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第52話 双剣と決別

朝飯を食った後、俺は部屋で荷物の入ったバックを漁っていた。


「・・・あったあった」


俺はそれをバックから取り出して、手のひらの上に乗せた。


「ん?ガル、その指輪どうしたの?」


後ろからロミアが顔を覗かせて、俺に尋ねてきた。


「あぁ、これ荷物の準備をしている時に母さんから渡されたんだ。

魔法学校に着いたら、この指輪を身につけておけって。

正直な話し、アルマの指輪を見るまでは忘れてたけど」


「俺の指輪がどうかしたのか?」


窓から外の景色を見ていたアルマがこちらを見て尋ねてきた。


「あぁ、いやアルマの指輪見てこの指輪を母さんからもらった事を思い出したんだよ」


俺はそう言ってアルマに指輪を見せた。


アルマはそれを手に取って観察した。


「ん?この模様どこかで見たことあるような・・・」


「え?どこでだ?」


俺が尋ねると、アルマは少し考えた後諦めたように俺に指輪を渡した。


「・・・ダメだ、思い出せねえ」


「そうか、まぁ思い出した時は教えてくれ」


「あぁ、分かった」


俺はアルマにそう言って、指輪を左手の人差し指にはめた。


・・・待てよ。


俺は自分の人差し指にすんなりハマった指輪に違和感を覚えた。


シルビアと俺じゃ指の大きさが違うはずだ。


シルビアの方が大きいから、この場合指輪はユルユルになると思うんだが・・・。


実際には指輪は俺の指のサイズにピッタリだ。


「ガル、どうしたの?」


俺が指輪をじっと見つめているからだろうか、ロミアが尋ねてきた。


「いや、何でもない。

そうだロミア、今日何か予定あるか?」


俺が尋ねると、ロミアは首を傾げた。


「ん?特に無いよ?」


「じゃあ、ちょっと付き合ってくれないか?

シガラを探したいんだ。

今日休みかなぁ」


「シガラなら、今日は確か妹さんと買い物するって言ってたよ」


「そっか、なら邪魔しないほうが良さそうだな。

・・・って、何でロミアがそんな事知ってるんだ?」


「昨日シガラと話している時に言ってたんだよ」


ロミアの言葉に俺は首を傾げた。


「シガラと仲良いのか?」


「うん、私は仕事のやり方全部シガラに教わったし。

魔法学校に入学するための魔法の練習にも付き合ってるよ」


「そうだったのか。

じゃあ、別にわざわざ俺が様子を見に行く必要もないか」


ロミアが見てくれるなら安心だし。


「そういえば、シガラに魔法を小さく使うの教えたのってガルなんだよね?」


ロミアの言葉に俺は頷いた。


「あぁ、絶対合格できる方法っていうのがほとんど無いからな。

今のところ、あれが一番合格に近いだろうし」


俺が言うとロミアが苦笑いした。


「でも、やっぱりシガラ苦労してたよ。

私も見せてもらったけど、魔力を注入して維持する時間が多分人より短いから、撃てる状態になる前に集中が切れちゃうみたい」


「なるほど・・・ちなみに最近で一番小さくできたのってどのくらいの大きさなんだ?」


「うーん、確かこれくらいかな」


そう言うと、ロミアがピンポン玉くらいの大きさを指で表した。


「・・・シガラのやつ頑張ったんだな。

この短期間でそこまでにしたのか」


「仕事の休憩中もできる限り魔法の練習をしてたみたいだよ。

ただ・・・今の状態だと試験の当日までに完璧に出来るかは微妙だね」


「まぁ、元々ギャンブルに近かったからな。

シガラの魔力の総量がどれくらいか分からないから、分の悪いギャンブルではあるけど」


魔力の回復時間は、俺みたいな特殊体質でもない限りは0から全回復するにはロミアでさえ約半日かかる。


だから実際問題1日でどれくらい魔法を扱えるかは、元々の魔力の総量で決まってくる。


「でも、何で大きくする方を教えなかったの?

