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第39話 旅路と夫婦

家を出て数時間後、俺、ロミア、クレアの3人は町に寄っていた。


前にフィーネの誕生日プレゼントをロミアたちが買いに来た町だ。


何でそんな町に寄っているかというと


「さて、とりあえずはこの町で始めるか」


「僕たちをローリンに運んでくれる運搬者を探すんですよね?」


俺が尋ねるとクレアが頷いた。


「ここから魔法学校のあるところまではかなりの距離があるからね。

人の足で行くのは苦行になっちゃうよ」


クレアが苦笑いしながら言った。


「それで、誰か連れていってくれそうな人はいるの?」


「それを今から探すんだよ。

運良くローリンの方に行く人がいれば儲けもの、いなかったら次の町まで行って探すの繰り返し」


「早めに見つけないと、試験の日までに間に合わなくなっちゃう・・・」


ロミアの言葉に、クレアは頷いた。


「そういうこと。

さてと、まずは食べ物を売っているお店を探そうか。

そういうお店は他のお店と商品を交換することがあるから、運搬者がいる可能性も高いからね」


クレアの言葉に俺とロミアは頷いて、町の中に歩き出した。


この町は結構活気がある所だ。


俺たちは今大通りを歩いているが、周りには色々なお店がある。


それこそ食べ物を売っているお店や、雑貨を売っているお店。


中には剣などの武器を売っているお店もある。


そんな所を歩きながら手当たり次第にお店の人に声をかけていった。


で、その成果はというと・・・


「うーん、残念だけどうちで雇ってるのは少し前に出発しちまったからなぁ」


「そうですか。

すみません、ありがとうございます」


クレアがお店の店主であろう男に頭を下げる。


これでもう何件目だろう。


そこそこの数のお店の人に訊いてみたが、どのお店でも運搬者はもう出発してしまったとのことだ。


「うーん、来るのが少し遅かったかなぁ・・・」


クレアが困り顔で呟いた。


「そろそろ次の町に移動してみますか?」


そんなクレアに俺は尋ねた。


「そうだね。

そろそろ移動を考えてみるか」


そう言ったクレアはまた周りをキョロキョロ見ながら歩き始めた。


「いてっ・・・」


少ししてクレアが目の前から歩いてきた男の肩にぶつかった。


「おう、大丈夫か?」


恰幅が良く、口元に髭を生やしている男はクレアの方を見ながら尋ねた。


「大丈夫です。

すみません、少しボーッとしてたもので」


そう言いながら、クレアはその男に頭を下げた。


「いや、俺の方こそよそ見してて悪かった・・・ん?お前何処かで会ったか?」


男の言葉に、クレアは顔を上げた。


「え・・・あ、もしかしてブロンさんですか?」


クレアが思い出したように、男に言った。


「あぁ、そうだが」


「僕です、クレアです。

今から3年位前にローリンからここまで運んでもらった」


「え・・・あ、あぁ!!

思い出した!あのときの坊主か!

すごい久しぶりだな!」


男は懐かしそうにクレアに言った。


「師匠、この人はどなたなんですか?」


俺が尋ねると、クレアは俺とロミアのほうを見た。


「ん?あぁ、ごめんね。

この人はブロンさん、3年前に僕が初めてこの町に来たときにローリンからここまで運んでくれた人なんだ」


「坊主、この子達は?」


クレアに男が不思議そうに尋ねた。


「男の子のほうがガルファット君っていって僕の弟子、女の子のほうがロミアちゃんっていってガルファット君の友達です」


「初めまして、ガルファット・ファーリンです」


「えっ、えっと、ロミア・サダージュです」


名前を名乗ってお辞儀をする俺を見て、ロミアも慌ててマネをした。


すると、男は大きな声で笑った。


「ハッハッハッハッ!

礼儀正しいな!俺はブロン・カナイダ!

荷物を運ぶ仕事をしている!よろしくな!」


ブロンは豪快に自己紹介をすると、クレアの方を見た。


「しっかしこの坊主がお前の弟子か」


「はい、僕にはもったいないくらい良い子ですよ」


「それで、今日はどうしたんだ?

見たところ、ただの散歩には見えねえが」


そう言うと、ブロンは俺たちの足元を見た。


3人とも、大きめのバッグを持っているからそりゃそう思うよな。


「実は、二人が魔法学校の試験を受ける事になったのでローリンに向かうところなんですよ。

ただ、中々運んでくれる人が捕まらなくて困ってるんですよね」


クレアがブロンに言うと、ブロンは顎を触りながら言った。


「うーん、ローリンまでか。

・・・よし、3人とも俺が連れてってやるよ」


「え?良いんですか?」


クレアが驚いた顔をして尋ねると、ブロンは笑いながら言った。


「お前には借りがあるからな!

