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6話目

 

 次の日は休みだったことに気付いたのはホテルに入る時だった。

途中で先輩バーテンダーとすれ違った際に「お前、今日休みだろ?」と言われ、気付いたのだ。

 はぁ、と溜息を吐いて、無駄に気を張っていたのを解くと、気晴らしにと思い、中心街へと向かう。

 やはり、寒くなってきた、とマフラーの無い首元へ手をやった。そのおかげで昨日の出来事を思い出し、溜息が零れた。

 何気なく顔を上げると、会いたかった彼を見つけた。・・・見つけてしまったと内心呟いたのは流した。

 声を掛けようとしたが、どうやら仕事中らしい彼はフワフワとしたあたたかい笑顔を消え、

真剣な表情であった為、今日はもうやめようと背を向けた。


「レイイチッ!」


 ・・・タイミングが良いな、内心呟き、小さく溜息を吐いた。今日だけでどれだけ幸せが逃げているのだろうか、とどうでもいいことを考えながら、声のする方へ身体ごと向けた。

 それと同時に強い衝撃を感じた。どうやら、ファオロ様が抱き着いてきたらしかった。

 後ろへ数歩よろけては、つい勢いで頭を叩いてしまった。


「あっぶねェだろーがッ!」


 ・・・これはしょうがないと思う、怪我するところだったし?本日、何度目かの溜息を吐いては彼をじっと睨み付けた。


「・・・怪我、したらどうするんですか。」


 強い口調で言うと、彼は落ち込んだようにしゅんと大人しくなると、「ごめん。」と小さく謝った。

 今日の彼は、昨日の様な雰囲気を少しも感じさせず、いつものあたたかな、大型犬の様な、いつもの彼であった。

 これなら、きちんと話せるかもしれないと思った。


「・・・お仕事中じゃなかったんですか?」

「ん?うーん、レイイチが一番?だから。」


 ニコニコとご機嫌そうな彼を見ながら、小さく苦笑を零した。


「・・・一番ではなく、最優先ってことじゃないですか?」

「あ、そうそう。最優先!」


 ちょっと幼く感じるのは、時折カタコトになるからだろうか?と考えながら、抱き着く彼の手をしれっと外すと、不機嫌なオーラを表に出した。

 外したと思ったら、彼は嫌だという様に腕を掴んではじっと見つめていた。

 ・・・目をうるうるさせんなよ、あんた本当は犬なんじゃねェのか?と疑いたくなる程に、先ほどまでの真剣で、カッコイイと思わせる雰囲気は全くなくなり、見捨てないでと、目で訴える子犬の様であった。

 ・・・面倒だな、と思ったが、それは心の内に仕舞い、少し上にある彼の頭を撫でてみた。すると、喜ぶ犬の耳が見えた・・・気がした。

 本当、イケメンってズルいよな、と更に荒っぽく撫でると嬉しそうに、満足気に笑みを浮かべていた。

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