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魔女様は攻略しない  作者: mom
第3章 邪竜討伐

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57 証明される



突然の攻略対象オレドラゴン発言の後、ゼットン改めゼノリアスは先の邪竜討伐について語り始めた。


「あのビームみたいの、すげーな! あれは初めて見た。テンション上がったな!」


話す内容から、ゼノリアスはやはり先ほど戦った邪竜らしい。別個体という訳でもなさそうだ。

丁度、何百年かに一度の脱皮の時期で、倒されても脱皮で脱出できる上に、脱いだ皮で死の偽装も出来る為、思う存分バトルできると喜び勇んで出てきたとのことだった。

少し前から演出のために、多めに瘴気を出したり魔物の養殖やらをしており、それが思ったよりあっさり倒された事については不満なようだ。


「ラスボス戦を演出するつもりが、みんなほぼ無傷で来るんだもんな~。大事に養殖してたのに………。」


「手こずってる奴もいたわよ。」


「それどうせ、とりあえず呼ばれた数合わせでオレと戦ってないだろ。」


確かに、とりあえず実戦経験になるし連れてこようみたいな、坊ちゃんばかりだった。

竜に立ち向かえない雑魚はカウントに入らないということか。


ゼノリアスとしては、自分のところに来るまでに、大量発生させた魔物と戦ってちょっと傷付いてるくらいがラスボス戦みたいで好みらしい。


「まぁ騎士団長はな、良かったな。あれが死ぬ覚悟でかかって来たらヤバいな。」


感慨深そうに腕を組んでうんうん頷いている。

恐らく本来のゲームでは騎士団長が倒したのだろうから、その予感は正しい。

強者と戦いたくて出てきたらしいので、どうせ空を飛ぶアドバンテージも生かさずに突っ込んで来て、騎士団長と接近戦でもやったんだろう。


「あとはお前。最後の魔法流し込んでくるのは危なかったな。脱皮しても目ぇ回ってたぞ。」


危ないと言いながらも興奮した様子、やはりバトルジャンキーの方だろうか。

さっきから自分を傷付けた攻撃を称賛してくるし、やたらフレンドリーだ。脱皮で死なない自信があったみたいだが、私としては殺しかけたんだけど。むしろ殺ったつもりだったんだけど。


ゲームでは意味わからん攻略難度を誇っていたくせに、好感度の初期値が高い気がする。

好感度が高いからって、殺意ある攻撃をされてフレンドリーなのはどっちにしろおかしいのだが。


「というか、そもそも脱皮ってどういうことなの。」


「その場でおニューの身体にタマシイだけ入れ替わるんだよ。今回の場合は、緊急脱出ボタンみたいなもんだな。」


そんな概念この世界にあるの?


「見た目が全然違うけど。」


「ドラゴンの方にもなれるぞ。同じ力使えるし人型のがコンパクトだから、普段はコレ。」


私よりは背が高いが、成長期の途中くらいの自身の身体を指差す。

この姿からあのブレス攻撃出すとか凶悪過ぎない? ゲームバランス大丈夫か? これ乙女ゲーだけど。

いや、寧ろそんなヘンシン設定あるならゲームで出しとけって話よね。人間に化けてる竜とか割とおいしいポジション………もしかしてZのシナリオに入れたら明かされたんだろうか。


《しかし貴様、貴様から竜の気配はしないのだが。》


会話が途切れると、ザッハが一歩前に出た。

そういえばザッハは邪竜が登場した時も先に気配を感じていたようだし………ドラゴン詐欺の可能性、ワンチャンある。

しかし私の希望は打ち砕かれた。


「脱皮直後は魔力が殆ど前の身体に残ってて、まだ移行しきってないからな。今はこの腕の方が存在感あるんだよ。」


そう言って食べかけのそれを持ち上げる。


「………あ…」


それを見て要らんことに気付いてしまった。

本当にこいつが邪竜なら……私、こ、攻略対象食べちゃったわよ?!


「───待って、腕あるわよね?」


そう、どう見ても生えてる。

これはこいつの腕じゃない! ね!


