オトモダチ
ホラー作品は初めてなので、上手にかけているかどうか分かりませんが、楽しんで頂けたのならば幸いです。
「けんたは本当に自殺だったの?」
けんたこと『老田健太』は私の小学生の頃の同級生で幼い頃一緒に遊んだものだ。実際そのようなことからは最も縁遠い人種だと思っていた。
「うん、私もびっくりしたよ。ただけんたが亡くなる前日だったかな、彼変なこと言ってたんだ」
「変なこと?」
昔から面白おかしいことを言っていたが、大人になってそれがより一層磨かれたのだろうか。
「なおが居たって……」
「え、なおが?」
『なお』とは本名、水上 泣織。彼女の家はとても貧しかったが、それ故に人一倍苦労人で頑張っている人を見捨てられない性格だった。
しかし、私達はちょっとした出来心で彼女をからかうことにした。しかし、それは彼女及び世間一般からすると『いじめ』と言われるものであった。私もよく彼女のことを無視をしていた。
彼女はそれに耐えきれず自ら命を絶った。
「きっと私たちを驚かせようとしただけだよ!」
不謹慎ではあるが私は咄嗟にそう言ってしまった。
『そっか、じゃあ本当だって証明しないとね』
「ミナ、今何か言った?」
ミナは私に首を振った。
「ミク少し疲れてるんじゃない?今朝も仕事だったんでしょ?」
私はそう聞かれてただ「大丈夫」とだけ言って彼女と別れた。
『主犯は4人。けんちゃん、ミナ、ミク、たける、でも、みんなお友達だよね』
それから数週間後、私は電話のコール音に叩き起された。今日は久しぶりの休日なのにな、と思いながら軋む頭に潤滑を指すように欠伸をしてからそれを手に取った。
「もしもし、あーミナどうか」
したの?という言葉を彼女が興奮した声が遮った。それを聞いた私は家を飛び出した。
「もう!まさか誘っておいて逃げる気だったの?合コン!」
「ごめんごめん、すっかり忘れてた……」
時間はないが金はあるため、パジャのまま飛び出し少し高級なドレスを売っている店で服を買い、着ていたものはコインロッカーに詰め込んでおいた。
「やぁ、ミナちゃんから話は聞いているよ。ミクちゃんだよね?ミミコンビだ!」
初めからちゃん付けかよ!というよりミミコンビってなんだよ。
少しは乙女のような考えができれば良かったのだが、周囲に女友達などミナぐらいしかいなく、他は全員男友達としか接してこなかった。それ故に自然と思考回路が男になってしまう。
とはいえ、うるせぇーぶっ殺すぞ。と、どこぞのお笑い芸人のような反応をする度胸もないので、年相応の反応を目指して恥ずかしそうに笑ってみせた。
「もおーやめてよちゃんなんてよー、はーずーかーしーいー」
ミナちゃんは様になってるな、と皮肉げにこっそりほくそ笑む。
すると、笑顔だったミナが突然消え、逆に真っ青になった。 そして
「いや、なんで、なんで、アンタがいるんだよ、来るんじゃねぇーよ!」
と叫んで誰もいない空間にお冷のグラスを投げた。と思ったらそのまま店を飛び出した。
私も含めて店にいた人間、皆何が起こったのか分からないと表情をしていた。 しかし、頭動かなかったが、足は勝手に動いて彼女を追いかけた。
「ミナ、どうしたの!」
すると、怯えたようにこちらを向き彼女は叫んだ。
「なおが───────」
「ミナ!!!!!」
そして信号を無視して現れた大型トラックが彼女の元に吸い込まれるように向かっていき、赤く生暖かいペンキを私は全身満遍なく被った。
しゅるしゅるとボールがこちらに飛んできて私の目の前で静止した。その目は私をじっと見ていた気がした。
『あと2人だね、さぁ一緒にお友達ごっこの続きをしよ?』
それからというもの私はずっと家に籠っていた。なおが来るんじゃないか、私も死ぬんじゃないか、根拠の無い恐怖が私を家に籠城させる。
ピーンポーン、インターホンが響く。私は恐る恐るそれに出ると、どうやら黒い猫の宅急便らしい。こんな寒い日にご苦労なことだと思いながら重い足取りでハンコとともに玄関から出た。
「お届けものでーす、こちらにハンコをどうぞ!」