あっちの方が、小さくするよりは簡単だよ?」


そういえば、ロミアは小さくするのは苦手だったな。


俺は少し考えながら天井を見た。


「うーん・・・強いていうなら一発でインパクトがあるからかな」


「インパクト?」


俺の言葉にロミアが首を傾げる。


「確かに普通の人が見た時は大きい方が評価されるかもしれないけど、相手は仮にも魔法を教える先生達だ。

ロミアくらい大きく出来るなら良いけど・・・お前だってかなり練習して今の大きさに出来るようになっただろ?」


「うん・・・1年位かかった」


確かにロミアは物覚えは良いし、魔法に関しては天才と呼んでも過言ではない程の実力を持っている。


でも、その裏では必死に努力をして今の実力を手に入れたという事実がある。


そのおかげで、今じゃ涼しい顔をして隕石を落とせるくらいだしな。


「だから、生半可な大きさじゃインパクトが足りないと思うから小さくするほうにしたんだよ」


「そうだったんだ。

でも、確かガルも小さくするほうだよね?

良かったの?シガラに教えちゃって」


ロミアの言葉に俺は苦笑いした。


「何となくだけど、シガラとは一緒に入学したいと思ったからな。

それなら別に、多少俺が不利になることくらいどうってことないしな」


俺が言うと、ロミアは笑った。


「ガルのそういうところ、好きだよ」


「・・・そっか。

そうだロミア、俺もシガラ会ったら言うけどお前にもシガラに会ったら伝えてほしいことがあるんだ」


「伝えてほしいこと?」


俺はロミアに近づいて、小声で耳打ちをした。


俺が離れると、ロミアは首を傾げた。


「今のを伝えればいいの?」


「あぁ、もしシガラに何か訊かれたらやってみれば分かるって言っといてくれ」


「うん、分かった」


頷くロミアを見て、俺は立ち上がった。


「ロミア、どっちにしろ今日はちょっと付き合ってもらえるか?」


「良いけど、何かあるの?」


「久しぶりにアレをやらないか?」


「アレ?

・・・今度は負けないよ」


ロミアは少し考えた後、何か思い出したのか笑って言ってきた。


「お前相手じゃ気が抜けないからな」


俺はロミアにそう言って、クレアの方を見た。


「クレア、今日って何か用事はありますか?」


俺が尋ねると、クレアは首を横に振った。


「ううん、今日は特に用事は無いけどどうしたの?」


「久しぶりに手合わせしませんか?」


俺が尋ねると、クレアは笑顔で返した。


「・・・本気で、やっていいの?」


「もちろん、手合わせですから」


俺が返すと、クレアは嬉しそうに立ち上がった。


「アルマ、お前も一緒に来るか?」


「別に良いけど、何するんだ?」


尋ねるアルマに俺は笑顔で返した。


「まぁ、見てる分には良い暇潰しになると思うぞ」


その後少しして、俺達4人は部屋を出た。






町を出てすぐの1本の大きな木が生えた草原。


俺たちはそこに来ていた。


「さてと、この辺りで良いかな」


俺は木のそばで、持っていたバックを降ろしてはめていた指輪を外して閉まった。


「ここって・・・」


クレアが辺りを見渡して呟いた。


「他に良いところがあれば良かったんですけど、ここしか思い浮かびませんでした」


俺が苦笑いしながら言うと、クレアは首を横に振った。


「いや、ここなら泣かせてもらったお返しができるよ」


・・・俺、死なないよな?


「それじゃあ、最初はガルとクレアでやるの?」


尋ねてくるロミアに俺は頷いて返した。


「あぁ、ロミアとアルマはここで見ててくれ」


俺はバックの中から、2本の木の剣を取り出した。


「ガルファット君、双剣を使うの?」


後ろからクレアに尋ねられて、俺は振り返った。


「はい、ちょっと試したいことがあるので」


そういえば、いつも手合わせの時は両手剣だったからな。


クレアが不思議に思うのも無理はないか。


「さて、じゃあやりますか」


俺とクレアはお互いに距離を取った。


だいたい50メートルくらいだろう。


クレアは所定の位置に着くと、上着を脱いでその場に置いた。


下はノースリーブの服だ。


そして、綺麗な肌が赤黒い色に変わった。


硬質化ハーデントか」


初めからあれをやるってことは、間違いなく本気だな。


しかも、今回は全身を硬くしている。


あれで殴られると、下手すると骨が折れるからな。


直撃は厳禁だな。


俺は双剣を持って構えた。







ガルファット君が双剣を構えて、こっちを観察している。


そういえば、手合わせするのも久しぶりだ。


前まではあっちの出方を見てたけど、良かったためしがなかったし・・・今日はこっちから行ってみようかな。


僕はガルファット君に向かって全速力で走り出した。


すると、ガルファット君は片膝をついて持っていた双剣を地面に刺した。


そして、地面に両手をついた。


・・・何か来る!


