14.師の息子
前回のあらすじ
ナザックの商業ギルドで武器を買おうとしたココ。
武器を選んでいる途中、店の外から叫び声が聞こえてきた。
「父さんをバカにするな! 許さないぞ!」
カロルは、3人の男に囲まれながら、そういった。男たち三人はいずれも武器と防具を身に付けており、傭兵のドッグタグを身に付けていることから傭兵であることがわかる。3人のうち一人が、にやにやと笑いながら言う。
「へぇ、許さない……ねぇ? ならオマエは俺らに何をしようってんだ?」
「決まってる! ぶっ飛ばしてやるんだ!」
完全に頭に血が上っているようだ。たしかにカロルは師匠の息子ということもあるのだろうが、そこらの同い年の子たちよりも相当強い。武器をもって、3人のうち一人と戦うのなら、まぁ勝てるとまでは言わないが、いい勝負はするだろう。だがあの3人が一対一で戦ってくれるとは到底思わない。それにカロルの後ろにはライネちゃんもいるし。
「……ちょっと失礼します」
「おう言って来い」
先ほどまで話していたクラインさんに一言言って、カロルのもとへ行く。ていうか愛娘がいるのに仲裁はしないんですかクラインさん……。
「カロル、少し落ち着いて」
「ココ……」
「あ? んだてめぇは?」
「彼の知り合いですよ。あなたたちこそ何なんですか?」
カロルに声をかけて落ち着かせながら、さりげなくカロルの前に立つ。そして正面の男が、威圧しながら話しかけてくる。
「知り合いねぇ……お前も傭兵ってことはそこのガキになんか依頼でもされたか?」
「別に、彼の家でお世話になってるだけですよ」
「へぇ……こいつの家っていうことはあのバカな傭兵、いや、もう死んだから元傭兵か。そいつのーー」
……なんかいま聞き捨てならない言葉を聞いた気がする。カロルの家の傭兵って言ったら、師匠のことだよな?それがバカ?
「……は?」
「お、なんだ? オマエその傭兵を知ってる口か。強かったらしいが、一人でどっかの遺跡に挑むなんざバカのすることだろ」
「なんだと!」
それを聞いてカロルがさらに激昂する。あぁ、なるほどな。親のことをバカにされたらそりゃあ怒るだろう。それにしても、師匠がバカか……。
「確かにその通りですね」
「ココ!?」
「お、わかるか?」
「えぇ、遺跡に一人で挑んだり、人に物を教えるのに言葉じゃなくまず体を動かさせたり、大事なことを伝えるのを忘れていたり、挙句の果てに時間の流れが違うのを失念する。本当にバカ、いや、大馬鹿です」
「お、おう?」
「それじゃあ」
ふっと、嘲るように笑って、言ってやる。
「子供相手にそんな話をしてバカにするあなたたちは、なんていうんですかね? 阿呆? いや、クズか」
「あ゛ぁ゛!」
「んだとごらぁ!」
「鉄ランクの癖に調子乗ってんじゃねぇぞ!」
それだけで、三人は激昂し怒鳴ってくる。煽りに態勢がないのかな?
「いい度胸だガキ! 相手してやんよ」
「傭兵のルールってのを教えてやる」
「いまさら後悔してもおせぇぞ」
そう言ってくる彼らのドッグタグの素材は銀。……銀ランクの傭兵にはこんな奴らしかいないのだろうか?
