8.卒業試験
前回のあらすじ
いつものように遺跡を探索し、師匠であるルイードとの修行にいそしんでいたココ。
そんな中、イルという傭兵に遺跡を発見されたことから、ココは突如ルイードから遺跡を攻略することを伝えられる。
「おはようございます」
「おう来たか……って、なんだその恰好は」
「師匠のせいですよ……」
師匠に遺跡の攻略を行うことを告げられた次の日。僕はできる限りの準備をして遺跡へと向かい、師匠と対面した。師匠はそんな僕の姿を見て、ポカンとした様子で尋ねてくる。
……昨日僕は師匠との斬り合いによって受けた傷のせいで、ボロボロの状態でストラウト亭へと帰還した。その様子を見て、ストラウト亭のみんな、特にリッカが心配し、治療が行われた。かなり心配されていたからか、リッカによって行われた治療はかなり大袈裟になり、ガーゼや包帯がふんだんに使われた状態になっている。まぁ動きに支障がないから別にいいのだが……。
「そんな状態になるんだったら、もう1日2日くらいまってもよかったな」
「今更ですね……」
「はっはっは、わりぃわりぃ……んで? 傷はもういいのか?」
「たまにちょっと痛みますがまぁ問題はないですね……それとこれ、頼まれてたもの持ってきましたよ」
「ん?あぁ、ありがとな」
師匠に昨日頼まれていたものを渡す。そして礼を言ってくる師匠に尋ねる。
「いえ……でも、そんなもの持っていって何に使うんですか?」
「んー、まぁちょっとな」
そういって師匠ははぐらかして来る……まぁ、特に気になることじゃないしいいか。
「よし……そんじゃ行くか」
「……はい」
そこからは大して言葉を交わさず、僕と師匠は遺跡の最奥を目指し始めた。
「はぁっ!」
「グァッ!?」
途中で遭遇したブラッドベアを炎をまとった剣で切り裂く。そしてその死体を休憩がてら解体する。今は前回までに進んだ13層から一つ上がった14層目。今のところ遭遇する魔獣はハウンドウルフやブラッドベアといったもはやおなじみとなったモノしかおらず比較的楽に進めた。師匠曰く、そろそろ出てくる魔獣が変わってきてもいいとのこと。なので警戒しながら、前へと進む。
そうして現在17層。やっと今までとは違う魔獣が出てきた。
【ジャイアントバット】
見た目は大きめの蝙蝠だ。それが3体。蝙蝠らしく部屋の上部を飛び回っているので剣は届かない。まぁ向こうが攻めてきたところをカウンターで斬るという手もあるのだが……まぁそれを待っているほど暇ではない。なので僕は、炎を使うことにした。
ジャイアントバットと同じ大きさくらいの火の玉を3個作りだし、それらをジャイアントバット目掛けて飛ばす。まさかそんなものが飛んでくるとは思わなかったのか、ジャイアントバットたちは不意を突かれ対処が遅れ3匹ともまともにくらい燃え上がる。そうして黒焦げになった3匹が、ボトリと落ちてきた。
「おおぅ……きれいに当たったな」
「……自分でもここまできれいに入るとは思いませんでしたよ」
大体僕の戦闘を見守っているだけの師匠と話しながら、ジャイアントバットから素材をはぎ取るーー黒焦げだったので魔石だけしか取れなかったーー。
そしてそれから、大きな群れを作るネズミ【ユニオンラット】や、ハウンドウルフを少し小さくして群れにした【クレイドック】などという数で攻めてくる魔獣と出会ったが、いずれも炎をうまく利用しながら対処することができた。
そうして現在第20層。僕は最奥の21層へつながる階段の前で魔獣とは違うナニカと対面していた。それは真っ黒な全身鎧が剣を持ちながら、ガシャガシャという音を鳴らし動いていた。
【ミラーアーマー】
《分析》によるとそういう名前らしい。そのミラーアーマーとやらをみて、師匠がつぶやく。
「魔物か」
「魔物? 魔獣とは違うんですか?」
「うーん、まぁ簡単に言うと、魔素をため込んだ生き物が魔獣で、魔素をため込んだ非生物が魔物だな」
「なるほどわかりました」
「まぁ敵なのは間違いないから、気を付けろよ」
「わかってます」
そういって、剣を構えてミラーアーマーに近づく。それに反応したのか、ミラーアーマーも剣を構える。そうしてお互いに一歩ずつ、近づきあと一歩ずつで剣が触れ合うというところで、同時に動き出す。
「ふっ!」
「……」
