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第71話 制服と人見知り

「えっと・・・あっ、ここだね」


そう言ってシガラは1つの建物を指差した。


「さすが魔法学校の寮って言うべきかな。

予想より大きいね」


「そうだな」


俺とシガラはロミアと一旦別れて、寮を探していた。


さっそく寮を見つける事に成功して、寮母さんから鍵を借りたところだ。


そういえば、ここの鍵もオアシスと同じで木の板なんだよな。


「ん?ここじゃないか?」


俺とシガラは21と書かれた扉の前で足を止めた。


手に持っている板を確認すると、扉と同じく21と書かれていた。


俺は鍵を使い扉を開ける。


すると中には、綺麗な空間が広がっていた。


「うわっ、なんだこれ。

オアシスで俺たちが泊まった並みの部屋だな」


俺が驚いて言うと、隣にいるシガラを固まっていた。


「いや、それ以上に広いと思うよ。

凄いね、試験が厳しかったとはいえこんな部屋にタダで泊まれるなんて」


そうだ、忘れていたが俺達は入学試験を受けて入学したから色々な費用が免除状態だ。


「まぁ、とりあえず荷物置こうぜ。

入学式までに着替えなきゃいけないし」


俺はシガラにそう言うと、部屋の中へ入った。


ベッドが二つ並んでいて俺は奥側、シガラは手前側のベッドの上へ荷物を置く。


「丁寧だなぁ、部屋の隅々まで掃除が行き届いているよ」


「シガラ、部屋の綺麗さを見るのは分かるけど、隅や家具の裏まで見るのは多分それ職業病だぞ」


まぁ、何年もホテル業やっていればそうなるか。


「ゴメンゴメン、なんか気になっちゃって」


苦笑いしながら言うシガラに俺は笑いながら返した。


「まぁ、気持ちは分かるけどな。

ただ、結婚した後とか奥さんの前でやらないほうがいいぞ。

喧嘩の種になったら困るから」


そう言って、俺はシガラに向かって机の上に置いてあった綺麗に畳まれた洋服を放り投げた。


「わっ!・・・これって、制服?」


「みたいだぞ。

それにしても、サイズ間違えたのか?」


俺は自分の分の制服の上着を持ちながら言った。


明らかにデカイ、大人用のサイズだと言われても納得するくらいだ。


「たしかに大きいね。

でも、僕たち入学試験が終わった後に体のサイズ測ったよね?」


「あぁ、しかも俺とシガラの制服同じサイズみたいだな」


発注ミス、にしてもなんかおかしいよな。


意図的にこの大きさにしている感じがする。


「とりあえず着てみようか。

サイズに関しては入学式の時にでも先生に相談すれば良いし」


「そうだな」


俺達はひとまず入学式まで時間がないということで着替えることにした。


俺は着ていた洋服を脱ぎ、制服の上着に腕をとおす。


「ん?」


俺は制服に通した腕を見た。


サイズが、俺の体にピッタリのサイズになっている。


「ガル・・・」


俺は名前の呼ばれたほうを見る。


するとそこには、白い制服に身を包んでカッコいいシガラの姿があった。


「なんか、着てみたら服が体にピッタリの大きさに変わったんだよね」


シガラにそう言われ、ある1つの単語を思い出した。


「もしかしてこれって、魔法道具マジックアイテムなのか?」


俺の言葉に、シガラが首を傾げる?


