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15.たらし?

前回のあらすじ


武器屋の前でカロルに絡んでいた傭兵を退けたココは一旦クルス家へと帰還する。

「……これはどうしたもんかな?」

「……僕に聞かないでよ」

「あらあら……」


クルス家にて、僕は途方にくれていた。理由は目の前のものだ。


「うぅ……契約して一週間もせずに浮気されたぁ……」


リビングの角で膝を抱えて蹲っているシルを見る。浮気されたって……それじゃまるで僕が最低なやつみたいじゃないか人聞きの悪い。取り合えずらちが明かないからなにかいってみることにしよう。


「シル? 僕は浮気したつもりはないよ」

「ココ、浮気する人は大抵そう言うんだよ」


カロル、黙ってなさい。


「浮気したつもりはない?」

「う、うん」

「じゃあその腰に下げた剣はなんなんですかぁ!」


ゆらりと立ち上がり、ビシッと腰に下げた竜鱗の剣を指差して叫ぶシル。


「私というものがありながらオニューの武器を買うなんて! 私じゃ不服というんですか!」

「いや、そういう訳じゃないけど……」


正直言うと、自由すぎて必要なときにいないと言う可能性があったので剣を買ったのだが……まぁそれは黙っていよう。ちなみにカロルとユリアさんは何が何やら混乱してきた様子。


「……シル」

「……なんですか」

「君は普通の剣じゃない」

「魔剣ですからね」

「そうじゃない」

「えっ?」


ポカンといた彼女を指差して続ける。


「君は意思をもって、そんな風に活動できるだろう」

「そ、そうですが……」

「ならそれは人と一緒だ。だったら僕にはずっと縛り付けておくなんて出来ない」


実際には縛り付ける前に離れていくのだが。


「シル。僕は君を大事にしているからこそ新しい剣を買ったんだ。君に負担をかけないように」

「マスター……」


感極まったような視線をシルが向けてくる。ふっ、ちょろい。


「人たらし」


カロルがそんなことを言ってくる。失礼な。人たらしじゃなく魔剣たらしだ。


「わかりました。マスターがここまで私を思ってくれていたとは知りませんでした。ならせめてこれをお持ちください」

「これは?」


シルはそういって指輪のようなものを渡してくる。


「私と魔力で繋がっているものです。これに呼び掛けてくれれば私を呼ぶことができます。私が必要なことになったら呼んでください」

「なるほど……ありがとう」


指輪を受け取って適当なところにつけておく。できれば左手の薬指に、とシルがいっているが無視だ無視。



「それじゃ行ってきます」

「行ってきまーす」

「行ってらっしゃい」

「行ってらっしゃいです!」


波乱(?)の後、僕とカロルは着替えて依頼を受けるために再び外出した。

僕は今まで着ていた外套ではなく、肩などの要所に革で強化されているロングコートにズボンを身に付け腰のベルトに剣を下げている。カロルは大きめの斧を背負っている。


「それで、依頼ってどこで受けられるの?」

「レギオンで受けられるけど、ナザックにある宿や酒場なら大抵どこでも受けられるよ」

「そっか……なら顔を出しておきたいところがあるからそこでもいい?」

「え? あ、うん。別に構わないよ」


そうして、僕らはとある場所へと向かった。


「よし着いた」

「……ここ?」

「そだよ」


着いた場所はとある宿屋。そのまま僕は中へと入っていく。中に入るとちょうど目当ての人物が迎えてくれた。


「いらっしゃいって、ココ! やっと来てくれたんだ!」

「こんにちわリッカ。昨日はちょっとごたごたしててね」


ここはリッカが働くことになった宿屋である。前日に分かれたきりで自分の報告をしていなかったのを思い出し、ついでに顔を出すことにしたのだ。


「それでココ、今日は何しに来たの? 宿の予約? それとも食事?」

「いや、依頼を受けに来たんだ。傭兵の」

「傭兵の? あぁなるほど」


その言葉に不信感を抱いたリッカだが、僕の服装と首に下げたドッグタグをみて、納得したようだ。


「わかった。依頼を受けるならこっちよ。ついてきて」

「わかった。カロル、行こう……カロル?」

「……」


カロルは僕を凝視していた。なに? 僕何かしたかな?

カロルはそして、冷たい視線を僕に浴びせながら、重い口を開く。


「人たらし」

「誤解だ」



カロルからの不本意な誤解をなんとか解いた後、僕らは適当な依頼を受け、ナザック近くの森へと来ていた。


「さて、依頼内容は最近森でよく魔獣に遭遇するから調査してほしい……だったっけ?」

「そうだよ。ここらにいる魔獣は危険度も少ないし、数も少ないはずなんだけどね……」

「ふーん」


言葉を交わしながら森を散策していると、早速魔獣と遭遇した。


【ウルフ】


「ウルフだ! 毒なんかは持ってないけどその分鋭いから牙と爪には気をつけて」

「了解」


そう言葉を交わした後、僕は剣、カロルは大きめの斧を構える。

ウルフはまっすぐにこちらへと駆けてくる。

……まぁ、大げさに言ったが遺跡であったハウンドウルフほどじゃないな。


「っ!」


一直線に駆けてくるウルフの軌道を《空間把握》で読み取り、それに合わせて剣を振る。

竜鱗の剣はかなり切れ味がよいのか、すっと刃が入りウルフを両断する。


「……まぁこんなもの?」


危険度が低いって言ってたしね。


「……すっごい軽く倒しちゃったね」

「まぁ、これの上位版みたいなのと戦ってきてたしね」

「そっか……それにしても」


カロルは両断されたウルフの死体を見る。


「ほんとに魔獣との遭遇率が上がってるみたいだね……それにウルフは基本2~3匹の群れで行動する魔獣なのに……」

「そうなの?」

「そうだよ」


よく知ってるな……。


「森で何があったのかな……」

「どうなんだろうね? ……っと」

「ココ? どうしたの?」

「いや……」


森の奥の方から聞こえてきたとある音に反応する。……これは剣を打ちあってる音……かな?


「誰かが戦ってる?」

アオイです。

最近書いてる分量が減ってきてる気がします。

そもそもちょうどいい分量ってどれくらいなんでしょうね? キリのいいところで切っているつもりなんですが……

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