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『求めて』
〈悪魔族〉を相手にする。
それ即ち、子が親を相手にするようなものだ。
「こっの!」
「――いッ!」
ロアンの鋭い爪が悪魔の皮膚を抉る。
血を滴らせながら慌てて距離を取った。
自分より劣るはずの〈魔族〉に圧倒されている事実は、彼に混乱を強いた。
――こんなことはありえない。あってはならないんだ。誇り高き悪魔であるオレが負けるなんて、と。
しかも、見た目が少年なのが焦る心に追い討ちを与える。
「認めん。認めてなるものか!!」
両手の黒い爪を鋭利な刃物の如く伸ばし、ロアンを引き裂かんと跳躍した。