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七曜の転生譚  作者: はにゅ
3/5

スライム討伐

 記憶を取り戻すまでの6年、リューナは奔放に育てられた。父は樵、母は父の手伝いと羊の管理をする傍でリューナの世話もこなす働き者だった。たまに訪ねてくる父の弟は、父にも増して精悍な姿をしており、やんちゃ盛りのリューナをあちこち連れ回したり、剣術の稽古もどきなどをして遊んでくれた。

 5歳にもなると母からクックの世話や羊の管理を教わり始め、6歳を迎える頃にはセイアッド家の立派な戦力であると自負するようになっていた。

 そんな折に前世の記憶が蘇ったことで多少の混乱はあったものの、日々の仕事はきちんとこなしながら、リューナとしての精神や記憶と上手く混じり合うこととなり、今現在に至っていた。



「とうちゃーく!」


 チリン、と杖の鈴を鳴らし、羊の牧草地にたどり着く頃には太陽がハッキリと顔を覗かせていた。

青という意味であるブラウと名付けたオオカミの頭をひと撫ですると


「見回りよろしくね」


 と声をかけ、ゆっくりと走り出す背を見送る。

 それから羊小屋の扉を開け放つと、柵のない牧草地に歩み出す羊たちを観察する。

もう数日したらまた羊毛刈りだ、と一人頷き、羊の寝床掃除を始めた。

 

 

 掃除を終えるころ、ブラウが見回りから戻ってきた。リューナのローブの端を軽く咥えると、少し離れた森の方を向き、2度吠える。


「了解。2体だね」


 どうやら何か見つけたようだ。その程度はブラウに任せても問題なく対処出来るのだが、鍛錬としてなるべく自分で対処するようにしていた。このあたりに対応出来ないほどの魔物が現れることは今までにはなかったし、両親もそういった魔物は見たことが無かったため、リューナのやりたいようにさせていた。


 ブラウに連れられて森に入って数分後、近くにいることを示すように1度止まって小さく吠えた。

 警戒しつつ進むと、何か動く音が耳に入ったので、大木に身を潜めて様子を窺う。

 グリーンスライムが2体。森や草原地帯などに発生する小型の魔物で、戦闘訓練をしていない一般人でも複数に襲われない限り大事には至らない程度の弱いものだ。


 一呼吸するとローブのポケットから取り出した木製のブーメランを右手で高く構え、魔物と対峙する。

 左足で力強く踏み込み、ブーメランを縦回転するように投げ放った。空気を鈍く切り裂く音を立てながらほぼ直線の軌道で飛来するそれは回避する暇を与えず、スライムの体に突き刺さる。突き刺さったブーメランは一瞬動きを止めるが、投げた時より少し遅い速度でリューナの手元に戻ってくる。スライムは体に空いた傷口からドロリとした体液を流し、絶命する。

 残る1体はリューナを警戒したようで、プルプルと体を揺らしながら逃げ出したが、そうはさせじと再びブーメランを構えると、ブーメランの先端が薄青く輝いた。狙いを定め、逃げるスライム目がけ投擲されたそれは、光の軌跡を残しながら飛び、スライムに突き刺さる。

 突き刺さった箇所が輝き、半透明な体内を全体の3分の1ほど凍りつかせると、ブーメランは光を失い、再びリューナの手元に戻る。スライムは動いていた勢いのまま地面に崩れ落ちて絶命した。


 2体のスライムから戦利品である小さな結晶を拾い上げる。この世界を満たす魔力が淀み、魔力溜まりができるとそこに魔物が発生する。生まれた魔物は体内に魔力の結晶を宿す。それらは知性ある種族の間で取引されているため、魔物を倒した場合は戦利品として必ず回収されていた。

 リューナは自分の部屋にあるガラス瓶に魔力結晶を収集しており、山の麓にある集落へ出かける際には換金するようにしている。もっともスライムの魔力結晶では大した金額にはならないが、子供のお小遣いとしては十分なものだった。


「ブラウ、他に気配はある?」


 勘のいい者はかなりの距離があっても魔物の存在を察知することが出来るのだが、リューナはあまり得意ではなく、自分より余程気配察知に優れた相棒に任せるようにしている。もちろん鍛錬の一環として気配を探るようにはしているが、自分のミスで羊が襲われるような事があってはならないからだ。

 ブラウは森の奥を探るように見つめると、リューナに向き直って頭を数度振る。もういない、という合図らしい。非常に賢い相棒の頭をよしよしと撫で、羊たちの元へ帰ることとした。


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