剣はおいくらですか?」
「ここにあるものはすべて金貨一枚、1万ゴールドだよ」
安すぎる。剣ほどではないが他の物もそれなりに魔力を感じる。
剣を「魔力鑑定」してみると、
【頑丈な刀剣】【性別・女】【相性・100%】【???】【???】
???のところは「アンロック」すると読めるようになる。
ますます欲しくなった。幸いにも買える金額だ。
「なぜそんなに安いのですか?とても良い物ばかりのようですが」
「どれもこれも訳ありの呪われたアイテムばかりだからね。この剣、刀という珍しい武器だがたいした性能でもないから観賞用に飾っておくしかないのだけど……でるんだよ、幽霊が。それでいつもわたしのことろへ戻ってきちまうのさ」
胡散臭い。詐欺師だろうか。ただこの刀が俺にとってはいい物であるのは間違いない。
なけなしの金貨一枚を支払い刀を購入した。迷いはなかった。なんといっても相性100%だ。悪い物であるはずがない。
「まいどあり。返品するときは半値で買い取るよ」
念願の剣もとい刀を手に入れ、貧民街へはやる気持ちを抑えながら帰宅した。
さっそくいつもの森までやってきた。
昨日は恒例の命名式にてこずり魔力の解放まではできなかった。名付け終わると睡魔に勝てずそのまま刀を抱えて寝てしまった。
この刀にはサクラと名付けた。伝説のSランク冒険者の名を頂いたのだ。ちなみにどんな偉業をなしたのかは知らない。
「目覚めよサクラ!アンロック!」
刀はまばゆい光に包まれた。俺の魔力が全体に染み渡ると光と共に刀に吸い込まれていった。
【桜吹雪】【性別・女】【相性・100%】【剣豪】【???】
何度か「アンロック」を使ったが、???は片方しか解放されなかった。今の俺の力ではこれが限度なのかもしれない。いつか制限を外せる日がくるだろう。
そんなことよりも「剣豪」である。これは「剣聖」「剣鬼」と並ぶ剣術系の強スキルだ。これで俺も強くなれるかもしれない。
獲物を探そうとしたところ都合よくワイルドラビットが姿を現した。
試し切りには丁度いい相手だ。
こいつを切り捨て俺の新しい冒険者生活の始まりとしよう。