ちなみに、弟子ってことはそっちの坊主も戦えるのか?」


ブロンが俺を見ると、クレアは苦笑いしながら言った。


「正直な所、僕よりも強いですよ。

ロミアちゃんの方も、できることなら相手にしたくないですね」


「そんなにか!?

よしっ!それなら文句はないぜ!」


ブロンは胸を叩いて堂々と言った。


「ちょうどローリンに行く予定があるしな!

ミレルダには俺から話しておくぜ!」


「それなら、お言葉に甘えさせて貰います」


そういって、クレアはブロンに頭を下げた。


どうやら、俺たちはローリンまでの移動手段を確保できたようだ。


「じゃあ、俺は準備もあるから先に馬車に行ってるからな!

あの店の後ろにあるから、少ししたら来てくれ!」


そう言って、ブロンは食べ物を売っている小さいお店を指差した。


「分かりました。

それじゃあ、後で行きますね」


クレアがそう言うと、ブロンは頷いてその場を後にした。


「なかなか豪快な人ですね、ブロンさん」


俺が言うと、クレアが笑いながら頷いた。


「うん、昔僕がお世話になってた時もあんな感じたったよ。

もう3年も前の事だけど、人ってなかなか変わらないんだなぁ」


「それで、ブロンさんに後で来てって言われたけど何処かで時間潰すの?」


ロミアに質問されて、クレアがこちらを向いた。


「ブロンさんに送ってもらえるなら、寄りたいところがあるからそこに寄ってから行こっか」


そう言って、クレアは何かを探すように歩き出した。


「よし、ここならあるかな。

ちょっと買い物してくるね、すぐに戻ってくるよ」


クレアは少し古めのお店の前で立ち止まると、俺とロミアの方を振り返って言った。


「分かりました、じゃあ僕たちはここで待ってますね」


俺がそう言うと、クレアは「ありがとう」と言って店の中に入っていった。


「良かったね、送ってくれる人見つかって」


隣で言うロミアの言葉に、俺は頷いた。


「そうだな、ブロンさんも信用できそうな人だしとりあえず魔法学校までの移動は安心できそうだ」


「そういえば、クレアさんは私達と別れた後どうするんだろう」


その言葉を聞いて、俺はロミアの方を見た。


「どうするって?」


「旅をするっていうのは分かるんだけど、何処に行くんだろうと思って。

そういうこと、今思えば訊いてなかったなぁと思って」


そう言われると、確かにそうだ。


俺たちは出発の日の今日まで、自分達が魔法学校に行く方法などは念入りに話し合ったがクレアがローリンに着いた後どうするかは訊いてない。


「移動するときにでも師匠に訊いてみるか。

どうせ、移動中は何か無い限りは暇になるだろうし」


俺が言うと、ロミアはコクッと頷いた。


「そうだね、それにどこにいるか分からないと手紙の書きようもないし」


「あー、それは困るな。

俺も師匠には手紙を書きたいし」


あの人には、色々自分が覚えたこととかは報告しておきたいんだよな。


「おまたせー、ごめんね探すのに少し取られちゃったよ」


俺とロミアがそんな会話をしていると、クレアが店の中から何か黒い物を持って出てきた。


「師匠、それはどうしたんですか?」


俺がクレアの持っている物を指差しながら、尋ねた。


「ブロンさんは快く了承してくれたけど、相手に何かしてもらった時はお礼をするのが礼儀だからね。

ブロンさんの奥さんが料理好きだから、調理道具を渡そうと思って包丁とフライパンを買ってきたんだ」


そう言うと、クレアは自分の持っている包丁とフライパンを俺とロミアに見せた。


クレアのこういう常識を考えて、相手に何かをする所は人として本当に尊敬できるよな。


やっぱり、俺の師匠だわ。


「でも、料理好きな人ならフライパンや包丁くらいなら自分のを持っているんじゃないの?