ガルファット君と手合わせすると、時々この感覚に襲われる。


最初は何か分からなかったけど、今はハッキリと分かる。


これはガルファット君が何か仕掛ける時の感覚だ。


ただいつもの僕ならここで止まったかもしれないけど、今回は止まらない。


僕はスピードを緩めずそのまま突っ込んだ。


「・・・岩壁ロックウォール!」


突如僕の目の前に岩の壁が現れる。


これはいつもガルファット君が何か仕掛けてくる時の戦法だ。


前までの僕なら足を止めたかもしれない・・・だけど


「今日の僕はこんなのじゃ止まらないよ!」


僕は走りながら右拳を振りかぶった。


「ハアッ!!」


僕は岩の壁を破壊して、そのまま突っ込んだ。


「いない!?」


岩の壁を抜けると、そこにガルファット君の姿はない。


「分かってましたよ。

だからこそ、今日はこれを選んだんです」


ガルファット君の声が聞こえる。


僕は声のした方を見た。


そこには剣を目の前でクロスして構えているガルファット君がいた。


ダメだ!!


僕は慌ててガルファット君のいる方とは逆の方に、バックステップで移動した。


この距離なら、ガルファット君がこっちに突っ込んで来ても充分反撃できる。


「・・え?」


僕の体が、頭が、違和感を感じ取っていた。


おかしい、ガルファット君は反応が良いはずだ。


なのに・・・突っ込んで来ない。


交差斬撃クロススラッシング!」


ガルファット君がその場で剣を振り叫ぶ。


でも、あそこじゃ空振りになる・・・


「!?」


僕は咄嗟に腕を交差させてガードした。


しかし、強い力でそのガードは弾き飛ばされた。


「くっ!」


僕はその勢いを利用して、後ろにバク転をして距離をとる。


「何だ、今の・・・」


ガルファット君が剣を振った後、何かが僕を攻撃した。


急な事だったからハッキリ捉える事はできなかったけど。


ガルファット君は距離を保ったまま、その場から動かずこちらを見ている。


自分の腕を確認した。


見ると、小さな切り傷がさっきの何かが当たった所に出来ていて血が少し垂れている。


なるほど、何か鋭利な物って事か。


だけど、これくらいの威力じゃケガ覚悟で突っ込めば怖くない・・・


僕がそう考えた時だった。


ちょっと待って!


僕は今、硬質化ハーデント中だよ!?


この能力を発動している間は、剣の攻撃はおろか大抵の魔法でも傷なんてできないはず。


だけど、実際に僕の腕はさっきの攻撃で受けた傷から血を流している。


「・・・ハハッ」


僕は笑っていた。


「どうしたんですか?」


そんな僕を見て、ガルファット君が尋ねてくる。


「いや、僕は甘えてたんだなって思って」


僕は顔を上げて、ガルファット君を見た。


「攻撃を受ければケガをする。

そんな当たり前の事に驚いて、硬質化ハーデントを使える事に、その特性に甘えてた自分がバカみたいでね」


「なら、ここからはどうするんですか?」


・・・師匠、今ならあなたがあの時言っていた言葉の意味が分かる気がします。


あの時の僕は納得できずにそんなことないって否定し続けていた。


自分に力が無いことから逃げ続けていた。


でも、それは今日で終わりにします。


ガルファット君の言葉に、僕は胸を張って返した。


「ここからは、少し昔に戻ろうと思うよ」


「昔に、ですか?」


「そう。

弱虫ってバカにされていた僕自身の“最弱であり最強の時代”に」


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