17話目
俺が大きな声で、と言ったからだろうか、ファオロは自ら唇を重ねると、先ほど以上に真っ赤に頬を染め、「もっと、だ…。」と俺の耳元で囁く。
耳から入ってくるバリトンの声音に、背筋にゾクリとしたものが走る。
俺の反応に気付いたらしい彼は、固まった俺にゆっくりと再度、口付けを落とす。それは先ほどのものとは違い、何度も啄むように口付けてはペロリと俺の唇を舐めてみせた。
いつの間にか瞑っていた目をそろりと開け、彼の様子を見ると、先ほどまで真っ赤になっていたとは思えないほど、余裕有りげな視線をこちらに向けていた。
その熱いくらいの視線から、逃れるように顔を背けた。
「…駄目だよ、レイイチ。今日は逃がさないって、決めてた。」
ファオロは俺の弱い、色気の漂う声音で絡めとっていくようだった。・・・背けた顔をそろりと彼へ向けると、彼の手はするりと熱を持つ頬を滑り、人差し指で唇を撫でた。
彼はクスリと小さく笑みを零すと、先ほどとは違い、嚙みつく様に口付けた。その口付けに焦りを隠すことが出来なかった。
「…ッ、ファオ、んンッ」
名前を呼ぼうと口を開くも、その隙に彼の舌が滑り込む。ゆっくりと口内を探るようなそれに、羞恥心を感じるも、積もっていく小さな快感に負け、快感を拾うように絡め返す。
「ん…ッは」
「…んン…ッ」
快感に強い訳でもない俺にとって、久々に味わうこの感じに戸惑うことなく、寧ろ、自ら貪欲に快感を拾ってゆく。
するりと彼の首に腕を回すと同時に、腰あたりにあったファオロの手が上がってくる。口付けに夢中になっていると、衣服を脱がされていることに気付かず、素肌を滑る熱は更なる快感を生んだ。それにビクリと反応すると、彼は絡めとっていた俺の舌をズズッと音を立てる。すると、小さなピリッとした痛みを感じた。
「んァ…ッファ、オロ…?」
止まってしまった快感に寂しい、と感じてしまい、首に回した腕で彼を引き寄せると、首筋に赤い痕を残す。
「いッ…レイイチ?」
名前を呼ばれるも、自分のつけた痕に舌を這わせると、彼から「んン…」と小さく漏れる声に満足感を感じ、思わずクスリと笑みが零れる。
「…さっきまで可愛かったのに。」
ファオロは満足気な俺が気に入らないらしい。少し不満げに口を尖らせてボソリと呟いた彼の言葉にまたしても、クスリと笑みが零れてしまった。




