12.傭兵登録とミス?
前回のあらすじ
無事、自由都市ナザックにたどり着くことができたココ。
そこでココは、ルイードから預かった手紙を渡すため、ユリアという女性を探すことに。
しかし、どうやって探したらいいか困っていたとき、カロルと名乗る少年とであう。カロルがルイードの息子ということが分かり、彼の案内でユリアにも合うことができたココ。
そして、ユリアの提案により、ココはクルス家で住み込ませてもらうこととなった。
暗かった空が白んでくるころ、僕はクルス家の一室で目を覚ます。
のそりと、あてがわれたベッドから抜け出る。部屋にはもう一つベッドがあり、そこにはシルが幸せそうに寝息を立てていた。こんなのが本当に大海を割り大地を穿つような魔剣なのだろうか? そんな疑問を持ちながら、部屋を出て、階下へむかう。
「あらココ。おはよう。早いのね」
「おはようございますユリアさん。朝食の準備ですか? 手伝いますよ」
「あらそう? それじゃそこの野菜を使ってサラダを作ってくれる?」
「わかりました」
一階のキッチンに行くと、すでにユリアさんが朝食の用意をしていた。手伝いを申し出て、任されたサラダを作り始める。ちょうどそのサラダが出来上がったころ、二階からシルとカロルが眠そうな目をこすりながら下りてきた。
「おはよー」
「おはようございますー」
「二人ともおはよう」
「おはよう……とりあえず顔を洗って来たら?」
「……そうする」
「そうします」
二人はそのままの流れで洗面所へ向かう。その間に僕とユリアさんは朝食の準備を進める。今日の朝食はトーストにベーコンエッグ、そしてサラダだ。……そういえばユリアさんが一人で火を起こしたりしたんだろうか?
「あぁ、魔動具を使ってるから」
「魔動具……ですか?」
聞きなれない単語に首をかしげる。
「そう、魔動具。こういったものよ」
そういってユリアさんはベーコンエッグを置いてある箱状の何かについてあるつまみを回す。すると、ぼぉっと炎がフライパンの下にともった。
「おぉ……」
「魔獣や魔物からとれる魔石を利用して火なんかを起こしてるの」
つまり魔石を利用して動く道具だから魔動具と……便利だな。
それに感心してると、顔を洗い終えてさっぱりしてきた二人が戻ってきた。
そうして、4人机に座って朝食を食べはじめる。
「そういえばココ、今日はどうするの?」
「……とりあえずはギルドっていうのに行ってみようかなって思ってる」
「あ、なら僕が案内するよ!」
朝食の途中今日の予定を聞いてきたカロルに、正直に伝えると、身を乗り出して案内を申し出てくる。
「ありがとう、それじゃ頼むよ」
「オッケー任せて! それじゃ早く食べ終わらなきゃ……げほっ!」
「そんな焦らなくてもいいのに」
そうと決まればと、朝食を勢いよく掻き込み、むせているカロルを見ながら苦笑する。
「……」
「シル?」
「……えへっ?」
目を話しているすきに僕のベーコンエッグからベーコンを強奪しようとしているシルを威圧しながら、朝食を進めることにした。
「ーーなるほど……クランにレギオンね。傭兵にもいろいろあるんだね」
「そ、一言で傭兵って言っても色々あるんだ」
朝食を食べ終え、カロルの案内でギルドへと向かう道中、カロルに傭兵についての雑学を教わったーーちなみにシルはクルス家でユリアさんの手伝いを……していればいいな。だらけてそうだーー。
まず、傭兵についてだ。傭兵にはランクがあるのは前にもいっただろう。そして傭兵は基本、一人で活動するか、または複数で活動するかに分かれる。この複数で行動している傭兵をクランという。クランは依頼によって仮に組まれることもあるのだが、基本はクランを組んでいる傭兵はクランで行動を共にする。
そして、その特定の目的を共有するクランが集まったものがギルドである。一口にギルドといっても、荒事を基本に活動するものもあれば、遺跡などの探索を主とするものもあり、果ては美食などを求めるギルドもある。
