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二人の会話〜人間は正直過ぎて嫌になる件について〜

作者: 鵜梶

命は今から何億と数千万年前には存在されていたとされているが、実際にはその時代に行ってみるか、はたまた前世に聞くしかない。本当の所、そう言った本当の事実はわからないのである。理不尽もいい所だが、これが本来の真実だ。

いや、前世すら実際あるかどうかすら不安であるがこの際そんなことは置いといて本題に入ろうと思う。

今現在の人間なら、色々な事を知ることが出来るし、作ることは愚か、何ならば過去を改善・・・・書き換えさえ出来てしまうのだ。ざっくり言えば、嘘を付けばいい。

何て簡単な事だろうか、人は人を騙し、過去さえ書き換えてしまうのだ。滑稽(こっけい)だ、実に滑稽で白々しく、末恐ろしい生き物だ。


そして単に馬鹿である。


何をするにしても、人間には必ずと言ってしまっていい程の合理性に欠けていて、まるで見るに堪えない。


「我は思うのだよ、マスター。人間は馬鹿正直もいい所ではないのかと、我々みたいなちょっとした異質にすらに気付かずに毎日の様に嘘を重ね、真実を壊し破壊して日々をのうのうと生きている・・・・凄いと思わないかい?」


「じゃあ君は何故僕と一緒にいるんだい?

・・・・・・・・ドラゴンなのに。」


何を今更当たり前の事を聞いてくのだろうか、やはり人間はたまに理解し難い言動や行動を起こす。

だからいつまで見ていても飽きないのだ、人間は我々とは違う価値観を持っているため、面白可笑しくて、堪らなく愉快で良いものだ。

それを理解してなお、彼は理由を聞いてくる。やはり人間とはわからない、しかし実に面白く興味深い。


「無論馬鹿馬鹿しいからだと、言えばわかるであろう・・・・?」


「あぁ、君達はそう言った種族だったね。常に快楽を求め、つまらなくなったらその土地一帯を燃やしてしまう。」


「それは普通の我々ではない、その例えはいわゆる所の異質の中の変革者だ。いくらマスターとは言えど、言葉が過ぎるとその美しい首に噛み付き、命を絶たせますぞ?」


冗談で言ったつもりはないが、彼は苦笑しながら一言「その前に僕は君の首を絞め、皮を剥ぎ、闇市で売り飛ばします。さぞ良い値で売れるだろうからなー。」と言った。恐らく彼は冗談で言ったつもりなのだろうが、実の所彼の目が笑っていなかった。半分は冗談、半分は本気と言ったところか。


「クスッ・・・・流石マスターですな、目が笑っていませぬ。」


聞こえてか知ってか、彼はまた苦笑して、歩みを止めていた脚をまた動かし始めた。

それに合わせて己の翼を少し羽ばたかせる、小さく風を切る音が空気を軽く震わせて動き始める。


「して、次の依頼主は一体どの様な依頼内容なんだい?ここ最近魔物の討伐や賊の殲滅ばかりだからねー・・・・たまには骨のある仕事が欲しいものだよ。」


「今回は久しぶりにその骨のある仕事だよ。」


彼はカバンから依頼主から受け取った依頼の紙をたなびかせながら取り出し、その内容に軽く目を通した。そこに書かれている文字はまるでミミズの様に汚く、どうにか他人でも読める物だった。


「汚いね・・・・」


「が、内容はしっかり書かれているよ。・・・・まぁ汚いのは見てまんまだ。」


彼すら汚いとわかっていて、軽く笑って見せ己もその内容に目を通した。最初に書かれている文字に眼を見開き、彼に疑う視線を送ったが、彼はこちらを見てはくれなくただただ歩いている。


「正気かい・・・・?」


「何がだ?」


あくまでシラを切る彼に、根本的な質問を打つける。


「この依頼は受けるべきではないと、我は何度も言ってきた筈だが・・・何故勝手に受理しているのだ?」


その依頼は、何度も彼に受けてはならないと言ってきた代物だった。何故と言ったら簡単だ。


「我々は本来この国からは出てはいけない・・・・」




その内容は・・・・『異国の白龍討伐。』




「我々が何故此処まで色々な、多種多様の依頼をこなし、受けて来たと思っているのだ?確かに私達の探し求めている【目的】はそこに書かれている奴かもしれん・・・・が、まだ私達の力では到底及ばないと、だから力を身に付けるため色々な依頼をこなしてきたのではないのか?」


