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最後の魔王伝説  作者: 入山 瑠衣
第十章 冥界よりの侵略者
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『自我』

 それは悲痛な叫びだった。


「こんな思いをするなら、感情なんていらなかった!」


 ――喜怒哀楽。


 はたまた感情、思考、知性。


 そう呼ばれるものを所有していることが当たり前の人間たちとは違い、後から与えられたとすればいったいどうなってしまうのだろうか?


 そんな常人では考えすらしたことがない疑問を、魔獣ロズベルクは抱き続けてきた。


「お前たち人間に、我が辛さがわかるものか」


 そして、同じ時間だけ感情そのものを否定してきた。


 産まれ、育ち、(つがい)を見つけ、子を成し、死んでいく。

 時には生きる糧として餌を求め、人間を襲うことだってある。逆に敵として殺されることだって同義だ。


 動物や魔物の一生に思考は存在しない。


 種の存続を第一に、人が求める欲とは同じようでいて違う本能に従って生きる。――その瞬間までは。


 それまでの当たり前が、日常が、常識が崩れるとはどういう感覚なのか。


 ましてや、同じ種族や家族から逸脱してしまったとすれば、結果を想像するのは容易だ。


「昨日まで共に過ごし、死するその時まで続くと思っていた日々が突如として壊れていった。忌まわしいこの思考能力が理由をはっきりと説明してくれたよ。我が存在が異常なのだと」


 バルログナのように初めからではなく、途中から〈魔獣〉として覚醒したが故の不幸がロズベルクを苦しめた。

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