ゴブリンクイーン①
冒険者ギルドの会議室に手の空いているCランク以上の冒険者が集められた。
用意された席はすでに埋まり、他の者たちは後ろの方で立っているほどだ。もちろんCランクに上がりたての自分は立席である。
ランクの高い者ほど前の座席が与えられているようだ。何人かギルマス以上の化け物もいる。
ギルマスが入ってきて話し始めるとざわついていた部屋が静まりかえる。話しは聞いていなかったが「ゴブリンクイーン」という単語だけは耳に入ってきた。会場は騒然となりみな近くの者と話し込んでいる。
『何も聞いてなかった。ゴブリンクイーンがなんだって?』
『あんたねー、ちゃんと聞いてなさいよ!とにかくヤバイのよ!』
黙れ。お前には訊いてない。
『ゴブリンクイーンの存在が確認されたので明朝討伐に向かうそうです。旦那様は防衛班に組み込まれました』
『クイーンの出現場所は?』
『……、リーナが逃亡した森の最奥にある洞窟らしいです』
『クイーン=リーナで確定か……、ただリーナの魔力から判断するとそれほど強いとも思えないんだよなー』
『旦那様。お婆様によるとゴブリンクイーン自体の強さは大したことはなく、厄介なのはその繁殖能力にありひと月も放置すれば数万の大軍勢にまで膨れ上がるそうです』
『クソ!このままでは俺のリーナが汚されてしまう!』
『その可能性は低いと思われます。ゴブリナは極稀にしか生まれてこないためゴブリンたちは大切に扱うそうです。そのためゴブリンの性衝動は人や亜人に向かうといわれています』
『ひとまず安全ということか』
『なら今すぐにでもリーナっち助けにいかないと!』
『そうなんだが、問題はゴブリンクイーンがリーナでなかった場合だな』
『旦那様、ランチの仕度が済みましたので一度お戻りになってはいかがでしょう』
ゴブリンクイーン討伐の作戦会議も終わったので冒険者ギルドをあとにした。
「なるほど。本当にゴブリンクイーンが誕生しているのだとしたらお前たちだけで近づくのは危険だね。というか一番近いこの街が襲われるからリーナ探しどころじゃなくなるよ」
ランチ後のティータイムを使って今後の方針を決める。モエは夕食の買い出しに行ってしまったが。
「お婆様それほど凄まじいのですか?」
「そりゃーそうさ。王都から援軍がくるまでこの街の戦力だけで持ちこたえなければならない。王都からここまで三日ってとこかね」
「かといってリーナを放っておくわけにもいかないしなあ」
リーナがゴブリンクイーンであろうとなかろうとどうでもいい。仲間なのだから。
「そういえばお前さんたち念話で意思疎通できるんだろ?さっきここにいたモエとも話していたようだが、距離が関係ないならリーナにも声は届くんじゃないかい?」
「「「それだ!」」」
『リーナ!』
『リーナっち!』
『リーナ殿!』
『リーナさん!』
俺たちのしつこい呼び掛けにとうとうリーナが反応を示した。
『もう!リーナリーナうるさいです!リーナって誰ですか!』
『『『『お前だよ!』』』』
『え?わたしがリーナ?』
お前がリーナだ!
『で、リーナは今どこで何をしているんだ?』
『えっと、どこかのお店でたくさんの武器さんたちと一緒に大きな箱に入ってます』
……。
『その店の主はドワーフか?』
『どうして知ってるんです!?』
「ちょっと鍛冶屋まで行っていくる」




