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魔女様は攻略しない  作者: mom
第2章 ミスティアとノア

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25 誘拐される



肌寒く感じて近くにある布に手を伸ばす。

小さくなってその布────マントに包まろうとして違和感を感じた。手が重い。というか、右手と左手が連動している。

目を開けて確認すると私の右手ちゃんと左手ちゃんが縄で仲良く繋がれていた。


「…………いった…」


初めてのお縄頂戴体験に一気に意識が覚醒すると同時に、地下なのか薄暗い岩のような壁に囲まれた空間が目に入る。

眠っている間は気にならなかったが目が覚めると床が硬くて下になっていた左半身が異常に痛い。どのくらい眠っていたのかしら…よくこんな劣悪な場所で熟睡出来たわね。


「────それが不気味な村でよぉ、確かに人が住んでる様子なのに人っ子一人いねーんだ。」


ゴリゴリ骨に当たる床の感触にイライラしつつ体勢を変えていると、明かりのある方から声が聞こえた。

不気味な村って確実にあの村のことよね?


「無人ってことか? なら、盗み放題じゃねぇか。」


「オレ達もそう思って何軒か入ったんだが、どの家も変な旗が飾ってあってな……大した物も無さそうだしやめたよ。」


「あの村は気味が悪ぃよ、何か変なもんを祀ってそうだった。」


ははは、それ私ね。

意図せずご利益があったようで何より。


「そこにガキが一人だけ居たからそれだけ拐ってきたんだ。高く売れそうだからラッキーだったぜ。」


「あの銀髪のガキか。」


私ってめちゃくちゃ運が悪いわね。これは早く脱出しないと売られそう…

ここが何処かも分からない、相手の人数も分からない、足は自由だから走って逃げようにも出口がわからない、体力がないから逃げ切る自信もないし靴も片方ない。

犬のおまわりさんも驚きのないない尽くしで無事帰れるか心配になってきたわ。


奇しくも、名前も忘れかけていたこの世界とほぼ同じゲーム「シンデレラ・ロマンス」にちなんでガラスじゃないけど靴を落としてきた。全然ロマンチックじゃないしそんなヒロイン力は要らない。

置いてきた靴に気づいて誰か探しに来てくれると良いけど、誘拐されたことしか伝わらなさそうね。連れて来られる時起きていられたら、シンデレラじゃなくてヘンゼルとグレーテルの方向で目印落としたのに。


周りを見ると、同じく拐われたらしき子供が何人かいる。同じような年代だし、私も誘拐の対象なのよね…自分が今10歳なの忘れてたわ。完全に油断してた。まぁ、誘拐を警戒してたからって対処できたかどうかは分からないけど。

クレイグに送ってもらってればまた違っていたのか………過ぎた事は考えても仕方ないわね。


この子供達も別のどこかから拐われてきたのかしら。………ちょっと待って、他の子供は縛られてないんだけど。なんで私だけ?

この縄ザワザワしてて地味に痛いんだけど。さっきは体の方が痛くて気にならなかったけど、ささくれてるし繊維はガサガサだし手首が痛い。

と、思って手を見ていると爪に血がついていた。────そういえば拐われる時相手の腕を思い切り引っ掻いたわね。それで凶暴だと思われたのか? というか、ならこの血はおっさんの血?!ひ、ひぃ………今すぐ手を洗いたい、入念に…


「オレらは外を見てくる、お前はここでガキ共を見とけよ。」


話していた男達は見張りを残して出ていったようだ。気を取り直して、脱出方法を考えよう。

今エリル村の話をしてるってことは、私が連れて来られてからそんなに経ってないのかしら…

というか、報告やらをしてる事から考えてエリル村に来たのは犯人の一部ってことよね? 何人いるかによって難易度が変わってくるわ。


現状、障害になるのは手首の縄とどこの地下牢だよって感じの檻。岩の洞窟の天井と床に棒を突き刺して作ったような…

他の子供も全部まとめてぶち込まれている。

向かいにも檻があり、その中ではさっき何かの動物?魔物?が暴れていた。


檻なら壊せる。

問題はその手段である魔法の命中率……杖もないし手も不自由なので普段より格段に落ちる。

その分攻撃範囲を広げれば問題無いが、そうすると今度は消耗が大きくなる。さっきまで寝ていたけど寝所がコレだし、昼間の蜘蛛退治で消耗した分があまり回復していない。

どれだけ撃てるか分からない以上、下手は打てないわね。

…先にこの縄をどうにかしよう。杖が無くても右手が自由に動けばそれなりに当てられる。せっかく見張りが減ったんだし、今のうちにやってしまおう。

自分の手に攻撃したらマズいから────そうだわ、バリアを使えば…手首にあの黒いオーラを出してそれで縄を切るとか、出来るかしら…


……出来た。

やれば出来るもんね。縄を攻撃と見做して跳ね返すイメージを強めたらいけたわ。

これ応用したら素手で檻掴んで破壊するように見えたりもするんじゃないかしら。

ただし消耗が激しい。やっぱりバリアは相性が悪いのか…身体に纏わせるのがダメなのかしら。これは今後要検証ね。

次は檻を────


「…っ………?!」


あ、危な…叫びかけた!

気づかなかったけど、そこの壁のところで見張りの男が座り込んでこちらを見ていた。薄暗いのでよく見えないがガスマスクのようなものを着けて頭にも何かある……これヤバい奴じゃないの?


男はゆらりと立ち上がるとゆっくりこちらに向かって来た。座っていると分からなかったがかなり背が高い。

なんとか誤魔化せないか寝たフリをしていると、檻の前まで来て視線を向けてくる。

多分見つかった、どうする…?


「ははは、バカな奴だ。」


「これで分かっただろう。」


追い詰められた犯人の心境で頭を回転させていると遠くから声が近づいて来た。最悪だ。さっき出て行った奴らが帰って来た。


「おいノロマ、何かあったか?」


檻の前に立つ男は声の主が近づいて来ると少し動いて首を横に振る。

私の身体に影が重なった。


「そうか。逃げようとする奴がいたら知らせろ。」


「よく聞けよお前ら、逆らうとこうなる。変な気は起こすなよ。」


そう言った男は、檻の中の子供たちに右手で掴み上げたボロ切れのような子供を見せつけそのまま床に投げ捨てた。


「初めに攫ってきたんだが困ったぜ。痛めつけて吊るしておいたら大人しくなったがな。」


「こいつを檻に戻しておけ。」


恐らくこの子供を見せしめにして私達を脅すために戻ってきたであろう二人の男は、檻の前の男に指示をして離れて行った。

近くでよく見ると、男が着けているのはガスマスクではなく口枷のようなもので、頭にあるのは二本の角だった。この角─────亜人?


鍵を開けてキィ───と軋む檻を開けると、角の男はボロボロになった少年を拾い上げて中にそっと置いた。


「さっき、何故私を隠したの。」


私の質問に曲げられた背中がビクリと揺れる。

大きいのに小動物のような動きだなと思って見ていると、振り向いた彼は口を開いたものの何も言わずに困ったような顔をした。

そしてこちらに来て縄の無くなった私の手を動かし、上から私のマントを被せて檻から出て行った。



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