魔法道具マジックアイテム?」


「俺も本で名前を知っているだけで実物を見るのは初めてだけど、そうだと思う。

魔法道具マジックアイテムは特別な魔力を帯びた材料を使って作られもので、条件が整うと決まった魔法を発動するんだ」


「決まった魔法・・・じゃあこの服の魔法って」


「多分、着た人間の体のサイズによって服のサイズも変わるって魔法だろうな」


俺はシガラに説明しながら制服に着替えた。


それにしてもこの制服スゴいな、前の世界のいわゆる学ランに似ていたから少し窮屈なのかと思ったら全然そんなことはない。


一人一着は欲しいよな、こういう便利な服。


「これ、似合ってるか?」


「うん!カッコいいよ」


シガラが笑顔で親指を立てる。


「よし、じゃあ入学式の会場へ向かうか。

もしかしたら、もうロミアが待っているかもしれないし」


「そうだね」


俺とシガラは部屋を出て会場へと向かった。








「なぁシガラ」


「ん?どうしたの?」


「なんか俺達、周りから浮いてないか?」


俺は会場へと向かう途中、周りをキョロキョロしながらシガラに尋ねた。


「・・・言われてみればそうだね。

今年入学した人だけ制服が違うのかな?」


シガラも周りを見て気づいたようだ。


他の生徒らしき人達の制服は、上下とも黒と紺を混ぜたような色をしている。


そんな中で上下真っ白な制服を着た奴らがいるとどうなるか・・・まぁ目立つな。


「でも、それにしては他に白い制服着てる人を見かけないぞ。

今日は入学式だけだろうから、在校生よりも新入生の比率のほうが多いと思うし」


「言われてみればそうだね。

僕たちの制服だけ色つけ忘れられたのかな?」


「まぁ、タダだから文句は言えないか」


タダという言葉の威力はスゴいな。


そこらの魔法よりよっぽど威力のある言葉だ。


入学式の行われる大講堂の前に行くと、入り口の横にロミアが待っていた。


「あっ!ガルー!シガラー!」


ロミアが俺とシガラに気づき、こちらに手を振る。


俺はそんなロミアの姿から目が離せなかった。


何故なら、ロミアも俺達と同様に上下白の制服を着ているのだが・・・お世辞抜きに可愛い。


白という色の効果なのか、少し清楚感がありロミアによく似合っている。


そして何より、スカートであることに感動を覚えた。


ありがとう魔法学校。


「二人ともカッコいいね!

制服似合ってるよ」


俺とシガラが近くに行くと、ロミアが笑顔でそう言ってきたので、俺も笑顔で返す。


「ロミアも似合ってるよ」


「うん!なんかより女の子っぽくなって可愛くなったよ」


俺とシガラの言葉に、ロミアが少し照れたように笑う。


「えへへ、ありがとう」


「そういえばロミア、その後ろの子は?」


俺はロミアの後ろに隠れてこっちを見ている女の子を指差した。


まぁ、隠れているって言ってもロミアより体がデカイからバレバレだけど。


「この子は寮で同じ部屋のヘレナーゼちゃん!

私達と同じで入学試験を合格して入学したんだけど、筆記試験のほうで合格したんだって」


ロミアは女の子の事を説明すると、その子の後ろに回って彼女の体を少し前へと押した。


女の子はロミアに押され、一歩前へ出ると恐る恐るといった感じで自己紹介を始めた。


「は、初めまして、ヘレナーゼと申します。

えっと、エルフの村から来ました。

村の人達からはヘレナって、呼ばれていました。

それから、それから・・・」


「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。

僕はシガラ、こっちはガル。

よろしくね」


少し人見知りなのだろうか、おどおどしているヘレナにシガラが優しく微笑みながら言う。


「は、はい、よろしくお願いします」


そう言ってヘレナがこちらにお辞儀をする。


ヘレナはクリーム色に少し白を入れたような色の綺麗な長い髪を、三つ編みにして眼鏡をかけている。


耳はエルフ族特有の少し尖った耳だ。


少し人見知りが入っているだけで、悪い子じゃなさそうだな。


「そういえば、ヘレナさんは僕やロミアより年上だと思うんですけど何歳なんですか?」


「あ、そんな丁寧に言わなくても普通に話してくれれば大丈夫。

えっと、11歳」


「11歳か。

ということは、シガラとそう変わらないのか」


俺がシガラの顔を見ると、シガラは頷いた。


「うん、僕が今12歳だからね」


今さらになって思うが、やっぱり魔法学校の生徒で俺達と同じく7歳で入ったひとっていないのかな?


