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魔女様は攻略しない  作者: mom
第4章 人形の棲む館〜リース家へようこそ〜

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67 談話する



「へぇ~、じゃあほんとは聖女様だったんだね。」


王都土産のクッキーを頬張りながら悪魔が呟く。

天気のいい昼下がり、テーブルの木目に白いお皿、その上に乗った赤白チェックのペーパーと薄い茶色のクッキーが、何とも素朴な落ち着きを演出している。

このペーパーナプキンかわいいな。何故か色んな柄のが食卓に出てくるのだが、ジルが買い溜めているのだろうか?


「えぇ、そうね。」


「ふふっ、魔女様が聖女様………」


肯定するとクッキーの入った口を両手で隠してクスクス笑いだした。

笑い方が完全に乙女である。悪戯な幼女かお前は。


「苦情はゲーム会社にお願いね。どこか知らないけど。」


本日、王都から帰宅した翌日の昼。

お土産のお菓子をつつきながらジルにゲームの話を全て話した。

今になったのは、外や宿では周りに聞かれる恐れがあるのと、昨日帰ってからはお土産渡しに忙しく、さらに村でとっても疲れるイベントがあった為である。


「いや、文句があるんじゃなくて、ふふ、真逆だなって………」


「自覚はあるけれど、そんなに笑う要素ある?」


デスメタルのボーカルが去年まではアイドル目指してました的な可笑しさか?

仕方ないでしょう、デスメタル志望なのに事務所の方針がアイドルだったんだから。


「だって想像つかないよね、エリックの手を握って励ましたりするんでしょ?」


「そうよ。こうやって、……………あなたは素敵な人よ…」


向かいに座るジルの左手(クッキー持ってない方ね)を両手で包み込み、いい感じの声を絞り出し聖なる感じで言ってみる。

ジルの右手からクッキーが落ちた。


「あ、ダメ……………攻略される。」


「難易度低すぎるわ。」


ジルの手を解放して、クッキーを口に入れる作業に戻る。

これで落ちる仕様なら私、全人類攻略できるわ。世界征服も夢じゃないわね。


「あんまり人を誑かしちゃダメだよ。」


「人聞きが悪いわね………実際エリック以外は関わりないし、問題ないわ。そもそも一目惚れとかじゃなくて、しばらく交流して心を開かせて落とすんだから、私には無理よ。倒す方の攻略でいいなら全員できる自信はあるけど。」


見た目だけなら目つき以外同じだが、ヒロインの基本装備である優しさと包容力のインストールに失敗しているので、まぁ無理だろう。

ヒロインみたいに様子のおかしい攻略対象を心配して声かけたりしないし。


「でも信者くん落ちたよね?」


「………あれは堕ちたが正しいわ。」


「邪竜も落ちたんじゃ?」


「あれはバグよ。」


戦闘力のパラメータがないゲームで戦闘力重視の攻略対象とか頭おかしいでしょ。

倒す=落とす になる唯一の変人ね。


「まぁゼノリアスはもともとおかしいとして、その他の攻略対象に関しては私が関わると碌なことにならない予感しかしないから、自分から接触するつもりもないし機会もないわ。」


「確かに、一般市民じゃないんだもんね。」


攻略対象はサイコ兄貴とゼットンを除いて5人。


まずは年下枠、健気で天使な神の信徒エリック。

こいつは既に私が神の信徒から魔女の下僕へジョブチェンジさせてしまったので手遅れ。

これは過失になるだろうが許していただきたい。


次に、俺様で自信家、サムいセリフを連発する王子レオナルド。王族なので普通に会う機会はない。

同様に、無口で真面目すぎる騎士、紳士でキザな女好き、頑固で自分にも他人にも厳しい芸術家枠の冷徹メガネなんかがいたが、いずれも貴族なので会わない。


絶対に会いたくないサイコ兄貴も貴族なので、会うことはないだろう。


「聖女との交流で荒んだ心が柔らかくなる感じの奴もいるから、ちょっと気にはかかるけどね。どうせ私じゃエリックの二の舞を生産するだけでしょうし。」


村ごと狂っていたのは軽くトラウマになっている。エリックは特例だろうけど……


「そうだね。心の傷を取り除いたら好かれちゃうだろうし、やめた方がいいよ。放っとこう。」


「流石にそんな単純な奴ばかりじゃないでしょう………」


いや、ゲームではそうだったかもしれない………。

詳しく覚えてないが、こうよくある…「君は他の人とは違うね」的なパターンとか……

イケメンに変なセリフを吐かせることばかり楽しんでいたので恋愛の内容をイマイチ覚えていない。

先述のセリフも実際は「君」の部分にプレイヤー名が入って「妖怪人間は他の人とは違うね」だったので、そりゃそうだろ妖怪なんだからと一人でツッコんだことが印象的だったので覚えていただけだ。


「さっきみたいにされたら落ちると思うけどな………。」


ジルが呟く。

さっきの聖女マネの時の攻略されるってやつ、冗談じゃなかったのか。


「男ってやっぱりああいうのが好きなのかしら。」


「えっ…」


「残念だけど、さっきのはノリでやったモノマネであって素面では出来ないわよ。」


「いや、えっと。」


ジルは落ち着きなく、皿と自分の間の空間で手を行ったり来たりさせている。


「他の人は知らないけど、僕はこっちの、いつもの方が好き………かな。」


テーブルの木目を見つめ指をもぞもぞと動かす。なるほど、聖女より魔女派か。


「悪魔だものね。」


もしくは私と同じく、清く正しく美しい感じが苦手なのかもしれない。

そうなると、聖女っぽいので落ちると思うとか言うのは一般論か。


「あ、うん。そんな感じ。」


ジルが曖昧に笑う。

悪魔ウケは良さそうだ。需要ないけど。


「中身はともかく、顔だけなら一般受けすると思うんだけど。」


「……それ自分で言っちゃう~?」


「イケメンな攻略対象に劣らないキャラデザだもの。ほら。」


これでお目目がパッチリなら完璧だった。


「それは、まぁ………」


「ジルはゲームと関係ないくせに整ってるけどね。」


「えぇ………?」


「悪魔補正かしら……」


前も思ったが、肌がすべすべだし、猫みたいな眼球も綺麗だ。


「あ、あんまり見ないで…」


目を逸らして居心地悪そうにしている。

いくら整っているとは言え、顔面をまじまじと見られるのは確かに居心地悪いだろう。でも見たいので見る。

ずっと見ていたら徐々に赤くなってきた。

リトマス紙みたいだ。ジルは酸性か。


「それとも転生者補正?」


「えっ。」


あ、反応が止まった。色が引いていく。


「ジル。あなた私と同郷でしょう。」



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