私は小さな声でお礼を言って家に戻ろうとしたら、いきなり手を掴まれ、引っ張られる。
「痛っ!」
私の悲鳴など無視してその男は耳元で囁いた。
「あと、そちらの商品はとても腐敗しやすいのでお気をつけて。万が一処分する場合は燃えるゴミでお願い致します、返品は不可ですので」
彼は私の手を離した。気味悪いなと思いながら扉を閉めた。
なんだろうと思ってダンボールを開けたら、その中にまたダンボールが入っていた。だいたいバスケットボールがギリギリ入る位のサイズだろうか。所々湿っていて気持ち悪かったが、意を決してそれを開ける。
「───────おっで、ぐる、の!」
先日死んだはずのゴボゴボと血を吐きながら話すミナの顔がそこにはあった。腐敗が進んでいて、目など片方なくハエやゴキブリが美味しそうに食べていた。
「いやぁぁぁぁ!」
私はそのダンボールごと投げた。べシャリといって何かが崩れる音がしたが、振り向くことすら気持ち悪いのと恐怖で出来なかった。
そのまま玄関へと走る。そしてドアノブを掴むべく伸ばして手は空気をがっしりと掴んだ。
ないのだ先程まであったはずのドアノブが。
ドアが1枚の板とかしている、それ以上でもそれ以下でもない。その板を無理矢理に押し倒して外に出る。
そこには先程の配達員がいた。
「あんた、あれなんなのよ!」
「先程ぶりですね、お客様。いえ、ミク」
そう言って彼、いや彼女は帽子とマスクを外した。
それはもう十何年も昔に最後見た顔、しかし、1晩として忘れたことのない顔。
「なお……」
「ねぇ、覚えてるあの時私言ったよね、いくら貧乏でもハエとゴキブリは食べられないって。
そしてあれを口に入れている時ふと気づいたの。
じゃあ、反対ならどうなのかなって試したら、ミナがね快く試してくれたの。彼女美味しそうに食べられてたよね、あのプリプリとした目とか私もちょっとしか齧ってないけど……」
恐怖で私はギリギリと歯と歯がぶつかり合う音がする。
「とぉーっても美味しかったのぉー!!!!!」
彼女は私を捕まえようとこちらに走ってくる。私は走ってエレベーターに乗り込んだ。1階にボタン多し、ドアを閉める。しかし、彼女がそのドアを止める。
「ねぇ、一緒に遊ぼ?」
私はその顔を蹴飛ばす。綺麗に決まり、それは吹き飛ばされた。しかし、安全装置によりドアが1度開き、そして閉じる。
その瞬間次は手ではなく顔を突き出してくる。しかし、一瞬、本当に一瞬だけ扉の方が早かった。安全装置に引っかからず彼女の顔はつぶられた。
破片がこちらまで飛んでくる。
私はそのまま1階まで1度も止まらずに到着した。そして、箱から出た私に
「痛いじゃないか」
顔が潰れた彼女が私を迎えてくれた。
「は!」
怖い夢を見ていた気がする。頭の心が重くなるようなそのような夢。朝食はモヤモヤとしながら取ろうとしたが、箸が全く進まなかった。
会社に行く前にコンビニに寄った。自動ドアが開く。
「いらっしゃいませ、おはようございま……ん?」
何故か不思議そうな顔をされながら私はそこに入った。とりあえずスムージーを手に取り私はレジ台に商品を置く。しかし、何も反応がない。
「あのー……」
私が声をかけると、顔を輝かせながら挨拶をする。自動ドアに向かって。
気に食わなかったので、私は商品を戻したあと会社へと向かった。
「あれ、私の机がない……」
無断で何日も休んでいたからなのだろうか。無理だと思うが上司にやる気があることを報告しに行こうとした時、同僚のものがなにか話している声が聞こえた。
「ミク自殺だったんだって、しかもエレベーターの中で。全く最後まで人に迷惑をかけて死ぬんだね」
───────え?私はここにいるよ?
私は周囲の者達全てに声をかけた。しかし、誰も返事などしてくれない。そして、肩に冷たい指が置かれる。
『ミク私と同じく無視されてるね、お揃い、お友達』
「なお……」
彼女の顔は潰れたままだったが、何故かそれを愛おしく感じる。あぁ、そっかお友達だからか。私は彼女にハグした後にその顔を撫でた。
『次はたけるの番だね』
「うん、お友達は増やさないと」
最後の投げやり感……