「力は身に付けた、だから行く。」


やはり人間は我々とは違う・・・・。


何に対しても根本的に、わかっていないのだ。確かに力は身に付けていたとしても、まだまだ我々には足りない物が多過ぎる。


「マスター、あんた死ぬぞ。」


「知っているよ、死ぬだろうね。」


やはり人間は理解し難い生き物だ、それをわかっていながら何故それをやろうとするのか。死に生きている様な物ではないのか・・・・馬鹿馬鹿しい。

彼に向かってそう吐こうとすると、彼がこちらを見てきた。


「改めてもう一度、君に聞きたい。」


「・・・・」


彼は目を離さずこちらをまるで睨み付けるかの様に、ただただ威圧してきた。今まで何度もこの眼を恐ろしいと思って来たか、わからない。この瞳は人を制圧する為にあるのではないか・・・・ぱっと見では、わからないその瞳の奥。身体の芯から恐怖が湧いてくる。


「君は何故僕といるんだい?君はこの世界でも今となっては希少なドラゴンなのに、その大いなる力を持ちながら・・・・僕みたいな端ない魔導師何かと共に生き、そしてこんな僕をマスターと呼ぶ。それは何故だい?」


背筋が凍り付いた。


そして、それと同時に感激した。


彼は本当に人間の中の人間なのだと、今改めて理解した。単純な事なのだ、彼は死を恐れている。しかしだからと言って逃げ出す事はしなく、立ち向かうしか選択肢を与えられなかった、それだけの事ではないか。今、彼が何故この質問をして来るのか痛いほど伝わってくる。そして、やはり人間は面白い生き物なのだと理解した。

人間は弱い。

弱過ぎるせいなのか、質問を質問で返して来る。不安や恐怖を悟られない為に、人間は変な所で気を使い始め、他人に心を支えて貰おうと必死になるのだ。


だからなのか、直ぐに返答が出来た。


「・・・・無論。言うまでもないことなのだが、敢えて言うなら我は『マスターの右腕』だからと言っておこうではないか。」


「だからって、君の人生を掛けてしまう程なのかい?僕は別に、君に無理強いはしていない。それどころか、僕は君のマスターになった覚えすら無いし、一緒に旅を・・・・パートナーとして雇った覚えもないんだけれども・・・・」


「・・・・・・」


そうなのだ。

我が勝手にマスターと呼び、勝手に彼に付いて来て、勝手に一緒にいる。彼の受理などは一切無く、我が必死に無許可で彼を追いかけて来た・・・・


「マスター・・・いや、こういう事はあらかじめきちんと言った方が良いのだろうな。この様なかしこまった言い方は、我は余り好まないが・・・・。」


羽ばたいていた翼をゆっくりと落ち着かせ、己の身体を地上に降ろして行く。何処と無く地面は温かく感じてしまうのは、やはりドラゴンの平均体温が低いからなのだろうか。いや、今はそんな些細な事を考えている時ではない。

下を向いていた瞳をゆっくり、彼の視線のある方へと頭ごと動かす。逆光でイマイチ表情は読み取れないが彼が己に何の答えを求めているのか、身体から心から感じた。


「マスター・・・いえ、かつて世界の魔導師の頂点に立たれたお方。全ての倫理を解読し、人だけではなく我々ドラゴンの一族に、知識をお教えしてくださった大機密級の存在にして『元』天才・・・・




マツバ様・・・・旧姓『大魔導師ハスター様』。」



「・・・・」



彼は何も言わずただただこちらを見ているだけで、何も話しては来ない。恐らくそう言われるであろうと理解していたからなのであろうが、こちらからしてはその無言の圧力により足腰が震え始めていた。


「我は・・・・あの偉大なる種族のドラゴンである【ダゴンの因子】を受け継いでいながら・・・・ダゴンの力が全くなく、ただの平凡なドラゴンとして産み落とされた。」


「そんなこともあってなのか、我は数少ない仲間ドラゴンから、ドブに放り捨てられたゴミクズ扱いを受けており・・・・毎日が恐怖と隣り合わせだった」


淡々と過去を振り返る。


嫌な思い出しかない、毎日が戦争だった。


未だに噛み付かれ、切り裂かれた背中の傷が痛む。


塞がっているのにもかかわらず、ウズウズと、何度も痛み出す。


「そんな時、マスターは我の目の前に現れて、当たり前の様に言ってのけたのだ。」





ーーーー生きたくはないのかい?


