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6.騒動と接近

前回のあらすじ


ルイードのもとで剣の修行を行うココ。もともとの才能と努力の成果もあり、めきめきと腕は上達している。

そして今日の修行は休み、ココはストラウト亭での仕事をしている。

「よいしょっと……ふぅ、これで終わりでいいかな?」

「うん、ごくろうさま。ありがとうココ、助かったよ」

「いや、これが仕事だから……これが使えるようになってさらに増えた気がするけど」

「あ、あはは……お母さん使える者は何でも使うから」


ストラウト亭の倉庫で、僕とリッカさんは雑談をしながら荷物を搬入していた。《収納》の能力が使えるようになって、こういった荷運びの仕事が本当に増えた。まぁこういった仕事が増えたのはそれだけが理由ではなく、もう一つ大きな要因がある。


「それにしても倉庫が一気に埋まりましたねぇ」

「そうだねぇ……まぁ土砂が取り除かれて商人の人も来れるようになったからね」


そう、ここモガ村と自由都市【ナザック】をつなぐ峠道をふさいでいた土砂が排除され、行商人の人がこの村に来れるようになり、ストラウト亭でも不足していた材料を一気に入荷したのだ。まぁ、入荷したのはいいのだが……。


「今度は逆に人が来なくなりましたね」

「……それお母さんの前で言わない方がいいよ?」


土砂によって道がふさがれていたので、ここ一カ月は人がたくさん止まっていたのだが、それが取り除かれた今では当初アルドさんが言っていたとおり、閑古鳥が鳴いている。まぁ個人的には仕事がなければその分師匠のところで修行ができるのでありがたいのだが……。


「ココー! ちょっとこっちきとくれー」

「あ、はーい! 今行きまーす! ……それじゃ行ってきますね」

「あ、うんわかった。がんばってね」


リッカさんと言葉を交わし、僕はクレアさんのもとへ歩いて行った。


そして、夜になり、ストラウト亭へ酒と食事を目当てにやってくる人たちが集まってくる。


「おーいリッカちゃーん! 注文頼むー!」

「あ、はーい! 今行きまーす!」

「リッカちゃんこっちにも!」

「はいはーい」


注文を取っているリッカさんは机から机と忙しそうに走り回っている。

僕はというと、


「ココ! ブルボアのステーキ二枚お願い! それから付け合わせにサラダも!」

「わかりました!」


厨房で料理をしていた。クレアさんはできることなら何でもやらせる性質(たち)のようで、料理も叩き込まれた。当初からなぜか料理が上手かった僕は今ではかなりのレパートリーの料理が作れるようになった。さらに、《空間把握》を利用することにより同時にいくつもの料理を作ることができるーー本当に便利な能力だーー。


「ココ! これ追加で作っとくれ!」

「は、はい!」


……本当にこき使われているな。


そうして、しばらく料理にてんてこ舞いになっていると、厨房の外から何やらリッカさんと誰かの声が聞こえてきた。


「やめてください!」

「いーじゃねーか、ちょっとくらい」


どうやら彼女にちょっかいをかけている客がいるようだ。


「クレアさん僕ちょっと行ってきます」

「ん、頼んだよ」


クレアさんに一言入れて、エプロンを外しながら厨房を出る。厨房の外に出ると、リッカさんが若い男性に手を握られているのが見えた。僕はそのまま前進し、彼女の手を握っている男のもとへ行く。


「何をしているんですか?」

「あ、ココ……」

「あぁん? なんだてめぇ?」


近づいてきた僕にリッカさんと男がそれぞれ反応する。


「彼女の同僚ですよ。とりあえず彼女にも他のお客さんにも迷惑ですからやめてくれませんかね?」

「あぁん? ガキがなにいってやがんだこら?」


注意した僕に対し、男はリッカさんの手を放し、僕の方をにらんでくる。僕はそれに対し、半眼で睨み返す。


「だから迷惑だからやめてくれっていってるんですよ」

「あぁ!? 誰に向かって言ってやがる」


オマエだよ、と内心で突っ込んでいると、男は何か首に下げたものを見せつけながら言ってくる。


「俺はランク・(シルバー)の傭兵のイルさまだぞ! わかってんのか!」


わかるわけがないだろうと、再び突っ込みながら僕は考える。イルと名乗った男は銀色のドックタグのようなものを首から下げている。たしか師匠によるとあれが傭兵であることを表す証明書だったかな? それで、銀というのは傭兵のランクで、下から(アイアン)(ブロンズ)(シルバー)(ゴールド)聖銀(ミスリル)で、計五段階あるとのことだ。それでこの男は銀ランク。中級者くらいの傭兵だ。


