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10話目


 ファオロはどうにかして二人きりになりたかったらしい。慌てて入った店…というか、ラブホテルというやつだな、ここは、と内心苦笑を零しつつ、男二人でも入れるんだ…とも思い、黙ってファオロのやりたいようにさせておく。

 すると、自分の行動にあたふたし始めたファオロはガバッと勢いよくこちらを振り返り、真っ赤になってこちらを見ていた。


「入る気はなかったのか?…って言うか、ラブホだって知らなかったとか?」


「…普通のビジネスホテルか、なんかかと思ってたんだけど…。」


 どうやら、部屋の中に入って、置いてあるものや部屋の雰囲気で改めてラブホだと気付いたらしい。まぁ、入り口で、部屋を選ぶ時に「え!?」と一人で声を上げていたから、もしかして分かってないのか?とは思ったけれど…。慌てるファオロの様子にクスクスと笑みが零れた。

 そんな俺に更に真っ赤になって、睨んでくるファオロの様子に可愛いな、と思わず、笑みが零れた。

 ファオロは耐えられなかったらしく、真っ赤になりながら、抱き着いては「傍に…居てほしいです。」とボソボソと言うファオロにまたしてもクスクスと笑みが零れてしまった。

 そんな笑ってばかりの俺が気に入らなかったらしく、「レイイチは意地悪だ。」と少し拗ねた様に呟いた。

 悪いという意味も込めて、額へ口付けると、また真っ赤になってしまった彼に「そんなに真っ赤になって、抱き着いてると、食べたくなるかも、…ちょうどそういう場所だし?」と囁くと、今度はじっとこちらを見つめてきた。

 …って、男同士なんてイマイチ分かんないからな、誘われてもこのままじゃ痛い思いさせんじゃねェか?…させるだけだな、と自問自答したところでファオロは口を開いた。


「…こんな所は嫌だ。」


 ムスリとした様子で言うファオロに「冗談だよ。」と返すと、更にムスリとした表情になった。どうやら、機嫌を損ねてしまったらしい。


「…レイイチは慣れてるね。」


 ボソリと呟いた言葉に聞き逃しそうになった。…なれてる、慣れてる…?何にだ?と頭で処理するのが遅れた為、無言になると、それを彼は肯定として受け取ったらしく、更に眉間に皺を寄せて、不機嫌な表情になった。

 …不味いな、と内心焦るものの、それは隠してそっと抱き寄せた。


「慣れてはないと思うけど、男は初めてだし?…だから、GOサイン出たらどうしようかと思ってた。」


 少し困ったように告げると、ファオロは更にじっと見つめてきた。…見つめると言うより、観察か?と小さく苦笑を零した。

 すると、彼は俺の発言が嘘ではないと分かったらしく、「そっか。」とどこか嬉しそうに笑みを浮かべていた。


「嬉しい?」


 クスクスと小さく笑みを零して聞いてみれば、彼はコクリと頷いて「嬉しい。」とボソリと答えてくれた。


「そっか…。」


 嬉しいと言われれば、こちらまで嬉しいと感じるのは、やはり、好きだと言われ、好きだと返して、…思いが通じ合ったから、だろうか?と自分でくすぐったいことを考えながら、腕の中にある熱を更に抱き込んで、自分の中に閉じ込めた。

 この綺麗な人が、俺のモノになったことを実感しては更に笑みを深めた。

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