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『口角』
けじめだと自分に言い聞かせて、膝をついた堕天使の首目掛けて刃を走らせる――が、それは虚空を斬り裂くこととなった。
無数の赤き羽が宙を舞い、鮮血の翼を携えし者が舞い降りる。
「勘違いするなよルシファー。オレの目的は、このオレの最高傑作を汚した魔王を消すことだ」
「相変わらず身勝手な奴だ」
初めての邂逅のはずなのに何故だろうな。
何処かで会ったような気がするのは……。
「――なんてな。堕天使アルカクィエルが自ら現れるとは星でも降ってきそうだ」
冗談を口にして頭を落ち着かせ、状況の整理に思考を切り替えた。
刀が首に触れる直前でルシファーが消えた。
いや、正確にはアルカクィエルの近くまで一瞬で移動したのだ。
「どうやら厄介な奴らしい。フィーネ、警戒しろよ」
「うん。レグルスこそ、油断しないでね」