No.0 とある物好きの備忘録
かつて、宇宙には流浪の民がいた。彼らは知的生命体の存在する惑星を探し、そこで食料や新たな知識を手に入れていた。その見返りとして、彼らは様々なテクノロジーや情報を提供した。通常では交信すら難しい遥か彼方の惑星と惑星を結ぶ彼らの存在が、宇宙の文明発達の一助となったことは否めない。その移動の軌跡に残る痕跡を彗星になぞらえて、「ほうき星」と呼称された。そのような状況は数百年持続した。
しかし、彼らは唐突に姿を消した。彼らのもたらす恩恵はあまりに大きく、それゆえに回復不可能な打撃を受けた組織・国家も多かった。捜索隊を結成した国家も存在したが、近距離の惑星としか協力できない状況では満足に力を発揮できず、すぐにうち止められた。クルーと近しい人々の証言から分析すると、彼らがその時航行していたのは知的生命体が存在しないとされる星団であった。その為、「物資が切れ、クルーが餓死したのだ」という説が完全に定着し、信じられてきた。しかし、一人のクルーが漏らしたとされる「在るべき場所へと還るのだ。」という謎の言葉もあり、一部の物好きたちは未だにこの事件に関する研究を行っている。
比較的近距離の惑星で連合王国を作るなど、様々な策をとった国々は「ほうき星」なしでも宇宙を発展させられるようになり、彼らの存在は歴史の中か物好きたちの研究会の中でしか確認することができない。物好きたちの研究会も時の流れと共に縮小しており、彼らは人々から忘れられることになるのかもしれない。しかし、私は未だに「ほうき星」が存在することに賭けてみたいと思う。彼ら独自のテクノロジーも少なからず存在しており、その存在は今でも我々の心を刺激する。そんな年寄りの夢が叶えば良いのだが。
プロローグです。世界観の予備知識となっております。かなりガサツな文ですが、今後もこの調子なので、我慢できる方でなければ、今後読むのが辛いかもしれません。