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『命在るもの』
――生命。
生物を生物たらんとする根源のようなもの。
それがなくなることは死を意味する。
だが、生命とはどんなものに宿るのだろうか。
種としての繁栄のため、卵から産まれるものもいれば、母から産まれるものもいる。
ならば、人が形造った造形物に生命は宿るのだろうか。
――そもそも生命とは何なのか?
疑問を問い続ける者が、ここにいる。
「気持ち悪い奴に出くわしちまったなぁ」
「我が子らを生きていると言ってくださったあの方のために、ここで死んでもらう」
〈死の人形師〉――ゴイレン・ウェンザルが常に抱いている疑問。
何故、誰も我が子らに意思が、命があるのだと理解してくれないのかと。
「人形で遊ぶようなお子ちゃまが大きく出たな」
火を模した長い赤い髪を後ろで束ね、瞳も同じく朱に染まった悪魔が人形を周囲に展開させたゴイレンを嘲笑う。




