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第79話 玉の輿とあの方

これはある男の伝説の一部である。


その迷宮にはさまざな噂があり、その男以外にも数多の挑戦者が迷宮の突破を試みた。


しかし、地下へと続いて伸びるその迷宮に挑んだ者は二度と地上へ戻ってくる事はなかったという。


では、何故そのような場所に行く者達が後を絶たないのか。


それは、その迷宮の噂にあった。


ある噂では、その迷宮には生者の魂を喰らう死者がいるという。


別の噂では、魔物が住み着いており侵入者を餌にしているという。


また別の噂では、迷宮の中は巨大な迷路になっておりそこに迷いこんだ者は一生出ることが出来ないという。


他にも様々な噂があるが、その中でも一際注目を集めた噂があった。


その迷宮の最新部にはとてつもない強さの番人がいて、その番人の守っている部屋にはさまざまな財宝とこの世には決して出してはいけない何かがあるという。


とてつもない強さの番人、財宝、この世に出してはいけない何か。


このたった三つの言葉が、色々な者を魅了する魔法となった。


ある者は己の力を試すため、ある者は金に目が眩んで、ある者は自らの好奇心を満たすために。


入った者は二度と出てこれないという真実から目を背け、自らの理想を追い求めていったのだ。


そして、その者達もまた二度と帰ってくることはなかった。


そんな状態が当たり前となった頃だった。


その男が現れたのは。


まだ若かったその男は、三人の仲間を引き連れてその迷宮へと入っていった。


誰もが皆帰ってこないだろうと思っていた。


しかし、その男は仲間と共に帰ってきたのだ。


その知らせを聞いた者達は我先にとその男のもとへ走っていき、尋ねたという。


「あの迷宮には何があったのか」と。


しかし、男はその質問にこう答えたそうだ。


「奥まで行ったが何もなかった」


男はそう言うと、姿を消したそうだ。


その後、男の答えを聞いた者達は皆こう考えたそうだ。


もしかしたらあの男は、迷宮に入りはしたけど奥まで行かず途中で戻ってきたのではないかと。


そして、皆あの男はホラ吹きだと笑ったそうだ。


しかし、後に彼をホラ吹きだと言う者も彼の言葉を疑う者もいなくなったという。


なぜならその男こそが


英雄バーデン・アリソンだったからだ。








「・・・凄いな」


俺はそう言って読んでいた本を閉じた。


今日は午後まで受けたい授業がないから朝から図書室で読書をしていた。


他の皆は各々授業を受けている。


俺も受ける授業数増やそうかなぁ。


「それにしても」


俺は先程閉じた本をもう一度開いた。


バーデン・アリソンを題材にした本はどれも面白くて外れがない。


この本もそうだ。


冒頭で読み手の心を掴んで、そのあとはバーデン・アリソン視点で迷宮探索を戦闘や笑いを入れながら書いている。


お堅い内容かと思っていたけど、これはなかなか幅広い世代が読めそうな本だ。


もう少し言葉を分かりやすくしてあげれば、子どもへの読み聞かせとかできるレベルだ。


本当に感心するな、一作家として作者の人を尊敬できる。


「おや、君もここにいたのですか」


俺は声が聞こえた方を見た。


そこには、トレンドマークの角に包帯を巻いたイケメンが立っていた。


「イヴァン先輩、授業のほうは終わったんですか?」


俺が尋ねると、イヴァンは俺の隣の椅子に腰を降ろした。


「さっき終わったところです。

昼食まで時間があったので、何か面白い本はないか探しに来ました」


彼が笑いながらそう言うと、窓から光が射し込んだ。


その光はイヴァンを照らし、その姿を神々しくさせた。


この人、こういうので絵になるよなぁ。


「なるほど、ところでイヴァン先輩はどういう本を読むんですか?」


「そうですねぇ・・・女性を喜ばせる男の技100選とかあれば読みたいですね

もちろん、あちらの意味の技で」


脳内がピンク色なのが残念なんだよなぁ。


これで絵にしたら美しい絵画より、エロい同人誌とかになりそうだ。


「学校の図書室でなんて本探してるんですか」


「たしかに言われてみればそうですね。

私は男なのでそのような本を読んでもつまらないですね。

男を喜ばせる女の技100選のほうが面白そうです」


いや、そう意味じゃないし話が一ミリも進んでいない。


「そういう事ばっかり言ってると呼び名をイヴァン変態で固定しますよ?」


「私はそれでも構いませんよ?

