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第5話 特殊体質判明

ジークと剣術の修行の約束をしてから、1ヶ月が経過した。


俺とシルビアは、二人で庭にいた。


「では、ガル。今から魔法の授業を始めます。」


木でできた杖を片手に、いつもは着ていないキレイな紫色のローブに身を包んだシルビアが今日は教師として、俺の目の前にいる。


なぜこのような状況になっているのかというと、ジークと剣術の修行の約束をした後のこと。


シルビアが俺に、魔法に興味があるか聞いてきた。


魔法は、使ってみたいと思っていたので「はい!習えるなら習いたいです!」

 

と言ったら、

 「じゃあ1ヶ月後から魔法の授業よ!」

と返ってきた。

 

すごい満面の笑顔で嬉しそうだった。

 

その後ジークにその話をしたら、何か笑ってたなぁ。


「はい!先生、まずは何から始めるのですか?」


俺が答えると、シルビアは嬉しそうに笑った。


「今日は、あなたにどの魔法が合っているのか確かめます。

ガル、魔法の基本属性は何個だったか覚えていますか?」


「火、水、風、土の4つです。」


「そうですね、光や闇の特殊な属性を除けば、その4つが基本属性となります。」


シルビアは俺に近づいてきて、頭を撫でた。


ここ1ヶ月、魔法の基礎はシルビアに教わりながらみっちり勉強してきた。


ちなみに、シルビアも基礎を大事にする人だ。


本人が言っていた魔法の授業は、魔法を実際に使うことで、基礎知識はその前から教えるつもりだったらしい。


「では、まずは私がお手本を見せます。」


そう言うと、シルビアは俺に背を向けて右の手の平を前へ向けた。


「我が身の力を如何なる物をも燃やす炎へと変える」


シルビアが呪文の詠唱を始める。


俺は、観察するためにシルビアの横に立つ。


魔法は、使いたい魔法を決めた後決められた呪文を詠唱して発動する。


呪文は、魔法ごとにさまざまでその大きさによって詠唱の長さも変わる。


そこも座学で教わった。

まぁ、無詠唱で魔法を使える例もあるらしいけど、それができるのは限られた人間だけみたいだ。


「・・・」


俺は、真剣にシルビアの手元を観察した。


シルビアの右手の手の平の前に、炎の球体ができていきそれが大きくなっていく。


そして、炎が直径10センチくらいの大きさになると球体の増幅が止まった。


火弾ファイアーボール!」


シルビアの手のひらから、炎の球体が放たれた。


球体は、角度を上げていきながらそのまま空に消えていった。


「ふぅ、久しぶりだったけどうまくできたわね。」


シルビアは、安心した表情で笑っている。


「では、ガル。

早速ですが、今のと同じ魔法を撃ってみましょう。」


シルビアは俺の方を振り向き、魔法を撃つよう促してきた。


「分かりました、やってみます。」


俺は、シルビアに背を向けて右の手の平を斜め上に向けた。


そして、さっきシルビアの詠唱していた呪文を詠唱した。


「我が身の力を如何なる物をも燃やす炎へと変える」


右手の手のひらに、魔力が集中しているのを感じる。


魔法は、呪文を詠唱中に出す魔法をイメージして魔力を注入しなければならない。


そして、発動可能になるまで注入した魔力を維持しなければならない。


これがかなり難しい。

カラオケで歌いながら、ドミノを並べるのと同じくらい難しい。

・・・何か、俺の炎の球体歪んで球体じゃないんだけど。


ただ、とりあえず撃てるだけの魔力は注入できた。


火弾ファイアーボール!」


俺が叫ぶと、歪んだ球体が放たれた。

ただ、少し飛んでから小さくなっていきやがて消えた。


「やっぱりダメだったか・・・」


最初からできるとは思っていなかったが、ちょっとへこむなぁ。


俺がへこんでいると、シルビアが声をかけてきた。


「ガル、大丈夫ですよ。

最初からできる人なんて、そうそういませんもの。」


俺が振り向くと、シルビアはしゃがみこんで俺の頭を優しく撫でてくれた。


何でだろう、この人に慰められると何かやる気出てくるんだよな。


俺は、今の状況を考えた。


魔法を詠唱中に、魔力を注入して維持するのが難しい。


せめて、もうちょっと楽な方法があればいいんだよな。


魔力の注入は怠る訳にはいかないな。


そしたら、威力や維持できる時間に影響が出るだろうし。


そうすると後できるのは・・・


「あ、そうか」


そうだよ、できる可能性はあるじゃないか。


”詠唱のほうなら、言わなくてもできる可能性はある。“


「先生、少し見てもらえますか?」


俺は、シルビアに真剣な顔で聞いた。


「ん?はい、いいですよ。」


シルビアは、不思議そうな顔をして俺を見ている。


俺は、シルビアに背を向けて右手の手のひらを前に向ける。


イメージするのは、さっきシルビアが撃った炎の球体。


魔力を注入しながら、右手に炎に変わった魔力を集中させる。


「はぁぁぁぁ!」


俺の右手の手のひらの前に、炎の球体が出来上がっていく。