食べ物とかのほうが喜ばれそうな気がするけど」


「実はフライパンや包丁のほうが食べ物よりも少し高価なんだ。

おかげで、普通の家だともう使い物になるくらいに消耗することが多いんだよ。

だから、人に渡すときは食べ物より高価なこっちのほうが喜ばれやすいんだ」


ロミアの言葉に、クレアが笑いながら返した。


「へぇ、そうなんだ」


ロミアが感心しながら頷いている。


「まぁ、今のはフィーネさんに教わったことなんだけどね。

こういうときに役にたつから、本当にあの人の知識はすごいよ」


クレアの言葉に俺は納得した。


さすがはスーパーメイドだな。


フィーネに隙無しか。


「さてと、そろそろブロンさんの言っていた場所に行ってみようか」


そう言って歩き出したクレアの後を追うように、俺とロミアも歩き出した。


大通りから1つズレた、店の後ろにバロンさんはいた。


馬車のような物と、木に縄で止められている馬、そして、今から運び込まれるのであろう木箱の荷物が置いてある。


「バロンさん、何か手伝える事はありますか?」


クレアが近づいて尋ねると、バロンはこちらを見て豪快に笑った。


「ハッハッハッハッ、そんな気を使わなくて大丈夫だぞ。

それより、お前たちも自分の荷物を積んでおけ。

忘れたじゃ、話しにならないからな」


「それもそうですね」


「あんたー、さっさと荷物積んじまうよ」


声がして、俺たちはそちらを見た。


そこには、ブロンと同じくらい恰幅の良い中年の女性がいた。


「ミレルダさん!お久しぶりです」


クレアが頭を下げると、女性はキョトンとした顔をした。


「ん?あんた・・・もしかしてクレアかい!?」


「はい、お元気そうで何よりです」


クレアがそう言うと、ミレルダさんはクレアに抱きついた。


「さっきは一瞬分からなかったよ!

あんた、何だか女らしさが増したんじゃないかい?」


「そんなことないですよ。

そろそろ成人ですけど、まだまだ結婚してくれそうな相手はいませんから」


クレアが笑いながら答えている。


「そういえば、そっちの子達は?」


ミレルダが俺とロミアの方を指差して尋ねた。


「僕の弟子とそのお友達です」


「弟子!?

あんた弟子なんかいたのかい!?

弟子よりまず男を捕まえるのが先だよ!」


ミレルダの言葉に、クレアが苦笑いした。


「僕もできればそうしたかったんですけど、流石に僕みたいなのを貰ってくれる物好きは中々いませんよ」


「あんたまだそんなこと言ってるのかい!?

女は度胸!自分が気に入った男には積極的にぶつかるんだよ!」


何か、ミレルダって雰囲気がブロンと似てるんだよな。


似た者夫婦ってことか。


「それはまぁ、間違ってはいないとは思うけど・・・あ、そうだ!二人の紹介をしてなかったね!」


クレアがあからさまに話を逸らして、俺とロミアの方を見た。


「こっちの男の子が僕の弟子のガルファット君、それで隣の女の子がガルファット君の友達のロミアちゃんです」


「初めまして、ガルファット・ファーリンです」


「ロミア・サダージュです」


俺に合わせて、ロミアも頭を下げた。


「礼儀正しい子達だね!

私はミレルダ・カナイダ!そこのブロンの妻だよ!」


うん、デジャヴに思ったけどやっぱり似てるなこの夫婦。


「しっかし、この子があんたの弟子とはねぇ。

見たところ礼儀も正しいし、見たところ将来は良い男になりそうじゃないか。

いっそのこと、この子を旦那にしたらどうだい?」


「駄目ですよ、ガルファット君はモテモテだから僕なんかじゃ見向きもしてくれませんよ」


ミレルダの言葉に、クレアが苦笑いしながら答えた。


「・・・あんた、さっさと荷物を積んどいておくれ」


「ん?おう、分かった」


ミレルダに言われて、ブロンが馬車の中に入っていった。


「あんた達は、馬に挨拶をしてきな。

これから世話になるんだ、顔合わせくらいしておきな」


ミレルダがそばの木に繋がれている馬を指差して言った。


「分かりました、行こうロミア」


「うん!あれ馬っていうんだ!」


「ん?馬知らないのか?」


「うん!初めて見た!」


ロミアの奴、馬見るの初めてだったのか。


どおりで、初めて見たときから目をキラキラさせていたと思った。


俺はロミアに手を引かれて、馬の方に言った。








「それで、本命の男がそばにいるのになんで何も言わないんだい?」


ミレルダさんがガルファット君たちの方を見ながら、僕に尋ねてきた。


「・・・何であの子が僕の本命だって分かったんですか?」


「そりゃあ、女の勘よ。

女ってのは年取るごとに、勘が鋭くなるんだよ」


「そうなんですか?

僕はまったくそんな勘はないんですけど」


「あんたはまだまだ若いじゃないか。

これからどんどん鋭くなっていくよ」


ミレルダさんは笑いながら言った。


「それに、さっきも言ったように本命の男がいるならさっさと気持ちを伝えてきな!

早くしないと他の女に取られちゃうよ!」


ミレルダさんの言葉に、僕は首を横に振った。


「どうせ僕なんて見向きもされませんよ。

ガルファット君なら、もっと他に良い人がたくさんいますし」


「そんなものかねぇ、私なら駄目で元々で言ってみるけどねぇ」


「残念ながら、僕にそこまでの勇気はありませんよ」


「おーい、こっちは準備できたぞ」


ブロンさんが馬車の中から、僕たちに言ってきた。


「すぐに行くよー!」


ミレルダさんがブロンさんに向かって叫んだ。


「続きは今度にしようかね。

クレア、あの子達を呼んできておくれ」


「分かりました」


ミレルダさんに言われて、僕はガルファット君達を呼びに行った。


「あの子ももう少し強気にいってもいいと思うんだけどねぇ」


その後、僕たちはブロンさんたちの馬車に乗せてもらって町を出た。

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