ほぼ同じタイミング、そして鏡合わせにしたような動きでお互いに剣を振りぬく。同じような軌跡で振られた剣はそのままぶつかり合う。そしてそのまま僕は畳みかける。しかしミラーアーマーはその僕の動きに合わせるように剣を振り、攻撃を受け止める。本当に鏡合わせになっているみたいだ……。一旦下がって距離を取るとミラーアーマーも同じように下がり、距離を取る。……あぁ、それで鏡鎧か。通りでミラーという割には光を反射してないと思った。
この魔物とやら、相手の動きを丸ごとコピーして戦うらしい。厄介な相手だ。師匠に教わった技を使っても同じように返されるだけだろう……。あれをやってみるかな。
「おっ」
僕は剣を鞘に納め、構える。その様子を見て師匠が興味深そうに眼を見開く。そして、同じような構えをしているミラーアーマーに向かって、駆ける。もちろんミラーアーマーも駆けてくる。そして、お互いに同じタイミングで剣を鞘から抜き、放つ。
師匠が放った奥義《一閃》は居合で敵を斬るだけの技ではない。一撃で敵を沈めるために、剣を抜くタイミング、振る速度、刃の角度まですべてを計算して放つ技だ。並大抵の努力では使うことはできないが、僕に至っては《空間把握》という便利なものがあるので大して苦労はいらなかった。
そして今、完全に同じタイミング、同じ速度、同じ角度で放たれた《一閃》はそのままぶつかろうとしている。このままではたぶん、剣の状態の問題から僕の剣が折れるだろう。なのでここで一工夫させてもらう。剣同士がぶつかる前に、自身の剣に炎をまとわせる。名付けて《焔一閃》かな? そしてその勢いで剣はぶつかり、僕の剣はミラーアーマーの剣を切り飛ばし、そのままミラーアーマー自身も切り裂く。それが何かの引き金になったのか、切り裂かれたミラーアーマーはガシャンと音を立てながら崩れ落ち、バラバラになる。そうして活動が停止したのを確認し、僕は剣を収める。
「お見事……こんな早くに奥義を習得されるとはな……しかもアレンジ加えてやがったし」
「ありがとうございます……まぁあれは炎まとわせただけですし」
ミラーアーマーの鎧と、その中にあった大きめの魔石を《収納》で回収しながら、師匠と言葉を交わす。
「ていうかそろそろ階位が上がってもいいと思うんですが……今のでも上がらないか」
「あーたぶん条件があるんじゃねぇか?」
「え?」
師匠の言葉に疑問符が浮かぶ。師匠は続ける。
「そういう風に魔獣を倒すだけじゃ階位が上がらない時は、壁を壊すようなことをしねぇとダメだ」
「壁を壊す……ですか?」
「あぁ、限界を超えるだのいろいろな……まぁ階位が上がるためには人によってそんな条件が必要なときがあるんだよ。俺ん時もあったから」
「そうなんですか……」
「まぁ、ぼちぼちやってきゃいいだろ」
そんな会話をしているうちにミラーアーマーの素材回収は終わり、僕と師匠は21層への階段を上る。その先には、大きな扉があった。
「さてココ」
「はい?」
扉の前で師匠が話しかけてきた。
「これからこの遺跡の守護者と戦うことになる」
「……はい」
「そいつを倒して、その奥の宝物庫にたどり着くことができれば、お前は晴れて俺の弟子を卒業。俺を超えることができる」
「いや、守護者を倒しても師匠を超えたことにはならないんじゃ……」
「いんや超えるさ」
「どうしてわかるんですか?」
「……すぐわかる」
そういうと、師匠は扉に近づく。それに続いて僕が扉に近づくとギギギという音を出しながら扉が開いていく。そして、この遺跡の最奥の間があらわになる。そこは一層と同じくらいの大きさの空間で一番奥にはさらに奥に続く扉がある。おそらくあれが宝物庫への扉なのだろう。そして、その部屋の中央にはその宝物庫を守る守護者が……
「え?」
いなかった。
最奥の間には守護者などというものは存在せず。ただ扉以外何もない空間が広がっていた。
「……」
「師匠……?」
訳が分からず固まっていると、師匠が前へ歩き出し、部屋の中央へ向かう。そして……
「師匠? なにやってるんですか?」
振り返って剣を抜き、それを僕の方へ向けながら、
「さぁ、最終試験だ。剣を抜け、我が弟子」
そう、言ってきた。
アオイです。
この前大学の後期の成績が帰ってきました。
……はい、おおむね問題はなかったです。「概ね」は。
……必修一つ落とした……また受け直さなきゃorz
何にでもいえると思いますが、同じことをやらされるって苦行じゃありませんか?習った内容をもう一度ならうとか、苦行ですよね!
……どこだ、どこに間違いがあった。




