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11.自由都市ナザックにて

前回のあらすじ


モガ村の魔の森の遺跡を攻略したココは、その遺跡の宝物庫で、生きている剣、魔剣シルドヴェルンを手に入れた。そうして、モガ村へと帰還したココは、自身の記憶の手掛かりを探すため、自由都市ナザックへ行くことにした。

「はい、着いたよ。ここが自由都市ナザックだ」

「ありがとうございました」

「ありがとねー」


僕とリッカを下ろし、その場を去っていく馬車の持ち主に礼を言って別れる。そして僕らはそのまま、自由都市ナザックの、その大きな門をくぐる。外からも多少見えていたが、近くに来てみると、やはりかなり広い。門から進み、街の中心あたりに来てみれば、武器や防具屋、雑貨屋など、たくさんの店が軒を連ねている。そのまま露店などでにぎわっている大通りのとある一軒の宿まで行った。


「それじゃ、ココ、私はここで働くことになってるから……」

「うん、がんばって」

「ココもね。宿に困ったときは家に来てね」

「わかった……それじゃ」

「うん、それじゃあね」


そこで、リッカと別れ、僕は一人再び大通りを歩きだす。その途中、人気のない路地を見つけ、そこに入る。


「ほら、自由にしていいぞ、シル」

『はーい……やっと人型になれますねぇ』


そうつぶやくと同時、腰に下げていた剣が発光をはじめ、光が収まったころに、目の前にゴシック調のドレスを着た少女が現れた。その少女、シルは自身の肩をぐるぐるとまわす。


「あー肩こりました。ずっと動かないでいるってやっぱりきついですねぇ」

「そっか。それじゃ行くよ」

「ちょっとマスター、もうちょっと反応してくれてもいいんじゃないですか?」

「しらないよ」


シルの発言をスルーしながら、大通りに戻っていく。シルもぶつぶつと文句を言いながらもついてくる。


「それでマスター。これからどうするんですか?」

「……とりあえずは」


《収納》を使って納めていたあるものを取り出しながら、つぶやく。


「人探しかな……これを渡さなきゃいけないし」


僕は師匠から預かった、手紙とペンダントを再び《収納》で大事に納めながら、大通りを歩きはじめた。



「……マスターって、無計画ですよね」


数分後、ナザックの広場のベンチに座る僕に、シルが言った言葉がそれだった。僕はあの後、師匠の奥さんと息子さんを探そうと思ったが、とある重大なことに気が付いた。

そう、僕は彼らの特徴を全く知らないのだ。師匠はお婆さんと中年男性といっていたが、そんな年齢の人はこの時点ですでに3桁に上るほど見てきた。

そんなことを思いながら、シルに言い返す。


「無計画とは何だ」

「だってそうじゃないですか……私がいた遺跡探索だって、自分の記憶の手掛かりを探すためにとかいってそのまま流れでやっちゃったんでしょ?」

「……」


その一言で反論する余地がなくなってしまった。たしかに、遺跡探索の件は記憶の手掛かりを探すことから、途中から修行へと目的が変わってしまっていた。今に至るまでほとんど流れで来ている気がする。