周り見ても、絶対年上だろって人が多いし。


「そういえば、ヘレナちゃんも僕達と同じで白い制服だね」


「え?」


シガラの言葉を聞いて、俺はヘレナの制服を見た。


たしかに、俺達と同じくヘレナの制服も白色だ。


「えっと、他の人達は違うんですか?」


「多分今周りにいる人達も俺達と同じ新入生だと思うけど、皆紺と黒を混ぜたような色なんだよ」


「たしかにそうだね、私達だけ違うみたい」


「その事に関しては後で先生に訊いてみようか。

それより、そろそろ入学式が始まるみたいだし中に入ろう」


シガラの言葉に、俺達は頷き大講堂の中へ入った。









入学式というのはどこの世界でもさほど変わらないらしい。


担当の教師がプログラムに沿って式を進めていく。


在校生からの新入生への言葉とか、どっかのお偉いさんからの言葉とか。


まぁ、規模は凄いけど。


新入生だけで四桁はいそうだ。


それに加えて、数百人の周りを囲む教師陣。


ここまで大規模な入学式って今まで経験ないな。


そして、俺達のいるところを一階だとして二階の左右の席にお偉いさん、いわゆる貴族のような人達が座っている。


保護者達だろうか。


ただ、そんな状態だからとりあえず眠い。


気温が暖かい時期だから、すごく眠くなってるくるのだ。


そして、入学式は眠気との戦闘へと変わる。


「ガル、ガル」


そんな眠気との戦いに負けそうになっている俺の体を、隣に座っていたロミアが揺する。


「どうしたんだ?」


俺が返すと、ロミアはステージを指差した。


確か今って貴族のお偉いさんの話しが始まるところだろ?


何だ?イケメンの王子様みたいなのでもいたのか?


「新入生の皆さん初めまして。

私は、ボニータ家当主オリビア・ボニータです」


・・・!?!?!?


ステージを見ると、そこにはこちらに挨拶をしているオリビアの姿があった。


眠気が一気にぶっ飛んだじゃねぇか。


「まずは新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。

私もこの学校の卒業生という事もあり、皆さんを見ていると自分が入学した時の事を思い出します」


ものすごくまともな事を言っている。


そうだ、考えてみればボニータ家はローリンの国では貴族の中でトップだ。


その当主であるオリビアが挨拶に来ても不思議ではない。


いや、にしてもビックリしたわ。


自分の知り合いがこういう行事で挨拶するのって、体験するの初めてだからな。


そんな驚きで頭がスッキリしていた俺には、オリビアの言葉がよく聞こえていた。


「それでは、これで挨拶を終わりたいと思います。

・・・と思いましたが、今年は私事で少し特別な事がありましたのでせっかくなのでそれもお話し致しましょうか」


ん?特別な事?


疑問に思っている俺をよそにオリビアは堂々と言った。


「実は今年の新入生の中に、私の甥がいます。

そう、我が姉シルビアの息子です。

姉の名前は、知っている方もいらっしゃるかと思います」


大講堂の中が急にざわめき始める。


それに伴い、俺の心もざわめき始める。


いや、恋ではないです。


「入学したという報告を受けていなかったので少々心配していましたが、どうやら無事に入学していたようです。

甥には個人的な期待をしています。

ぜひ、立派な成績を修めてもらいたいです。

それでは、私事もございましたがこれで挨拶を終わりたいと思います」


そう言うと、オリビアはステージを降りた。


俺は頭を抱えていた。


「ガルも大変だね」


隣でシガラが笑いながら言ってきた。


「くそぉ、他人事だと思って」


「でも、オリビアさんもこれだけ大勢の人の前で言ったんだからそれだけ期待してるって事だよ」


いや、それはそうだろうけどさ。


あんな事言われたら絶対目立つじゃん。


俺の平穏で安全で安心な学校生活が遠退くじゃん。


・・・待てよ、そうだまだ俺がオリビアの甥だってバレた訳ではない。


名字だって俺はボニータじゃなくファーリンだ。


口を滑らせたりしなければバレる事はない。


落ち着け、落ち着け。


そう思って俺が気持ちを落ち着かせていると、いつのまにかお偉いさん方の話しは終わっていて校長先生の話に移ろうとしていた。


「えー、それではボルグ校長お願いします」


司会の先生に言われて、校長と思われる背の高い人物がステージに上がる。


あれ?あのおじいさんどこかで見たことある気が・・・


「新入生諸君、入学おめでとう。

ワシが校長のボルグ・ラジーアじゃ、よろしくの」


滅茶苦茶見たことがあった。


というか、あれだけインパクトある人を忘れるわけがない。


え?ちょっと待て、今校長って言った?


校長・・・校長・・・校長!?


「もしかしたら、面識のある者もいるかもしれぬが大体の者は初めましてになるかの」


ものすごく俺のほうを見ながら言ってくるんだけどあの人!


覚えてるよ!色々覚えてるよ!


はぁ、もうなんか色々と疲れた。


入学式ってこんなに疲れるものだったか?


その後、何事もなく入学式は終わった。

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