「別に傭兵のランクとか関係ないでしょう?」

「んだとこら!?」


僕はリッカさんを後ろに下がらせながら、彼にいう。叫んでくる彼の息は、かなり酒のにおいがする。相当飲んだのだろう。こういうのには何言っても無駄である。


「ともかく、彼女にちょっかいをかけるのはやめてくださいね」

「まてよ」


そのまま立ち去ろうとして、引き留められた。僕はため息をつきながら振り返る。

彼は立ち上がり、こちらをにらんでいる。


「てめぇに社会のルールを教えてやる。表に出ろ」

「いやですよ」


店の中でやり合おうとしないところはまだ理性が残ってたかと評価しながら、即答で断る。彼は断られることが分かっていたのか、そのまま続ける。


「受けねぇとまたその子にちょっかいかけちまうぜ?」

「……っ!」


視線を向けられたリッカさんは一瞬びくっと震え、僕の後ろに隠れる。僕はそれを聞き、溜息を吐きながら言う。


「……わかりました。それじゃあ勝っても負けてももう彼女に手を出さないでくださいね」

「おう良いぜ……それじゃいこうか」


彼はにやにやと笑いながら入り口から外に出る。僕は再び溜息を吐きながら、外に出た。


ストラウト亭前では僕と男が向き合っていた。


「ココ、大丈夫なの?」

「大丈夫、大丈夫だから離れてて」


心配してくるリッカさんをなだめ、周りを囲んでいる観客(ギャラリー)の方に下がらせる。そうして、いまだにやにやと嫌な笑みを浮かべているイルを見る。


「覚悟はいいか?」


そんなことを言ってくる彼を見て、溜息を吐きながら尋ねる。


「ところで、一つ聞いていいですか?」

「なんだ?」

「なんで銀ランクの傭兵様がこんなところにいるんですか?」

「簡単だ、この近くにある魔の森ってところで一稼ぎするためだよ」

「それは……」


無茶だろう、と僕は思った。さっきから僕が余裕で入れる理由がこれなのだが、師匠といつも一緒にいるからか、強い人とか弱い人とかの見分けがある程度付けるようになった。そしてこの男は弱い人。それも、僕が初めて戦ったハウンドウルフに勝てるかすらも怪しい。ランクが上がって調子に乗ったのか知らないが、かなりの命知らずだ。


「それじゃあ……はじめるぜ」

「はい、いつでもどうぞ」

「それじゃいくぞこらぶはぁっ!?」


男が飛び出して来ようとしたとき、その動きに合わせて一気に距離を詰め、その勢いのまま顔を殴り飛ばす。師匠から教えてもらった技に敵との距離を一気に詰める《閃華》という突きの技があるのだが、それを応用させてもらった。

殴り飛ばされた男は、そのまま大の字に倒れこみ、気を失う。しまった、やりすぎたか? ……まぁいいか。やっぱりこのレベルで魔の森に行くのは自殺行為だと思うんだが……。


「さて、それじゃ戻りましょうか」

「え、あ、う、うん」


そのまま、呆けているリッカさんに声をかけ、ストラウト亭の中へと戻る。男は……まぁそのうち目を覚ますだろう。


「え、えっと……ココ?」

「はい?」


ストラウト亭に入り、少し落ち着くとリッカさんに声を掛けられた。


「ココって、けっこう強いんだね……」

「まぁ、鍛錬してますし」

「そっか……ココ」

「はい?」

「ありがとうね。助けてくれて」

「いえ、当然のことをしたまでですから」

「……」


そう返すと、リッカさん少しだまり、そしてまた口を開く。


「ねぇココ」

「はい?」

「なんでずっと敬語なの?」

「え?」

「ほら、私とココってもう結構なつきあいになるじゃん? それなのになんでまだ敬語使うの? 名前にもさんを付けるし。お母さんやお父さんとかの目上の人に使うのはわかるんだけど……」

「あぁ……」


そういえばずっとリッカ「さん」とか呼んでいたな。特に意識はしていなかったけど……。


「まぁ、特に理由はないですね」

「そっか、それなら敬語とってくれない?」

「え?」


そう返すと、リッカさんはすぐにそう返してきた。


「ええと、年の近い人に敬語使われるのってちょっと違和感があるんだ……ダメ……かな?」

「え、あぁ、ええっと……善処します……じゃない、善処するよ」


上目遣いでそう言ってくる彼女に対して、僕はその頼みを断ることはできなかった。


「ん、わかった。それじゃ私仕事に戻るね。ココも頑張ってね」

「あぁ、わかった」


そういって、リッカさん……じゃなかったリッカは再び仕事に戻っていく。僕もそのまま厨房に戻り、作業に取り掛かる。……途中、クレアさんがついにリッカにも春が、などといっていたがあれはどういう意味だったのだろう?


それからリッカは、しきりに僕に話しかけ、以前よりもさらに距離が縮まった気がした。

アオイです。

うちの姉がひどいです。こちらがごろごろしているのに掃除の手伝い(主に思いものの持ち運び)をやらせてきます。しかも「やってください」じゃなく「やれ」です。

こういう関係をどう表わしたらいいですかね? 上下関係? 格差社会? ……奴隷社会ですかね?(白目)

ほんと姉を持つと苦労しますね……え? 弟の扱いじゃないって? HAHAHA!ナニヲイッテイルンデス? コレガフツウジャナインデスカ?

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