3.洞窟の奥
前回のあらすじ
モガ村につき、ストラウト亭でお世話になることになった主人公、ココ。
そしてココはストラウト亭の仕事を手伝いながら、アルドからもらった剣を振り、なぜか仕える3つの能力の把握、および練習を始める。
「ココ! そこの道具持ってきてくれ!」
「はい!」
「ココー、この人部屋まで案内お願い」
「わかった」
「ココ! これあそこのテーブルの客にもってっておくれ!」
「は、はい!」
……ストラウト亭にお世話になり始めてから約一週間、宿の仕事だけでなくアルドさんが営んでいる道具屋の手伝いにまで駆り出されるようになった僕は、まだこのハードワークに慣れないでいた。リッカさんの足は治ったのだが、なぜか仕事量は減らなかった。リッカさんに聞いてみたところ、
「だってココ働き者だからつい頼んじゃうんだ」
とのことらしい。
まさか早く仕事を終わらせるために全力で働いていたらここまでこき使われることになるとは。なにごともほどほどが一番ってことだね。
「ココー? 水汲んできてー」
「あ、うんわかったー」
新たに頼まれた仕事をこなすために、僕は行動を開始した。……まぁ仕事が増える一番の原因はこういう風にすぐ請け負っちゃうことなんだろうなぁ。
一日の仕事が終わり、ストラウト一家に僕を含んだ4人で夕食を食べているとき、僕はとあることを切り出す。
「クレアさん、明日午後から暇をもらっていいですか?」
「ん? あぁ、まぁこの一週間働き詰めだったから構わないけど……何か予定があるのかい?」
「えぇ、そろそろ一度洞窟の方へ行ってみようかと思いまして……」
「……それ、大丈夫なの?」
「うーん……まぁ、アルドさんにいただいた剣もなんとか振れるようになりましたし、多少の防衛はできるだろうから大丈夫かと」
この一週間の訓練で、まぁ人並みーーかどうかは知らないがーーには剣を振れるようになり、炎もちゃんと制御できるようになったーー黒い炎は一向に出ないがーー。「傭兵」という荒事専門の仕事をしている宿泊客に剣を教えてもらったりもした。
少し様子見で行ってみる程度なら大丈夫だろうと判断したうえで、クレアさんに話を持ち掛けたのだ。
……まぁ一週間働き詰めで他のことをしたかったというのもあるのは否定できないが。
「まぁ、あんたが大丈夫だっていうなら止めやしないが……気を付けていくんだよ?」
「はい」
クレアさんに許しをもらえ、その日は早めに寝て明日に備えることにした。
次の日の午後、僕はアルドさんにもらった外套、グローブを身に着け、剣を腰に下げて、モガ村の入り口の前でリッカさんに見送られていた。
「ココ、本当に行くの?」
この一週間で敬語が取れ、親しくなったリッカさんは、まだ僕を心配し引き留めようとしている。
「うん、今のところこれしか手掛かりはないからね」
「そっか……じゃあ気を付けて。ちゃんと帰ってきてね?」
「うんわかった。それじゃ行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
リッカさんに見送られ、僕はモガ村を後にした。
モガ村を後にし、リッカさんを見つけた森を通り抜け、1時間ほど歩き、最初の森へと戻る。そして森に入ってすぐのところに洞窟の入り口を見つける。
「……さて、行こう」
僕は腰に下げた剣がしっかり握りしめながら、洞窟へと入っていった。
洞窟の奥に連れて、日の光は入ってこなくなるが不思議と明るさはそのままだ。洞窟から出るときは夢中で気が付かなかったが、よく見れば壁に何やら光っている物体がある。触れてみるとそのまま手につく。これは……コケ……かな?
【ヒカリゴケ】
どうやらコケで合っているらしい。《分析》によるとこれはヒカリゴケという名前らしい。まぁ名前の由来は……見てのとおりだろう。
ひとまずこれで視界に支障なしで奥に進める。まぁ見えない場合は炎を出せばいいだけだが。
そのまま奥へと進み、初めて目が覚めた池があるところまでつく。
あの時は放置していたオオカミの死体だが、今だに残っている。たしか魔獣の素材って売れるんだったか?まぁ真っ黒焦げだし、そもそも大きすぎて持って帰れなさそうだ。このまま放置しておこう。
とりあえずそれから池の周辺を改めて見回してみたが、特にこれといって気になる物はなかった。
「やっぱり……進むしかないか」
来た方向とは反対側に存在する通路を見る。通路に近づき覗き込んでみる。通路の先は今までと同じようにヒカリゴケがあって視界に支障はない様だ。
あちらはどこにつながっているのだろうか。なにかあるのだろうか?
何があるにせよ、進まなければ何もわからない。
僕は、ゆっくりとその通路の奥へ進んでいった。
いったいどれだけ進んだだろう?あとどれくらい続いているのだろう?
しばらく歩き続け、それでも変わらない景色に辟易しながらも僕は進む。そうしてさらに歩き続け、やっと開けた場所に出た。
「ここは……」
そこは、池があった場所など比較にできないほどの大きさだった。
地面とそこより少し上に自生しているヒカリゴケの光が届かないほど高い天井、先が見えないほどの奥行き。広大な空間が、そこにはあった。そして、
「……なんだこれ?」
その空間の中心にとあるものがあった。土で覆われた空間の中心に位置しているのは石でできた建物。
周りを無数の石の柱で覆い、その上に屋根を付けた建造物。
僕の頭に「神殿」という単語が浮かんだ。
どうしてこんなものが?
そんな疑問が浮かぶが、この空間にこれ以外に怪しいものは見当たらない。ひとまず中に入ってみることにする。
中に入ると、そこには外と同じく広大な空間があった。
部屋の角に数本の柱がある……それ以外には何もない。
……いや、あるにはある。あるが……
「あれは……なんだ?」
部屋の中央に「ナニカ」があった。いや、あれはものなのだろうか?
部屋の中央は、歪んでいた。床がなどではなく、空間そのものが。
【扉】
《分析》だとこう表示される。
扉? あれが扉だっていうのか? どう考えてもそうは見えない。見えないが……。
「行くしかないか」
自分で言うのもなんだが、僕は度胸があり過ぎるようだ。普通はこんなもの、放置するのが得策だ。
だというのに僕はそれに近づいている。我ながらどうかしている。
そうして、扉とやらに近づいた僕はそれに触れようと手を伸ばす。
果たしてその手は、扉をすり抜けた。
すり抜けたといっても、手を入れた方の逆側を見ても、僕の手はない。どうやら扉のさきに行ったようだ。
僕は意を決して前へ進む。そして、扉をくぐる。
「っ……!」
そして、突然の光により、僕の目がくらむ。
しばらくして視力が回復し、目の前にとある光景が浮かぶ。
「どこだここは……?」
そこは先ほどの神殿とはまるで違うつくりの空間だった。
石造りなのは変わらないが、柱で覆われていた神殿とは違い、円形の部屋のようだった。
部屋の中央には上につながる階段がある。
「どうなっているんだ?」
この問いに答える者はなく、ただその言葉があたりに響くだけだった。
アオイです。
なんかだんだん文字数が減っていってる気がする。
いや……切りがいいところできったらこうなっていっているんですよねぇ。
最低2500文字以上は書く気です。まぁどのくらいの文字数が一番ちょうどいいのかはわかりませんが。




