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悪魔の憂鬱  作者: 甲ニ
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馬淵 俊雄

第弐話


僕がこの国へ来て12年が経っていた。

僕はこの 国にもだいぶ慣れてきた

最初の頃は色々と悩んだり

考え込んだりしていたが

同僚の森田くんに相談しているうちに

悩んでいる僕はなんだか損をしているのでは、 と思うようになっていた。


なので、特に興味が無い仕事は月曜日のウチにさっさと終わらせ

僕の為に与えられている

マンションでドラマを見るか

森田くんと芋焼酎を呑んでいた。

興味深い仕事の時は期限ギリギリの土曜日に終わらせるようにして僕なりに楽しむ事にしていた。


今日は月曜日!

新しい仕事が大王様より

メールで送信されてくる日だ、

以前まではFAXでやり取りされていたが

技術の進歩でそれぞれに配備されている


薄型タブレットに送信されるようになっていた。

おかげで沢山の書類を鞄に入れ持ち運ぶ手間がなくなり

タブレット一つで全てのやり取りが可能になっていた。


早速、送られてきたメールを確認した

今回の対象者は当たり障りのない平凡な人物だった。


名前: 馬淵俊雄(マブチ トシオ)

年齢: 31歳

職業: 会社員(営業マン)

未婚

子供: なし

犯罪歴: なし

注意点、又は追加情報

特になし


ふー。

僕は大きく息を吐き出した!

特に面白くもなさそうな

普通の人だ。

早目に終わらせてしまおう。

女性や子供で無いだけマシだったのかもしれない。


どうしても女性や子供は

慣れなかった

なんだか悪い事をしているようで心が痛いような苦しいような感じがした。

僕に心があればの話しだが。


早速、僕は馬淵俊雄に会いに行く事にした

僕はこの世界では普通の人間と同じ姿をしている

僕に人間の年齢とかは詳しく分からないから

ドラマに出てくる主人公に似せ年齢もドラマで設定されていた年齢にした。


僕はドラマの中でも特に

月曜日の9時からやっているドラマは欠かさずに見るようにしていた。

今の僕の姿や年齢も12年前に流行していたドラマの主人公をモデルにしていた。

最近では僕がこの国に来る以前に放送されていたドラマを

見るようになっていた。

家の近くにあるレンタルDVD店で借りるのだ


しかし、一つだけどうしても

見たいのだけれど置いていないドラマがあった。

エプロンをした店員に

「どうして無いのですか?」

と、尋ねると


「いや~あまり人気が無かったからじゃないですかぁ」


と、ニヤニヤしながら黄色い歯を見せた。

思わず僕は魂を抜こうかと考えたが

サッサと店員がいなくなったのと、少し非常識かなと思いやめる事にした

それ以来、仕事帰りや

何もない日はブラブラと色々な街へ、そのDVDを探しに行くのが日課になっていた


昼過ぎに馬淵俊雄に会いに行く為に僕は家を出た

今日は月曜日だ。

月曜日は対象者と会うが

挨拶程度に済ませて終わらせるようにしていた。

中には仕事が終わってから詳しく聞かせてほしいと

頼まれるが、僕はどんなに頼まれようが月曜日だけは断わるようにしている。


もちろん9時からドラマが始まるからだ。

この国の人達からしたら仕事よりもプライベート。

しかもたかだかドラマ?

と、言われそうだが。

僕達は人間とはそもそもの作りが違うのだから当たり前の事だ。


あまりにしつこいと

流石の僕も、とっとと仕事を終わらせる事にしている

つまりはサッサと対象者の魂を回収するのだ。


ソレをした所で同僚達から

褒められたりする事はあっても

決して怒られたり、非難される事などは無い。

僕達は人間の魂を確実に回収さえすれば問題無いのだから

営業マンである馬淵俊雄は

次から次へと会社を訪れ

早足で街中をズカズカと歩いて回っていた。

中々、声をかけるタイミングが見つからない!

森田くんならば、夜になるまで待ってから会いに行き回収をするのだろうが

ご存知の通り僕には月曜日の夜は外せない予定があるのだ


火曜日から始めても良いのだが、興味深い対象者だった際に1日、損をする気がして嫌だった。

だから僕は僕の都合で、昼間のウチに馬淵俊雄に会い話しをしたいのだ。


僕はひとまず、大通りから1本入った道にある

洒落たオープンテラスで

コーヒーを飲む事にした。

いつものように砂糖を大量に頂き

店員に目をパチクリされた。

慣れたものだ

もちろんミルクなどは一切いれない。


まだ春には遠く肌寒かったが

熱いコーヒーと冷たい風が

僕には心地良かった!


木でできたお洒落なイスに腰掛け

僕は自身に配備されているタブレットに目をやった

対象者の行動を見る為だ

僕らが持つタブレットにはGPS機能のようなモノがあり対象者がどこにいるのかが分かるようになっていた

僕は対象者が公園や喫茶店に入ったりしたら発信音が鳴るようにセットをした!


よしっ!

僕はコーヒーをひとくちズズッと飲むと

タブレットを操作し、保存してあるドラマを見る事にした。


「みなみ~~!」


僕がモデルにしている12年前のドラマの主人公が叫んだ。

ここから名シーンに入るのだ。

因みにドラマの主人公はピアニストという設定であったが

僕はそこまではモデルにはしていない。


僕はすっかりタブレットに釘付けになっていた

気がつくと熱々のコーヒーは冷めきっていた

僕はコーヒーを口から離し

タブレットに視線を戻した。


いよいよだ!いよいよクライマックスがやってくる。

何度みても目頭が熱くなる名シーンだ。


主人公はヒロインの名前を叫びながら歩みよっていく

ここで、あの大ヒットソングがかかるのだ。

僕の鼓動が早くなった気がした。

しかし、今日はあの大ヒットソングが流れる事は無かった。


ピピー!ピピー!ピピー!


セットしていた発信音が鳴り響いた。


はぁー

大きなため息をついた

いっその事、今日は馬淵俊雄に会うのはよそうかと頭によぎる。

だがすぐにその選択を頭から消した!


重い腰を上げ馬淵俊雄がいるエリアへと向かった。


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