表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/17

12話目


 それから家へと戻り、少し頭を冷やす意味も合わせて、シャワーを浴びた。

 ラブホで自分の想いを告げ、受け入れてもらった後、つまり恋人になった訳だが、俺が思った以上に、俺は一昨日の夜のファオロの行動で悩んでいたらしかった。恋人になったおかげで、それが吹き飛び、安心したらしく、途端に眠気が襲ってきた為、ファオロを抱き締めたまま、ベッドへ倒れ込んだ。

 彼は腕の中で「え、え!?」と少し混乱した様子だったが、俺の表情を読み取ったらしく、「もう寝ようか?」と笑って言ってくれた。

 男同士のヤリ方はイマイチ分からないと言うだけで、知識はなんとなくある。・・・まぁ、客でそういう人が居ない訳じゃないしな、と小さく苦笑を零しては、昨日の自分に、何とも情けない、というのが俺の本音である。

 そんなことを反省しつつ、ぬるいシャワーを浴びる。床に打ち付けるぬるま湯を見つめながら、更に強いものへする為、蛇口を開いた。

 床に強く打ち付けられる音で、情けない自分への溜息と、昨日のチャンスを逃したことを残念だ、という意味を含んだ溜息を打ち消した。


――― Side:ファオロ


 「また後で。」と去って行ったレイイチの後姿を見つめながら、はぁ、と大きく息を吐き、その場にしゃがみ込んだ。

 レイイチに触れられたところがすごい熱を持っている。手を回された腰、口付けを落とされた額、それからなぞる様に触れられた耳が・・・特に熱い。

 ・・・なんとなく分かってはいたけれど、レイイチは俗にいうタラシというやつだな、と内心思いながら、未だに熱を持った頬を押さえ、傍に居るであろうヒサヤマの事を思い出して立ち上がった。

 そのまま、彼へと視線をやり、声を掛けようと口開きかけたが、彼はじっとレイイチの後姿を真剣・・・というより、無表情で見つめていた。


「・・・ヒサヤマ?」


「・・・え?嗚呼、もう大丈夫っすか?」


 声を掛けると、ヒサヤマはいつも通りの笑顔をこちらに向けた。先程の視線に、・・・なんだか、漠然とした不安に襲われた。

 ヒサヤマは、日本の大学に留学していた際の後輩だ。俺の入っていたサークルは飲み会サークルと言っていいほど、飲み会しかしていなかったサークルで、様々な人と話すのにちょうど良かった。その中でもよく話す様になり、懐いたのがヒサヤマだった。

 会う度に元気よく挨拶をするヒサヤマが、同じバイだったという共通点から、気を遣うこともなかった。そんな彼が一番気の許せる友人になるまで時間はかからなかった。

 ヒサヤマとは三年間だけではあったが、一緒にいた。彼は常にニコニコとした笑みを浮かべ、人当たりの良い性格だった。

 そんな彼の、先ほどの無表情が俺の不安感を更に強め、ただなんとなく、嫌だという気持ちが心を埋め尽くした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