そして、そのギルドの代表者が集まったものをレギオンという。レギオンの主な仕事は、この自由都市ナザックの管理、そして周辺国からの依頼の管理・伝達である。あとは傭兵の登録などもレギオンでやるらしい。
「それじゃまずはレギオンに行けばいいのかな」
「そうだね、まだ傭兵登録してないならそこに行くんだ。僕も行ったよ」
そういってカロルは首に付けてある傭兵であることを証明するドッグタグを見せる。タグは鉄製で、どうやら一番下の鉄ランクのようだ。
そんな雑談をしながら、僕とカロルはナザックの中心にあるレギオン本部という大きな建物までついた。中に入って様子を見てみると、市役所という単語が浮かんできた。広い空間に人がたくさん存在し、各々テーブルを囲んで雑談をしたり、カウンターにいる職員に話しかけたりしていた。
「ほらココ、登録はこっちだよ」
「あ、うんわかった。今行くよ」
慣れた様子でカロルがカウンターのへ向かう。カウンターにつくと一人の女性職員が迎えてくれた。
「こんにちは。ご用件は何でしょうか?」
「ええと、傭兵の登録をお願いしたいんですが」
「わかりました。では……こちらの書類にお名前と年齢を書きこんでください。あ、代筆はいりますか?」
「いえ、大丈夫です」
そういって、一枚の書類とペンを渡された。読み書きはクレアさんのところで手伝っていたのもあり、ちゃんとできる。書類に名前と年齢を……年齢……そういえば僕は何歳なんだろうか? ……まぁ見た目15~16くらいだし、16歳にしておこう。
「書けました」
「ありがとうございます。では少々お待ちください」
職員の女性が書類を受け取って奥へと行き、しばらくして手に何かを持って戻ってきた。
「お待たせしました。登録完了いたしましたのでこちらをお持ちください」
そういって、渡されたのは傭兵たちが身に付けているドッグタグ。鉄製のタグにはきちんと僕の名前が書いてあった。これで登録完了なのか、意外と早かったな。まぁ手間がかからなくてよかった。さて、もう一つの目的を果たすとしよう。
「ほかにご用件はございませんでしょうか」
「あぁ、魔獣の素材ってどこで売れますかね?」
「それでしたらこちらで受け付けますが……現在素材をお持ちですか?」
「えぇ、ここに」
「……っ!?」
魔獣の素材を売るために、《収納》で納めていた毛皮や魔石を少し出したら驚かれた。どうしたんだろうか?
「こ、ココ?」
「ん?」
隣にいたカロルが、目を見開きながら聞いてくる。
「それ、どこから出したの?」
「どこからって……どこだろう?」
よく考えたらこの《収納》ってどうなってるんだろ? 入れた物はどこに行ってるのだろうか? ……今度シルを押し込んで聞いてみようかな。
考え込んでいると、カロルが再び聞いてきた。
「……それって、魔法?」
「そだよ?」
「ココって……先祖返りだったの?」
「まぁ……たぶん」
「たぶんって……」
「とりあえずこういった毛皮や魔石が結構たまっているんですが。売れますかね?」
愕然としているカロルを無視して、こちらも口をパクパクさせながらこちらを見ている女性職員に尋ねる。
「あ! え、えっと……その……少々お待ちください!」
そういうと女性職員は先ほどの慣れた様子などどこへいったのか、バタバタと慌てながら奥へと引っ込んでいった。
「「「「…………」」」」
「え、えっと?」
周囲を見渡すと、近くにいた職員からさっきまで雑談していたグループまで、僕をじっと見ていた。な、なんですかね?
「カロル……なんでみんなこっち見てくるの? 僕何かおかしなことした?」
「……した。超した」
アオイです。
4月になりましたね。
昨日から学校だ、という人もいたかもしれませんね。その場合、なんで今日行って二日休むんだー! それなら今日も休みでいいじゃないかー! と、思う人もいるでしょう。でも安心してください。
……私は今日学校です(白目)