ーーーーー君は何故反論しない?怖いからか?それともまた別の理由でなのか?


ーーーー残念ながら、僕も今じゃー落ちこぼれてしまっていてね・・・・簡単に言えば君と同じさ。


ーーーーしかし、僕は生きようと決めたのでね。


ーーーー死ぬ道理がないんだよ。


ーーーー君が、未だに生きている様に、まだ君は光を探しているんだろう。・・・・なら探すといい。



ーーーー僕も探しているようにね・・・・。





思い出しただけで彼の小さくも、大きい偉大さが伝わってくる。その時は彼がハスターだとはまだ知らなく、その事を知ったのは彼と旅をしたいと言ったその日だった。実質、彼が何者なのか何て身の上はどうでもよかった。だから、己を信じて勝手について来たに過ぎない。

確かに己は弱い。

ダゴンの因子を受け継いでいながらも、その血すら疑わしい程その跡がないのだ。ダゴンの様に乳白色の鱗はなく、むしろ黒なのだ。母方の鱗も白に近いホワイトグレーなのにもかかわらず・・・・黒なのだ。

母は嘆き悲しみ、最後には己の失態に恥じて自らこの世を去った。


「我々ドラゴンの一族では黒い鱗は【不吉の象徴】。それは人間たちも知っている筈、なのにマスターは何を恐れる必要があるのだと言って・・・・まだ小さかった我の頭撫でてくれた。」


「・・・・」


未だに彼は黙ったままでいる。


「例えそれがどんな結果であろうとも、我はマスターに従い、時には怒り、時には叱られ、この命が尽きるまで・・・・ついて行く所存しょぞんです。」


「それは僕がハスターだからかい?」


「それは見当違いですぞ、マスター。」


やっとの事で静かに口を開いた彼に、即座に反応し反論をした。そしてゆっくりと自分の考えを述べる。


「我がそんな安い獣だとお思いですか?我はマスターだからついて行く、一緒にいる。そこらのゴミ虫と一緒にしてもらっては、我も不愉快ですぞ。それにマスター自身をけなしている様なものですゆえ・・・・」


我はマスターが貶されるのはいただけない。


それが例えマスター自身であっても、同じである。


そしてまた同じ言葉を口のする。



「我は、マスターだからついて行く。

例え馬鹿であろうがなかろうが、例え無知に見せて実はとんでもない事を考えている阿呆であろうが・・・・我は、人間だろうが例え虫だろうがマスターであればどんな所でも付いて行きますゆえ。死の果てまで。」


「流石に虫はやめた方がいい気がするんだけど・・・・」


「ことのあやって奴ですよ・・・・それにマスターも、そこまで言えば我の言いたい事、お分かり頂けたであろう?」


「・・・・まぁ、こっぱずかしいんだけどね。」


「それはいい、そこまで伝わったって事ですから。」


あからさまな苦笑をすると、彼は同じ目線になる様に膝を曲げてニコリと小さくも優しく笑って見せた。


「僕はドラゴンと人間の価値観の違いは、素晴らしいエッセンスだと思うんだよ。ドラゴンからしたら人間は馬鹿の一つ覚えに見えるかもしれない、だからと言ってドラゴンは人間を無闇に傷つけないだろ?・・・・まぁ、一部を除いてはなんだけどね。」


エッセンスとは・・・・やはり人間は面白い事を考えていると思ったが、実際に我々はスパイスの一種なのかもしれない。スパイスは調合次第で味、香り、風味が変わるようにやはり人間やドラゴンも、変わってくるのかもしれない。成功すれば、それは最高に素晴らしい物となるが、失敗すれば・・・・


ーーーーとんでもない事になると言うのに。


「だが、それも素晴らしい、面白い、恐ろしくても例え不愉快になる様な者であっても、それもまた一味違ったエッセンスなのだと・・・・言いたいのであろう?・・・・我も同意見だ。」


