No.6 平穏
日常の描写が一番難しいと気づきました。
ちょっと練習が必要ですね。
それからの日々は相当に平穏なものだった。数回警報音もなったが、ラキが伝える情報によると斥候型がメインだったようだ。人工衛星からの砲撃の影響を調査する目的なのだろう。
そんな中訪れた来客は、暇を持て余した彼らを十分に楽しませたようだ。
「あなたがフィラル部隊長ということでよろしいか。」
訪れたのは剛毅な顔立ちの男だった。年齢的にはフィラルやフールと変わらないようだが、口調のせいでより歴戦の猛者の風格が出ている。
「そうだが。どんな用でここに?」
「私はレシオという。全滅した第768部隊が他部隊の人員によって再構成されたのだ。私がその部隊長になったのだが、軍の中でも最上位の戦闘力を誇る第769部隊の隊長が誰か気になったのだ。」
「なるほど。かなりのベテランに見えるから知っているとは思うが、ここは全拠点の中でも指折りの激戦区だ。死なないように気をつけて欲しい。」
「分かっている。最強格の部隊の上位が丸ごと病院送りになるようなところはなかなかないからな。」
レシオは豪快に笑う。こういうタイプはだいたい殿を率先してするため死にやすいのだが、それでも生きているのはよほど強いことの裏付けだろう。
「仕方ないじゃないですか。最新兵器をいきなり投入されて、それと戦って生きている時点で隊長達は化け物ですよ。」
イグヌが不満げに述べる。バカにされているように聞こえたのだろう。豪快な性格は誤解されやすかったりもする。
「確かにそうだ。そしてそれについて聞きたいことがあってな。その新兵器とやらは乱発されそうなものなのか?そうであれば籠城しての狙撃くらいしか方法がなくなるぞ。」
「その心配はないと思うな。あの時も未観測の大型が座標特定用と思われるレーザーを撃っていた。まだ単体での運用は不可能そうだから予兆が必ずある。」
「そうか。つまり大型クラスが出てきた場合は気をつけるべきだが、それ以外は必要ないと。」
「そういうことだ。詳しくは基地の参謀に聞くといいぞ。多分この会話も聞いているだろうし。」
その言葉が発せられた途端、スピーカーから通電音が鳴った。
「なんで分かったんですか!?」
いつも落ち着いてるラキが素頓狂な声を上げる。あくまでお嬢様なのだから顔も真っ赤だろう。
「この病院に盗聴器が仕掛けられていないわけがないでしょう。全ての隊の作戦室にも盗聴器がありますしね。そんなキメの細かい仕事ができる人間はこの基地では貴女くらいです。」
フィラルは淡々と返す。何年も戦場で生き延びてきた男の観察力は凄まじいものだ。
「ま、まぁいいです。参謀室に来て下さい。他の参謀は仕事してないので遠慮はいりません。」
「まともに仕事している職員とは珍しいな。しかも女と。これはフィラル殿、役得だっただろう?」
からかい方まで将軍タイプのテンプレートを走っている。
「変な話は良いです‼︎早く来て下さい‼︎」
プツンとスピーカーの音が途切れる。
「からかいすぎたかな。それでは私は話を聞いてくるとしよう。フィラル殿全く有意義な時間であった。今後もよろしく頼む。」
レシオが去っていく。
「あの人めんどくさいですね。喋り方が古いし、ベテランとはいえ本当に強いんですかね。」
本人が去った途端レシオを攻撃するキト。冷淡にして攻撃的だが、戦場では得する性格である。
「まあ良いじゃないか。死を身近に知る環境だ。やりたいことをやるのが正しいだろう。」
「そうですけど…」
フールがたしなめる。だいたいイグヌがたしなめるのだがそうするとよく喧嘩になるので、たまにフールが止めに入る。
「面白い人間だったと思う。あのタイプで生き延びてるんだから俺たちも早く治して頑張らないと負けるぞ。」
フィラルは最近ずっと読んでいる本から目すら上げずに言う。しかし、レシオがあまり好きじゃなさそうな若者2人には負けるという言葉は効果覿面のようだ。
「はいっ!」
どこの主人公かという風にイグヌが叫ぶ。
それからしばらくしっかり怪我を治してリハビリに励む2人をフィラルとフールは微笑ましく見守るのだった。
途中で何やってんのかわからなくなるクラスで苦手でした。プロの小説家の人ってやっぱり尋常じゃありませんね。プロになりたいとは思いませんが、書いてる以上、人を楽しませられるようになりたいです。