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元暗殺者が護る国  作者: 鳥居華音
第1章 最高の暗殺者誕生編
10/13

休息の一時

「はーい、後はよろしくねー」


先生が、とある部屋にぽいっとグローリーを放り投げて去っていく。

グローリーは、発作のような強い欲求はだいぶ収まっているが、炎の龍の訓練と、先生の筋肉のマッサージにより、痛みと力が入らないのとで、まったく身動きが取れなかった。


「はーい! 後は任せて下さい先生! さー、グローリー! 脱ぎ脱ぎしましょうねー!」

「えっ。。。? 何で!?」


指一本動かせないグローリーに対し、目の前に現れたアインがワキワキと手を動かす。

そしてグローリーの視界から消えたと思ったら、いつの間にかグローリーの下半身は脱がされていた。


「諦めろ、誰しも通る道だ」


消えたアインの代わりに、目の前にぬっと現れた長身の男が、身体を動かせないグローリーを念のために押さえつける。


「炎の龍の訓練と、先生の筋肉疲労抜きをすると誰しも動けなくなる。そうすると便所にもいけないから、おむつをしてもらう。安心しろ、朝には動けるようになるし、そういう感じで動けなくなるもの、三ヶ月ぐらいだ。あ、俺はノインっつーんだ。よろしくな」


長身短髪の痩せた男は自分の名を告げる。

そして、テキパキとグローリーにおむつを履かせたアインは、やり遂げたように改めてグローリーの前にあぐらで座る。

初めて見た時と同じような貫頭衣を着ているから、大事な所が見えそうになっているが、上手いこと隠していて見えない。


「ここは。。。?」

「ん? ここはみんなで寝る所。私たちは皆、アサシンマスターと家族のようなものだから、みんな一緒に寝るのよ」


広い部屋にござがひいてある。

一人ひとり区分けはしてあるが、場所が個人個人に割り当てられているわけでもない。

どこで寝てもいいし、男女の区分けも無い。

基本的に、寝る場合も訓練とされていた。

男女のそういうのをしてはいけないと禁止されていないし、されていないということは強制される場合もあるが、それも自らの力で切り抜けろということ。

グローリー以外は、ある程度の訓練を行ってきたので、既にその辺りは全てクリアしているし、チームとしてまとまっているので、馬鹿な行為を行う者も居ない。


「そっか、今日はここで寝るのか。。。」

「そうよ、貴方の場合、まだ龍と先生の往復地獄コースが終わるまで、週に一回ここで寝れるの。また明日からは龍のとこで炎に追われることになるけどね」


キシシと笑うアイン。

肩をすくめるノイン。


「お前の場合、その特殊な体質のせいで感覚が鈍かったから余計にきついかもな。まぁ慣れるさ。特にお前の場合死にはしないんだから気楽にやれや」


グローリーは生まれた疑問を質問する。


「慣れなかったらどうなるの?」

「えっ? そんなの死ぬか動けなくなるかってだけじゃん」


アインは頭の後ろで手を組んで答える。


「まぁ、そんな奴はあんま居ないけどね。昔は居たけどもうほとんど居ないし。ほらそこ、彼は戦闘訓練中に借用技術が暴走してね、右腕と左足をなくして、その状態で龍の炎受けちゃったから、顔の半分が火傷をおってるんだよね」


各々に壁際に立ったり座ったり寝転んだりしている中、一人だけ、専用の椅子に座っている男が一人。

彼は自分が話題に挙がったと気付き、グローリーと目が合うと優しく微笑んだ。


「昔はもっと居たんだけどねー、もう」

「アイン」


ノインはアインの発言を遮る。

アインははっとして、バツが悪そうに視線を逸らす。


「そういえば、やっぱり借用技術は使えなかったのか?」


グローリーは、うつむき、完全にうつ伏せになる。


「うん。。。」


グローリーは、やはり自分に能力が目覚めた気はしなかった。

事前にアサシンマスターに言われていたことだが、知識を得た分欲が出る。


「そう言えば、二人はどんな能力が使えるの?」


グローリーは知識があっても、他にどんな能力があるのか検討がつかなかった。


「俺は基本技術『火』『水』『風』の3つ、炎龍の旦那にもらった炎熱技術、それとこれだ」


ノインは右手の甲を見せる。

そこには大きめの水晶玉のような玉が付いている。


「こいつは水晶眼。特に何かしたわけじゃないんだが、魔水晶っていう魔物に気に入られてな、こいつを植え付けられた。魔水晶はこいつを通して人間の世界を見て、力を貸してくれるらしい。らしいってのも使い方を教えてくれるわけじゃないから自分で気づけた力はこれだけなんだけどな」


適当な木の枝を、ある程度の高さの所から落とす。

すると、音もなく、ぶつかりもせず、水晶玉の中に木の枝が吸い込まれた。


「吸い込める物の大きさや重さには制限が無い。ただ、触れる必要はある。取り出すことも任意で出来る。生き物はどうなるかわからんから入れたことはないがね。まぁ、炎熱技術も鉄を溶かすぐらいまでで、即時発熱とかは使えんし、基本技術も、指先からちょっとしたもの出せるぐらいだから、まぁ大したことはない」


ノインは肩をすくめ、アインに視線を送る。


「アタシ? アタシは基本技術三種と、炎熱技術の火柱までと、あとこれね!」


そう言うと、アインが突然消える。


「私は、ミストドラゴンっていう龍種に気に入られたらしくてね。こうして姿を消すことが出来るのよ。どう!暗殺向きの能力でしょ!」


姿が見えないのに声だけ聞こえる。

すると、すっとアインの姿が現れる。


「まっ、あんたのその能力はとんでもないんだから、それを上手いこと伸ばしていけばいいじゃない!」


バシバシとグローリーの背中を叩くアイン。

ノインもうなずきながら、もう寝ることを勧めてきた。


「お前もそろそろ限界だろう? 今日は俺らが見ててやるからゆっくり寝な。それに、みんなその状況は体験してるし、そうなってる奴は襲わないって暗黙の了解があるんだ。大丈夫」


ここ暫く何度も言われている大丈夫という言葉。

過去、全く言われたことの無い言葉。

その、不思議な心地に、グローリーは意識を保つのが限界で、そのまま眠りに落ちていった。


『お休みー』


二人から、寝る時に声をかけられる。


そう言えば、ちゃんと眠るのは初めてかもと、不思議と口元が笑顔になり、そのままグローリーは意識を手放した。

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