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16話目


 不安そうなファオロは俺の言葉に「そっか、良かった。」と嬉しそうな笑みを浮かべたまま、ギュッと強く抱き着き、少しも隙間を作らず、俺の胸元に顔を埋めた。その様子にやはり今日、何かあったのだと感じたが、当の本人は言うつもりはないようだし、どうしようか、と考えつつ、髪をとかす様に撫でてやる。

 

「・・・ファオロ、夜も遅いし、今日泊まるか?」


 この誘い方は普通だよな?と自分に確認しつつ、ファオロをじっと見つめる。すると、彼は薬と笑みを零し、腰に手を回した。


「それはお誘いになるのかな?」


「・・・はは、俺、結構仕事で疲れてんだけどなぁ?」


 やっぱりそう聞こえるか、と内心溜息を吐きつつ、少し嬉しいとも感じている自分にどっちなんだよ、とツッコミを入れた。

 冗談っぽく言った俺が悪かったんだろう、少し残念そうに、そして悲しそうに見つめるファオロに失敗した、と感じた。


「・・・レイイチはやっぱりひどいね。」


 その言葉を聞いたのは二回目だなと思いながら、「ごめん、別に嫌とかじゃねぇからな?」と髪をとかす様に撫でる。口を尖らせて拗ねた様子のファオロを見つめ、頬に手をやり、こちらを向かせると、彼は少し首を傾げつつ、こちらの視線に合わせた。

 頬にあった手を滑らせ、彼の唇を指先でなぞると、ビクリと小さくではあるが肩を揺らした。

 その様子にクスリと笑みが零れた。目の前のファオロの頬が朱に染まったのを確認すると、そっとなぞった唇に己の唇を重ねた。

 そのあたたかさに嬉しさと、安心を感じた。

 触れるだけの口づけを止め、一旦、彼の様子を窺おうと見遣る。すると、茹蛸の様に真っ赤になったまま、固まるファオロが居た。


「・・・ファオロ?」


 あまりにも反応がない為、少し心配になり、呼びかけた。すると、彼は俺をじっと見つめ、更に頬も耳も真っ赤に染め、顔を下にそらした。ファオロの表情が見えないまま、抱き着いてくる彼を受け止めると、小さな声が聞こえた気がした。


「え・・・?何か、言ったか?」


 少し表情を見ようと、覗き込もうとするも、胸元に顔を埋めてしまった彼にダメか、と思い、諦めるが、また声が聞こえた。その声はきちんと俺の耳に届いた。


「もう少し、大きな声で言ってくれればいいのに・・・。」


 彼は真っ赤に頬を染めたまま、待つようにこちらを見つめていた。俺はその小さな声に応えるべく、両手で頬を包み込み、小さく笑いかけてはまた口付けを落とした。

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