「……」

「どうしましょうか?」

「……どうしようか」


シルトそう言葉を交わし、二人仲良くため息をつく。そのまま沈黙を続けていると、


「……あの、どうかしたの?」

「え?」


横からいきなり声がかけられた。

声の駆けられた方を見てみると、そこには12歳前後くらいの少年がいた。


「いや……困ってるみたいだから気になっちゃって」

「あぁ……」


少年のその言葉に、いきなり声をかけてきた理由を察する。たしかにあんな暗い雰囲気でいると目立つだろう。


「いや、ちょっと人を探しているんだけど……その人の特徴がわからないということに気付いてね……どうしたものかと」

「そうなんだ……僕でよければ手伝うよ? このあたりには詳しいんだ」

「ほんとに? それは助かるけど……」


少年のその言葉に、少し警戒してしまう。初対面の人間に対して優しすぎる。……まぁクレアさんの例があるんだけどもあれはリッカを助けた感謝の気持ちもあるんだろうし。

僕が警戒したことに気付いた少年は慌てて手を振り、弁解をする。


「あ、いや! 別に案内料を取ろうとか思ったわけじゃないんだ。ちょっと諸事情で暇になっちゃったから」


そんな反応をする少年は、確かにそんな下心はないんだろう。


「そっか……それじゃあ頼もうかな」


そう判断した僕は、彼に案内を頼むことにした。


「うん、わかったよ! あ、僕はカロル、カロル・クルス(・・・)。短い間になるけどよろしくね」

「あぁ。僕はココ・ノエリオ。そっちはシルだ。よろしくね」


そういって、先ほどから一歩下がっていたシルーー基本主人の会話には口を挟まない主義らしいーーを紹介し、握手をする。そして、とある違和感に気付く。


「……クルス?」

「え? ……そうだけど?」


どうかした? といってくる少年をじっと見る。……わずかだが、師匠の面影がある気がした。師匠の名前はルイード・クルスだったし……。


「ええっと、ルイード・クルスっていう人をーー」

「ーー父さんのこと知ってるの!?」

「ーー知ってる……みたいだね」


やはり彼が、師匠の言っていた息子のカロルのようだ。……師匠、この少年のどこが中年なんですかって、あぁ……そういえば、遺跡の中って時間の流れが遅かったんだったな。



「……ついたよ。ここが僕の家」


その後、カロルに案内され、ナザックの大通りから少しそれた小さな通りを進んだ先にある、とある一軒家まで案内された。


「どうぞ」

「お邪魔します」

「お邪魔しますね」


彼に連れられ、そのまま家の中に入る。


「あらカロル、お帰りなさい。早かったのね。……あら、お客さん?」

「ただいま、母さん」

「どうも」


【ヒューマン:ユリア・クルス】


そう、《分析》で表示された女性に挨拶をする。


「この人、父さんについて話したいことがあるんだって」

「……わかったわ。今お茶を入れるから、ちょっとまっててね」


そういって、ユリアさんはその場を離れ、僕は家のリビングに通された。



「……そう、あの人はそんなことになっていたの」


クルス家のリビングにて、僕はユリアさんとカロルと向き合い、師匠について、彼の最後についてを伝えていた。


「これが、師匠に渡してくれと頼まれたものです」


そういって、手紙とペンダントをユリアさんに渡す。

彼女はそれを受け取り、手紙を開いてその中身を読む。


「……汚い字ね。でも、たしかにあの人の字だわ」


そういって、彼女は僕をまっすぐ見る。


「……あの人は、とっくの昔に逝ってしまってたかと思っていたけど、そんなことになってたなんてねぇ。ともかく、あの人を解き放ってくれて、救ってくれて、ありがとう」

「……いえ、それが僕の、弟子の義務だったはずなので」

「ねぇ、父さんは強かった?」

「あぁ……とても強かったよ」

「そっか……」


それから、他愛もない雑談を少しした後、ユリアさんが尋ねてくる。


「そういえばココ君、シルちゃん」

「はい?」

「あなたたち止まるところはもう決めたの?」

「いえ、これから探そうかと思っていましたが……」

「ならちょうどいいわね」


にっこりと、ユリアさんは優し気な笑みを浮かべて言う。


「あなたたち、今日からここに住まない?」

「え?」

「ていうか住みなさい? あの人の弟子ということは、私の身内ってことになるんだから」

「……それはどうなんでしょうか」


その言葉に苦笑を浮かべる。


「それで? どうするの?」

「……では、よろしくお願いします」


ここは厚意に甘えておいた方がいいだろう。何やら有無を言わせぬ雰囲気があるような気もするし。


「わかったわ。それじゃ今日はごちそうね」


こうして、僕はクルス家に迎えられることとなった。

アオイです。

ほんと、連載物を書いていると、ちょっとの刺激でほかのものが書きたくなってしまっていけないですね。VRMMOものを書いているときにファンタジー小説を読んでファンタジーが書きたくなり、そして今は異能物のゲームをして、異能物が書きたくなってきています。

どうやったらこの欲求が収まるんでしょうかね?

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