「これ前の身体のだからな。」


まずい。マジっぽい。

これが、本当に本当なら、私は攻略対象を踏んだどころか、攻撃して切って倒して焼いて美味しくいただいたということになる。

ビッチ的に、「美味しく食べちゃった、はぁと」もそれはそれでヒロインとして問題アリだが、もっと根本的にヤバい方の「美味しく食べちゃった、はぁと」をやらかしてしまっている。テヘっとしてペロっとやるのでは済まない。

冷や汗が出てきた。


「なんだよ、信じてないのか?」


「え、ええ、その、」


信じたくないわ。

しかも未遂だけど殺したし。本人は全く気にしてないけど………罪状に押し潰されるわ。


「ほれ、同じ色だろ。」


ゼノリアスはそう言って自身の右の爪で左の手のひらに軽く傷を付ける。

青い血がぷくりと浮き上がり、その後すぐに傷は塞がった。


「青い、わね。」


貴族の血は青いとかそういう話ではなく、イカの血が青いとかそういう意味で青い。

要するに青い。

この色は、騎士団長の秘奥義の時に邪竜から流れていたものと同色である。


「ほら、味も。」


傷が塞がった左手のひらを凝視していると、今度はその指が私の顔目掛けて飛んで来た。

人差し指が正に弾丸のように、私の口の中に飛び込んで来る。


「むぉ…………?!」


な、な、無茶苦茶やりやがる!!!


「ちょっと………!」


ジルに引っ張られて、口の中から人差し指が抜けた。

ジルがそのまま庇うように私の肩を引き寄せる。


「何するの、魔女様に汚いもの食べさせないでよ。」


驚いて反応が遅れたが、よく考えたら決して清潔とは言い難い物体を口の中に押し込まれた。


「うぇ………。」


今すぐうがいしたい………


「失礼だな! さっきは美味しいっつって食べただろ!」


「それとこれとは話が違うわ!」


牛肉を食べるからって牛の蹄をしゃぶって平然としてる人間なんてそうそういないわよ?!

というか正体が分かってたらドラゴン肉も食べてないわ!


「………まぁいいや。とにかく、オレがお前らの言うところの邪竜だってのは分かってもらえたか?」


「えぇ、まぁ………。」


血は青いし、話も本人しか知らないようなことを言っていた。この場合本人ではなく本竜か………いやそれはどうでもいい。

いずれにせよ、実際こんな奇天烈なのが邪竜なのは説得力あるわ。


「魔女様、邪竜ならもう一回倒しといた方がいいんじゃない?」


ジルがゼノリアスを指差して訊いてくる。


「あぁ、確かに。」


そういえば瘴気を出すとか魔物の養殖とか、人類の敵っぽいことを言ってたわ。


「え、そこそうなる?! 嘘だろ!」


ゼノリアスは心外なようだ。


「騎士団には敵性竜種とかって聞いたんだけど。」


「だからって思い切り良すぎねーか? こんなに会話した相手を………。」


続けて文句をぶつぶつ言いながら、弁解をしてきた。


「魔物もオレの敷地からは出してないし、一般人には攻撃してないだろ。良識のある竜なんだよ。強い奴と戦いたかっただけで。」


ゼノリアスが言うには、瘴気山脈は自分とこの敷地で、そこで魔物を放したり増やしたりするのは個人の自由だろ、ということだった。

多分あそこは国の所有地なのだが………ここで言う敷地とは縄張り的なことだろう。


「別に、害獣じゃないなら良いんだけど。」


そもそも、邪竜でも意思疎通ができると分かった以上殺すのはちょっと無理だし。


「害獣ってひでーな。」


そう言いながらも、怒っている訳ではなさそうだ。


話がひと段落したので、そろそろ帰らないとと思い、片付けを始めるべく動き出す。

思ったより時間を食ったので、騎士団が来るかもしれない。


「ところで本題なんだけど。」


敷物にしていた布を畳んでいると、ゼノリアスが姿勢を正してこちらを見た。

本題って、今までの長い話は何かの前フリだったのか?


「オレと結婚してくれ。」


「………は?」


意味不明すぎてせっかく畳んだ布を落としかけた。

好感度が高いどころか、最初からMAXってどういうことなの………



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