変態なのは事実ですから」


俺の言葉に、イヴァンは笑顔で返した。


俺は時々、イヴァンの事をイヴァン先輩ではなくイヴァン変態と呼んでしまう。


多分、俺の頭の中でイヴァン=変態紳士というものがインプットされているからだろう。


これまでにも何回か言い間違いをしている。


まぁ、その度にイヴァンは笑いながらスルーしているのだが。


・・・やめておくか、初対面の人の前でイヴァン変態って呼んだりしたら印象悪くなりそうだし。


「まぁその話しは置いといて、今日何かあるんですか?

朝から先生達が走り回ってるんですけど」


俺が尋ねると、イヴァンは少し考えた後何か心当たりがあるのか手を打った。


「そういえば、この時期でしたね。

あの方が来られるのは」


「あの方?」


誰の事だろうか。


まさか、某探偵マンガの黒幕の人か?


「君はこの学校の生徒会長を知っていますか?」


「ん?えぇ、前に一度話してますから。

たしか、王家の第二王女様ですよね。

名前は、エマ・ダルネシア」


「そうです。

そして、多分今日はその兄である第一王子がこの学校に来るはずです」


イヴァンの言葉に俺は首をかしげた。


「第一王子が?何故ですか?」


「私がこの学校に入学する前から、年に一回この時期に学校へ視察に来ていたらしいです。

表向きは、この学校の元生徒だから。

裏向きは、遠くない日の王位継承の為に優秀な者に声をかけるためですね」


また王位継承の話か。


めんどくさいなぁ、王子も王女も。


「なるべく会いたくないなぁ」


「それは大丈夫だと思いますよ。

安全面を考慮して、王子は到着するとすぐに校長室へ行かれますから。

滞在時間もそこまで長いものではないですし」


「なら良いんですが。

ここ最近は貴族の人に声をかけられる事が多いんで、ちょっとめんどくさく思ってきたもので」


実は今日で魔法学校に入学して一ヶ月が経過した。


そして、ここ最近ある変化が訪れていた。


一人で歩いていると、貴族の女性に声をかけられるのだ。


しかも、一日に複数回は必ずと言っていいほど。


いや、別にそれ自体は良いんだよ。


俺だって初対面の人にいきなり冷たい態度をとるわけではなし、友達になりたいとか話がしたいっていうのは全然構わないんだけどさ。


そういう人を相手にしている時に分かった共通点なんだけど、皆玉の輿狙いなんだよな。


多分、真の意味で俺と友達になりたいって人はいなかったな。


話してても会話の内容から、本当に玉の輿になれるかっていうのを確認されているような気分だったし。


ちなみに、さっきの話を学校の屋上で皆の前で少し愚痴っぽく言ったらロミアが腕に抱きついてきたんだけど何かあったのだろうか。


「そういえば、イヴァン先輩。

お相手の女性は見つかりましたか?」


俺が尋ねると、イヴァンは首を横に振った。


「一応候補の方は何名か。

しかし、その方達と会話すらしたことないのでまずはそこからですね」


「失敗はしたくないですもんね。

ところでイヴァン先輩って、女性と会話出来るんですか?」


「むっ、失礼な。

私だって紳士を名乗るくらいですから女性との会話ぐらい余裕ですよ」


そう言うと、イヴァンは俺を文字通り失礼な事言うなという目で見た。


いや、だってあんた俺やシガラといるとき八割型エロトークしかしてないじゃん。


そりゃ疑うよ。


「じゃあ、女性とどんな会話するんですか?」


「そうですねぇ。

主ななのはお相手の趣味や好きなもの、あとは故郷の話をしますかね」


「故郷の話、ですか?」


俺が尋ねると、イヴァンは笑顔で頷いた。


