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鍵士無双  作者: キャットフード安倍
第一部・ローゼン王国編
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辺境へ

 辺境伯領へ向かうための最後の経由地を出発して進路を東へとる。


 辺境に近づくにつれ人型の魔物と遭遇することが増えてきたようだ。さきほどもオークの集団に取り囲まれたが元兵士組みが蹴散らしていた。


 昨日、商人に連れていってもらった花街で遊んできたというのに元気なものである。


 うちのPTは馬車(サラ)持ちなので余分に商品の塩を積むことができた商人はご機嫌なのだ。なので俺たちに対する待遇はかなりいい。


 ちなみに俺、アレス、ゼルマンは花街へは行っていない。ゼルマンはテレサがいるしけしからんことに二人部屋だ。俺はこの旅のあいだ中サラと厩舎で寝泊りしている。一人では可愛そうだ。


 アレスはいつも寝ているかぼーっとしている。


 「ねえ、銀の書見せてよ」


 アレスが左手で何かを持つ仕草をすると一冊の本が現われた。黒皮に銀箔の幾何学模様を金付けして美しく装丁されている。


 「お、ちょうど進行方向にオークの群れがいるね」


 まだ豆粒ぐらいにしか見えない距離に十匹ほどのオークが街道を塞いで待ち構えている。


 「カコス!豚どもを踏み潰せ!」


 オークの頭上の空に亀裂がはしると、その裂け目から山ほどもある巨大な足が飛び出してきてオークを踏み潰し大地を揺らす。


 足が引っ込むと中空に開いた大きな穴が徐々に閉じていった。


 「……、それ普段は使わないようにしよう」


 「人前でカコスを呼んだのは初めてだよ。こんなの誰かに見られでもしたら大騒ぎだからね」


 そうだね。商人さんが大地震でもきたのかと大騒ぎしてるね。


 「アガサおいで」


 銀の書から発光体が現われると俺の目の前で止まった。


 「マルボロ様、光の精霊アガサです。主人共々よろしくお願いいたします」


 ハコと違ってなんて礼儀正しい精霊だろうか。


 「大精霊のハコよ!わたしが先輩としていろいろ教えてあげる!」


 いつのまにか近くへ寄ってきたハコが偉そうにしている。恥ずかしいからやめろ!


 「ちなみにカコスは闇の精霊だよ」


 足の精霊だと?まあうちのハコも宝箱の精霊だしそういうこともあるかもしれない。





 城壁に囲まれたマルテル辺境伯領城塞都市カロリングに到着し商人と別れた。


 新メンバーたちとの交流も兼ねた護衛の依頼だったが、ネイサンから出たことがなかった自分にとって楽しい旅だったといえるだろう。


 サラを休ませてあげるため宿をとったあとは自由行動とした。アレス以外は自分同様にはじめての長旅ということもありみな楽しげだ。十分な小遣いをあげるとどこかへ散っていったが、どうせ娼館へでも行ったのだろう。





 俺は依頼達成の報告をしにカロリングの冒険者ギルドへと向かう。


 報告を済ませギルドに併設されている酒場のカウンター席で果実水を注文した。酒は飲めない体質である。


 冒険者ギルドの護衛の依頼を受けて辺境の地まできたが、本当の目的はヘルマンのお使いでとある人物と会うことである。ここにいれば向こうから接触してくる手筈になっている。


 「マルボロだな?俺がアレン・スミシーだ」


 隣りの席に腰かけた男はそう名乗った。


 「場所変えますか?」


 「いや、ここで問題ない。ヘルマンからの書状は持ってきているな?」


 「ええ。でもあんたには渡せないな」


【グレッグ・ルーベン】【性別・男】【相性・50%】【諜報員】【偽装】





 人気の無い路地裏へ場所を移す。


 「理由を説明してもらおうか」


 「グレッグ・ルーベン。アレン・スミシーをどうした?殺したのか?」


 グレッグは答えずにじっと俺を見据えている。


 「まさか俺の偽装が効かないとはな」


 いつの間にか手にしていた短剣でグレッグが切りつけてきた。首筋を狙ってきているようだがこれはフェイクだ。


 俺の鑑定で視ることができるスキルのようなものは正確ではない。魂に刻み付けられたその者の本質を視ることができるだけだ。


 なので【偽装】に類する何らかのスキルを使い剣筋を誤魔化している。だが魔力を感じ取れる俺には無意味だ。


 心臓目掛けて突かれた短剣を腕ごと斬り上げ返す刀でグレッグを両断した。


 ハコに死体を収納させて冒険者ギルドへ戻る。


 閉店まで待ったがアレン・スミシーが現われることはなかった。


 すでにグレッグが殺してしまっているのだろうか。





 宿に戻りそのまま眠りに就く。


 明日のことは明日考えよう。


 


 

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