さて、相手してやるといってくる彼らは各々の武器を抜いている。うーむ、別にこいつら相手なら武器無しでも腕輪で強化されてるから十分戦えるけど……ちょっとめんどくさいなぁ。ちゃちゃっとクラインさんから鉄の剣を買おうか。
「クラインさん、この鉄の剣をーー」
「ーーほらよ」
剣を下さいと言おうとしたらまたしてもさえぎられてしまった。クラインさんは手に持っていた剣を投げ渡して来る。それは先ほど金貨百枚と言われた竜鱗の剣だった。
「鉄ランクの割には腕に自信がありそうだからな。使ってみろ」
「え、でもーー」
「ーーそいつなら片刃だから余計な手加減はいらんだろ。ぶちのめせ」
あ、こっちが本音ですね。見ればライネちゃんがおびえたような顔をしてカロルにくっついていた。……娘を怯えさせたくなかったら自分が仲裁に入ればよかったのに。
「……俺が怒鳴るとライネも怯えるんだ」
「……なるほど」
たしかにクラインさん強面だからなぁ。
とりあえずありがたく使わせてもらうとしよう。
「……ココ」
心配そうにこちらを見ているカロルを安心させるように頭に手を置き、伝える。
「カロル、君の父さんの技、しっかり見ときなよ」
「……うん!」
そして僕は3人組のもとへいく。
「へっへっへ……覚悟はいいか」
「いつでもどうぞ?」
「じゃあ……いくぜぇ!」
そういって3人は僕の方へと駆け出してきた。
僕は《閃華》を使い、3人のうち一人に一気に接近し突きの代わりにこぶしを突き出した。
「え……プギャ!?」
「アッシュ!」
「てめぇ! よくも!」
1人が振り下ろして来る武器に対して、剣を振りぬく。腕輪により強化された膂力と剣の切れ味によって相手の武器は綺麗に持ち手と刀身に両断された。その勢いのまま一回転し、相手を斬る。
「なっ!? ぐぎゃっ!」
《廻日》の一撃を剣の峰で繰り出し、相手の脇腹にぶち当ててやった。肋骨はいっただろうな。
「ダスト! こ、このやろう……はっ!?」
「遅いよ」
二人がやられて驚愕している最後に一人に上段で構えた剣を振り下ろす。全力の一撃を繰り出すこの技は《月割》というものだ。もちろん峰の部分を、鎖骨あたりにぶつけてやった。
あっけなく戦闘は終了。このレベルで銀ランクって、傭兵が弱いのか、僕を育てた師匠が規格外なのか。まぁ腕輪の力もあるしこんなもの?
「さて」
「「「ひっ」」」
さっきまで痛みで悶えていた3人は、僕が声をかけたことで一気に黙った。
「……」
「「「……」」」
「特に言うことなかった、もう行っていいよ」
そういって、かかとを返してカロルの元へと戻る。カロルは唖然としてこっちを見ていた。
「……ココって、すごいんだね」
「うーん、僕がすごいというより、僕を鍛えた師匠がすごいんだと思うよ」
「……そっか」
かなりスパルタだったけどね。と苦笑しつつ、クラインさんのもとへ向かう。
「クラインさん、これありがとうございました」
「あぁ……お前、ルイードの弟子だったのか」
「……そうですが、師匠を知ってるんですか?」
「昔からの友人でな……ちっちゃいカロルを連れてよく来てたよ。あいつの剣を打ったりしてた」
「そうなんですか……」
「あぁ……ということで、ほら」
「え?」
そういって、クラインさんは鞘に入った竜鱗の剣を再び僕に渡してきた。
「こいつを十分に扱えるみたいだしな。ルイードの弟子ってことも含めて、金貨10枚にまけてやる」
「あ、お金は取るんですね」
「当たり前だ」
まぁ10枚なら買えない額ではない。《収納》から金貨十枚を取り出して、クラインさんに渡す。《収納》をみてクラインさんは一瞬驚いたが、すぐに持ち直してお金を受け取った。
「手入れが必要になったら来い」
「はい……では」
「ありがとうございましたー、カロル! またねー」
「う、うん」
ライネちゃんにそう言われ、照れくさそうにしているカロルとともに、店を出る。
「……ねぇココ」
「ん?」
「父さん、強かった?」
「強いなんてもんじゃないね。剣だけじゃ絶対に勝てない」
「そっか……」
腕輪で位階がどれだけ上がっていてもそれだけは確実だろう。
「よっし! それじゃさっさとようじすませちゃお!」
「何がそれじゃなのかはわからないけどわかった」
そして、僕らはカロルの案内で着替え等を買って、一旦クルス家へと帰ることにした。
アオイです。
大学が再開され、まいにち忙しいです。初日からレポート課題に演習課題。
挙句の果てには短編の執筆。もうつらいです。
……あれ? 最後のは自業自得じゃね?