「えぇ、この学校に通っている人は遠い故郷を出てきている人もいますから。

故郷の話題になると、懐かしくなって楽しそうに話してくれるので会話が弾むんですよ」


「へぇ、たしかに故郷の話なら当たり障りないですもんね。

でも、故郷の話ってあまり話したがらない人もいるんじゃないんですか?」


実際目の前の変態紳士は、故郷の人に嫌われてるようだし。


「その場合は話題を振った時点で相手の方の反応で必要によって変えますね。

私も故郷に良い思い出がある方ではないので、気持ちは分かりますし」


なるほど。


イヴァンはこういう気遣いとかできるから、俺の中で変態ではなく変態紳士なんだろうな。


「さて、どうやら私好みの本も無さそうですし昼食を食べに行きましょうか」


「そうですね。

そろそろロミア達も食堂へ向かっている頃ですし」


俺は読んでいた本を元の棚へ戻してイヴァンと一緒に食堂へと戻った。








「ねぇ、ガル」


食堂で昼飯を食べていると、向かいに座っているロミアが話しかけてきた。


「どうした?」


「手紙って、いつ届くのかな?」


あー、手紙か。


そういえば今から三週間くらい前、イヴァンと話した次の日に俺とロミアは家族に手紙を出したんだっけか。


たしか、俺たちがこの町に来るまでにかかった時間が二週間くらいだったな。


「そうだなぁ、今頃手紙が届いたくらいじゃないか?」


この世界の郵便はあまり発達していないからな。


届けミスもよくある話だ。


まぁ、最悪俺かロミアどちらかの手紙が届いてくれれば察して俺たち二人に返事を書いてくれる事を祈ろう。


「そっか、じゃあ返事が来るのはもうちょっと先だね」


「まぁ気長に待とうぜ。

別に焦っている訳じゃないんだから」


「うん、そうだね」


ロミアが笑顔で頷く。


考えてみればロミアもまだ子どもだからな。


親と離れてもう2ヶ月くらいか。


少しは両親が恋しくなってもおかしくはないか。


「そういえば、今日って午後は授業無いんだよね?

何しようかなぁ」


「え?」


俺は隣から聞こえたシガラの言葉に首をかしげた。


「午後、授業ないのか?」


「うん、一昨日のホームルームの時にムミータ先生が言ってたよ」


マジか、そんな事・・・あ、言ってたわ。


「完全に忘れてた。

えー、受けたい授業あったのになぁ」


「まぁ、どちらにしろ今日は指示があるまで寮の自室で待機だよ。

偉い人が来るからその安全面を考慮して」


「・・・はぁ、仕方ない。

久しぶりに昼寝でもするか。」


「別の部屋に遊びに行ってもいいのなら、私が話し相手になれるんですけどね」


隣でイヴァンが笑いながら言ってくる。


「イヴァン先輩との話しは退屈しませんけど、毎回変な方向に進みますよね」


シガラが苦笑いしながらイヴァンに言う。


ちなみにシガラは巨乳好きらしい。


「毎回思うんだけど、三人とも何の話ししてるの?」


ロミアが俺たちにそう尋ねると、イヴァンが笑顔で返した。


「男同士の話ですよ」


「そう言うロミアとヘレナは二人でいる時どんな話ししてるんだ?」


俺が尋ねると、ロミアとヘレナはお互いの顔を見た。


「色んな事話してるよね」


「うん、ロミアちゃんと話すの楽しいし」


内容は分からないが、どうやら二人は二人で楽しい会話をしているらしい。


まぁ、男同士の話があるように女同士の話もあるか。


そして、昼飯を食べ終わった俺達は各々の部屋に戻ったのだが・・・予想通りと言うかなんと言うか俺自身は無関係でこの日一日を過ごすことは出来なかった。

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