最初とは違い、ちゃんとした形の球体だ。


まだだ、まだ魔力が足りない。


全力で、魔力を注入する。


そして、球体は直径30センチほどになった。


・・・維持しろ、維持しろ、意識を逸らすな。


球体の増幅が止まった。


「行け!炎弾ファイアーボール!」


俺の手のひらから放たれた球体は、そのまま空に向かって消えていった。


大きさがシルビアの物より3倍はあったためか、見えなくなるまで時間がかかった。


「先生、どうでしぶぁ!」


俺が振り向いてシルビアに聞こうとしたら、シルビアがものすごい勢いで抱きついてきた。


「すごいわ!ガル!」


シルビアは嬉しそうに笑っていた。


「母さん、苦しいです」


俺は、シルビアの腕にタップしながら言った。


「あっ!ごめんなさいね!」


俺がそう言うと、シルビアは俺から離れた。


「もう母さん、興奮しすぎですよ?」


俺は、笑いながら言った。


「だって、すごい事なのよ?無詠唱で魔法を使えるなんて。」


「そうなのですか?確かに自分でも驚きはしましたが。」


「もう、ガルは興奮が薄いですね。」


シルビアが苦笑いしながら言った。


いや、嬉しいけどさ。あんなにあっさりとできると何か、ねぇ。


「では、他の魔法も使ってみましょうか。」


「はい、先生。」



こうして俺とシルビアの授業は、再開した。



そして、授業の終わる直前に事件は起きた。



「では、これで今日の授業は終了です」


「お疲れ様でした。」


俺がそう言うと、シルビアは優しく頭を撫でてくれた。


結局、あの後他の3つの属性の魔法も試してみた。


どれも無詠唱で使えて、決して苦手というものはなかった。


ただ、その中でも相性が良かったのは火と風だ。


この2つは、威力が他の2つと比べると桁違いだった。


「あ、そういえば1つ忘れていましたわ。」


シルビアが思い出したように言った。


「ん?どうしたのですか?」


「ガル、今から魔力が尽きるまで魔法を使ってみてください。」


「魔力が尽きるまで、ですか?」


「はい、そうです」


別に構わないけど、何かあるのかな。


俺は、シルビアに言われたとおり今日習った魔法を片っ端から使った。


そして、かなりの量の魔法を使った後。


「あれ?」


魔法を使おうと、手に魔力を注入したができなかった。


「やっとなりましたね」


「先生どういうことですか?」


俺が聞くと、シルビアは説明しだした。


「それは、魔力枯渇です」


「魔力枯渇・・・」


「魔法使いは、魔法を使いすぎると皆その症状が出ます。

もう、魔法を使えるほど魔力が残っていないのです。」


「なるほど、それで何でこれを僕に起こさせたのですか?」


俺が聞くと、シルビアは優しく教えてくれた。


「ガル、あなたみたいに無詠唱で魔法を使える人は、魔力枯渇を起こしやすい傾向があります」


「ん?どうしてですか?」


「私みたいに詠唱して使う人は、詠唱中に魔法を使うということが強く頭に残ります。」


なるほど、まぁその都度詠唱してればそうだよな。


「ただ、無詠唱で魔法を使える人はどのくらい使ったという意識が薄い事があります。」


「なるほど、つまりさっきまで使い続けた魔力の量が今の僕の総量ということですね。」


「そういうことです。さぁ、これで本当に今日の授業は終了です。」


「はい!ありがとうございました。」


「さて、そろそろお昼ご飯ですね。フィーネは何を作ってくれてるでしょうか。」


シルビアは笑顔で家に向かった。


「あ、そうでした。一度魔力枯渇になると半日は魔力が回復しないので気を付けて下さいね。」


シルビアは、笑顔で俺に振り向き言ってきた。


「はい、分かりました。」


俺が言うと、シルビアは前を向いて歩き出した。


半日か、なら午後は昼寝でもするか。


俺は、そう考えながら最初に出した魔法を思い出していた。


もっと練習すれば、あれよりもすごいのが出せるんだよなぁ。


俺は、後ろを振り向いて右手の手のひらを前に向けた。


魔力枯渇でどうせ出ないんだけどね。


そう自分で思いながらも、使えるか試してみる。


炎の球体をイメージして、魔力を注入する。


・・・あれ?


魔力が手のひらに集まっていくのを感じる。


今って、魔法を撃てないはずだが。


そう考えているうちに、大きさ10センチくらいの炎の球体が完成した。


「・・・炎弾ファイアーボール


俺が言うと、炎の球体は空に向かって飛んでいった。


なぜだ、使えてるぞ。


俺は、手のひらに魔力を注入するイメージをした。


まだまだ、余裕で魔法を使えそうだ。


どういう事だ、シルビアの話しじゃ半日は回復まで時間がかかるはずなのに。


「ガルー、何かどうしたのですかー?」


俺が考えていると、家に入ろうとしているシルビアに呼ばれた。


「いえ、今行きまーす」


まぁ、明日シルビアに相談してみるか。


俺はそう考えながら、家に向かった。

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