「そう?・・・・じゃあ、僕がこの依頼を受けた理由がわかった?」


「あぁ、馬鹿だからだろうな。」


苦笑まがいに軽く笑って見せると、彼はこちらの肩にポンポンと片手で叩いてきた。


「理解がお早い・・・・で、君はどうする?僕の考え無しな行動に呆れを指して僕に付いてくるのをやめるかい?」


「冗談。・・・・マスターは我とは違って方向音痴で、ろくに食べ物すら作れませんから、我が付いて行かないと大変です。まぁ、例え駄目だと言われても、死ぬかもしれなかろうと・・・・我はマスターに付いて行きます。」


「ははっ!これは頼もしいお母さんだよ。」


さてと言いながら膝を曲げて座っていたのを起こし、こちらもゆっくりと立ち上がり翼を羽ばたかせる。


「マスター?」


「なんだい?」


「何故、我の名前をいつまで経っても呼んでくれないのだ?ここまで旅をしてきたのに・・・・一度もないないのだが。」


「あぁー・・・・そういえばそうだったね。て言うか、君も僕をマスターとは言うけど名前では言ってはくれないだろう?」


「主人と家来は違いますよ、別に我はいいのです」


「君は家来じゃない、仲間であり今は家族だ。」


人間は面白い事を言うモノだ。

家来に己を置いてくれと言ったら、人間は家来ではなく仲間か友、相棒、家族に招こうとしてくる。大半がそうなのだ、初めは家来になっても時間が経つにつれて・・・・家来が家族も同然になってしまう。不思議だ。人間は優柔不断であり優しさを持て余している、馬鹿みたいだ。


「・・・・やはり、マスター達人間は馬鹿正直にも程がある。ドラゴンならば早死にする奴等の中入りだ。」


「そりゃどうも」


「・・・・で、名前は?」


「いつか、呼んであげるよ。僕は君の名前を呼ぶ資格は、まだない気がするんだ。」


「マスターらしいが、そう言ってもう2年は経っているのだが・・・・」


そうこうしていると、また彼は歩き出した。

それと同時に己も翼を動かす。




今いるのは魔虫まむし国家と神脳国家じんのうこっかの間。境界線と言った所で、砂漠と摩訶不思議な植物達が生い茂るジャングル、常に気候が晴天の時が多く、たまに雨が降るがそれもただの雨ではなく雷雨や異常とも言える吹雪が降ったりと、生きていくとしたらかなり辛い環境と言えた。そんな環境にも関わらず、魔物だけではなく人間、主に盗賊やらが好んで移住しているのだからなんとも言えない所である。



それに当たって、説明すべき点が一つ。


この世には7種の種族がいる。


人間族、


ドラゴン族、


魔虫まむし族、


妖精族、


魔神族、


ハーフ族、


神族、


この7つで作り上げられているのだが、『ハーフ族』は種族と言ってはいるものの実際は種族ではなく、他の6種族達のいずれかの血が半々に入った者たちの事なので実際は6種族で構成されている。

大陸は一つしかなく、その大陸の中に三つの国があり、現在は平和協定を結んでいるが未だに争いごとが絶えない始末だ。


そんな中、我々は万能屋よろずやみたいな事をこなしているのだが、理由は目的があるからで実際はこんな事はしたくはない。


「本当にこの国を出るのですかい?」


「あぁ、もう船の当ては付いているしね。もうここまで来たら、後はなる様になるしかないし、実際ここまで生きてこれたのだって、半ば奇跡みたいな物だし」


「確かにそうですがね・・・・しかし、我々はこの国から出たらいけないと思うのですがマスター。」


「“ 神族の保護 ”がなくなるからだろ?・・・・だけど神族は僕達を実質嫌っているし、殆ど保護何て物は受けていないものだったからいいと思うよ、僕は。」



神族の保護・・・・これは神族が、神脳大陸に産まれた者のみ与える言わば保険の様な物であるが、神族は好き嫌いが人間より激しく、嫌いになった者は保護が余り降りない。

気まぐれな種族である。

しかもその神族の保護は、国を一歩でも出てしまうとその保護は全て消えてしまう。


「まぁ、確かにそうですがねぇ・・・・」


「そんな事はいいから、さっさとこの境界線を出て、明日までに付かないと色々とまずいぞ?」


「?・・・・何かありましたっけ?」


「だからー・・・・






さっき言ってた“ 当ての船 ”がもう港に着くんだよ。」




「・・・・は?」




いけない。


忘れる所だった、


確かに人間は面白い・・・・見ていて飽きないが



「人間は、馬鹿だって事忘れてはいけないな。」



それを言った後、






我は発狂した。







一体何時間位説教をしただろうか、彼は歩きながらも半分は灰になっていた。こちらも容赦なく説教したので時間なんて忘れてしまう・・・・と言うか、何故こうにも人間は考え無しに動いてしまうのだろうか。意味が分からない、馬鹿だ、能無しだ、実に阿保だ。

