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七曜の転生譚  作者: はにゅ
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死後の世界

 彼は暗闇の中にいた。目が見えているかも分からない状態ではあるが、混乱は無かった。

彼にあったのは夢を見ているような感覚。自分の意思があるようでいて、何か別のものに意思を導かれる。突飛な内容や唐突に切り替わる状況を違和感なく受け入れられるような感覚だった。


 その感覚の中、彼は自身の死を理解し、受け入れた。ありふれた交通事故による死だった。後悔や未練はもちろんあったが、今更どうにもならないことは理解できた。残された両親や兄弟の事を考え、心に浮かぶ顔に謝罪の言葉をかけた。とはいえ、兄弟は共に自立しており、両親の生活力も衰えてはいなかったので、心配することはなかった。残念ながら彼の死を嘆いてくれる恋人も持ち合わせてはいなかった。


 片田舎で育ち、大学卒業後に都会にある一般企業に就職した彼は、自身をつまらない人間だと評価していた。人並みに起伏はある人生だったが、特筆すべきこともなく、秀でた部分も無かったからだ。学生時代に恋人もできたし、その後の別れや就職後の恋愛もあった。休日は映画やゲームのインドア派で、酒には弱く、友達も多くはなかった。

 いずれは転職し、故郷のような片田舎で暮らしたいというささやかな夢があった。故郷に帰りたいと思わないのは、両親や古い友人とは疎遠であり、そこに戻る必要性を感じなかったことと、新しい土地で暮らし始める新鮮味が好きだったからだ。


 死後の世界や幽霊、輪廻転生などは微塵も信じていなかった彼だが、死後に意識があったことで己の今後について思案することにした。さて、これから天国での暮らしか、地獄の沙汰でもあるのかしらと思っていると、誰かの声とともに視界に光が広がった。


「さて、皆様、状況は理解できましたよね?」


 目の前には真っ白な空間が現れ、彼を含む7人が立っていた。顔を見合わせていると、小さな男の子がまず口を開いた。


「僕って死んだんだよね? それは分かったんだけど、これからどうなるの? あなた達は神様?」


 そう言いながら男の子は彼らの顔を順に見た。


「いや、俺も死んだみたいだ。神様とかじゃない」

「私も、神様じゃないよ。ごめんね」

「この中に神様とか、死後の案内人っていますか?」


 男の子の問いに二人が答え、別の一人が全員に問いかけるが、誰もが首を横に振った。しばし静寂が訪れたが、7人とは別のところから答えが返ってきた。


「混乱してるようで申し訳ない。案内人は私ですよ。神様っていうのも大体正解かな」


 いつの間にか少し離れた位置に現れたその男は、スーツ姿をしており、30代くらいに見えた。7人を見ながらひらひらと手を振り近づいてくる。


「それじゃあ今後のことを説明しましょう。質問は後で受け付けるので、黙って聞いてくださいね」


 その言葉に何人かは頷き、残りは沈黙をもって返す。


「ご理解している通り、あなた達7人は生涯を終えました。思うこともあるでしょう。ですが、皆様には今後のことを考え、理解してもらう必要があります」


 真っ白な空間が少し暗くなり、地面からスクリーンのようなものが現れた。


「皆様はこれから、私の作った別の世界にて次の人生を歩んでいただきます。そこは今まで皆様の過ごした世界とは違い、魔法が存在し、魔物なんかもいる、いわゆるファンタジーな世界です。作った私が言うのもなんですが、気に入って頂けるかと思いますよ。具体的にはこんな感じです」


 スクリーンには動く巨大な植物に、空中から炎の球を投げつける魔法使いのような老人が映し出される。


「あ、皆様少し不安なようですね。安心してください。こんな大きな魔物ばかりではないですし、戦うことも強制しませんから、安全に生きていくことが十分可能な世界ですよ」


 その後も説明は続き、どうやら過酷な世界ではないらしいと理解できた。獣人族、魔族、エルフなども存在し、まさに日本人が思い描く中世風ファンタジー世界そのもの、という様子であった。


「さて、世界についての説明はこれくらいですね。皆様は転生後、数年してから今の記憶を思い出すことになります。さすがに生まれたての赤子に今の記憶があっても困るでしょうからね。転生先に関してはある程度希望に添えるように配慮します。あまり無理な希望には応じられませんが」


 その後は各々の希望を確認したいとのことで、個人面談のように一人ずつ呼び出され、白い空間から消えていった。


「のんびり自由に暮らしたい、ってことでよろしいですか?種族の希望は人族ですね。他に何かあれば教えてください」

「ワガママになりますが、生きていくのに役立つ才能が1つでもあれば嬉しいです」

「残念ながらそれは出来ません。世界は変われど、人は努力によってのみ何かを得るものだと私は考えています。もちろん報われない努力もあるでしょうが、思うようにいかないからこそ人生は楽しいと思えるのでしょう?」

「ごもっともです」

「自分を磨き、人生を楽しんでください。異世界の記憶を持つあなた達がどう生きるのか、見守らせていただきます」

「わかりました。ゲーマーの端くれとしては楽しそうな世界だと感じましたので、僕なりにですが努力してみます。のんびりとですが」


 その言葉を聞き、神のような存在は微笑んだ。


「それでは、またいつかお会いしましょう。あなたにとって素敵な人生であることをお祈りしています」


 すると世界が再び暗闇に包まれ、彼の意識が消えていった。

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