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『待ちわびた』
その姿をお目にかかったパイモンの心の中は一瞬で歓喜に満ち溢れた。
「あぁ……あああ……どれほど、どれほど願ったことか。この時を待ちわびたことか」
6枚の黒い翼を背中から生やした、整った顔立ちの青年が唇を震わすパイモンを眺めていた。
〈天界〉の最高位天使――熾天使でありながら神に反逆した者。
仕える主への反逆と言う行いへの罰として〈冥界〉に落とされた――堕天使。
「よくぞご無事でいらっしゃった。わたくしパイモン、感動のあまりうまく言葉を紡げません」
そして、力で〈冥界〉の頂点に立ち、堕天の皇と呼ばれし者。
「――ルシファー様」
涙を溜めきれずに頬から垂れいく眼差しが見つめた。
その者こそ――ルシフェルト・ウェルテクス。
歴史に名を刻む堕天使ルシファーである。
パイモンはルシファーが〈冥界〉で過ごしていた頃の一番の側近であった。さながら崇拝するかの如く慕う相手がいなくなった世界で彼は嘆き続けた。