こっちの身にもなって欲しい、こっちは何時も彼等の馬鹿馬鹿しい物事に付き合っているのだ、胃が痛くなる。時には人間の馬鹿馬鹿しい行動によっては、良い方向に行くのだが・・・・大体は失敗に終わる。勘弁して欲しい、頼む。


「本当に・・・・勘弁して・・・・」




何故・・・・


我はこんなクソな生物の下に付いているのだろうか?


何故・・・・


疑問が絶えないのか。





「ごめんよ・・・・まさか、こんなにも遅くなるとは思っても見なかったから・・・・・呆れたかい?」


彼の心配している声に、溜め息が出た。


「別にどうって事ない、呆れるどころか感心するね。・・・が、いい加減に学ぶ事を覚えたらどうなのだろうか?我も己が生きている間はこう言ってはいられるが、ドラゴンの寿命と人間の寿命は桁が違う。我々一般的なドラゴンは一般的な人間の・・・・






10分の1しか生きられないのだから。」



わかっているのだろうか。


我々が、

何故効率を求め、

合理性に従うのかを、



「知ってる、だから急いでる・・・・僕は、君が・・・・僕達が悔いの残らない死に方にしたいんだ。」


「問答無用・・・・」


「あぁ、問答無用に振り回すよ。色々な物、全てはそうなる為にあるのだから。」


「本当に・・・・何でそんなに馬鹿でいられるんだい・・・・マスター達・・・・人間は?」




意味が分からない、何故だ?


何故そこまで馬鹿でいられる?


何故そこまで騙し合い、嘘まで付いて、



・・・・一定の正直さを持っていられる?



「それは馬鹿だからだ、そして






・・・・・・・・生きたいからだ。」


「・・・・やっぱり、人間は馬鹿正直過ぎて嫌になる。」


「君は・・・僕達人間が好きなのか嫌いなのかで言ったら、大好きなんだろうね。だから馬鹿正直だろうと、滑稽で阿保だろうと、嘘で騙し合いをしていようと、無知で能無しの木偶の坊だろうと・・・・そんな人間が“ せい ”にすがるそのたくましさに君や、ドラゴン達、その他の種族が一目置いているのだろうね。」


「本当に嫌になる、人間は知ったか振りが多い・・・・そして何より、他の種族より感情が豊かで喜怒哀楽がある・・・・何て無様だ、未完成な種族だ。」


「だけど、好きなんだろう?僕と旅なんかしちゃうくらい・・・・手下になりたくなるくらいに。」


「あぁ、そうだね・・・・嫌になるが、この上なく大好きだ。愛おしくなるくらいに・・・・」


「ははっ・・・・それは嬉しい。」



いつの間にかまた止まっていたらしく、そそくさとまた、歩み出す。


「あ、」


と、そこで彼は何か思い付いたかのようにこちらを見入って、手を一つ叩いて納得したかのようにこちらに戻って来た。


「どうしたんだい?何か顔に付いているかい?」


「いや・・・・今更なんだけど・・・・」



そこで彼はボソッと言った。





「君に乗って行けば、大陸を超えるは無理にしても・・・・都市までは飛んでいけるんじゃ・・・?」




「・・・・・・・・・・・・・・・・あっ、」



盲点だった。
















旅の途中、ある旅人2人が小さい会話を交わした。


その小さい会話は絆を深く根強い物にしていく、


のちに、彼等はその世界全土を巻き込み戦争を起こしてしまうのだが・・・・それはまだまだ先のお話。





因みにだが、その会話の後・・・・




彼らが道に迷い魔物に喰われかけ、消化されかけ、


都市には辿り着いたはいいものの、国の衛兵達に指名手配犯と間違われ、


誤解は解けたものの、船が出航してしまっていた。




・・・・というのは、また別の話。







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