リプレイ第二話〜何もできない主人公
「譲君、悪魔が近くにいるわ」
『なに!もう来たのか?』
「えぇ、奴らの視力は32はあるわ。おそらく上空からこちらの様子を見てるわね」
視力32って…。
「…来たわ!」
空に浮く二人の悪魔。
その一人が勢い良く飛んでくる。
「ディーメ!」
何かの呪文だろうか? 右手に黒い光が集まり大きくなっていく。
あんなの、くらったら死ぬぞ!?
「譲君!」
あれは…大樹!?
どうやら向こうから来てくれたようだ。
大樹の目もまた赤くなっている。
「譲君、一度右に回避した後すぐ後ろに飛んで!」
『お…おう!』
黒い光の物体が俺を目掛けて飛んでくる。
大樹の言う通り、まずは右に回避。
その後すぐ後ろに飛んだ。
勢い良く飛んだので尻餅をついてしまった。
目の前には、俺がいた二つの場所が、アスファルトなのに…えぐれていた。
あ…危ねぇ…。
攻撃を外し人数的(俺は何もできないが)にも分が悪いと判断したのだろうか、悪魔は撤退していった。
『大樹、助かったよ』
「危なかったね。…ぐっ」
『どうした!?大丈夫か!?』
「大丈夫…ちょっとフラッときただけだから」
どうやら能力を使うとその代償があるらしい。
大樹の場合、思考看破能力。
つまり、相手の思考を読み取れる能力らしい。
しかし、それは相手の脳から直に読み取るため、情報量の多さに脳が付いて行けず、破裂しそうな程の痛みが伴うらしい。
「譲君、さっき尻餅ついた時に足くじいたでしょ?」
なんか足がズキズキすると思ったら血が出ていた。
足首は軽い捻挫をしたみたいだな、こりゃ。
「…まかせて」
愛の手からポッと温かい光が足に当てられると、傷がみるみる治っていく。
ひねった足首も、曲げてもなんともない。…スゲェな。
「それが愛ちゃんの能力…」
「これが慈悲の能力よ。たいした怪我じゃなければ代償もないわ」
愛の代償は自分の精神力。まぁMPみたいなもんらしい。
「それで、譲君の能力は?」
「それが問題ね。次に悪魔がくるまでになんとか見つけないと…」
「え!?分からないの?」
…なんか足引っ張ってるみたいでゴメンなさい。
でも、確かにそうだ。状況は良くない。
俺の能力は何なんだ?
「僕の場合は、勝手に人の思考が読み取れたのが始まりだったんだ。譲君も何か変わった事ない?」
変わった事…ないな。
なにしろ、ついさっき気付いたんだ。
「ってかさ!何でまた急に目が赤くなったの?」
大樹の言う通りだ。トラウマが原因で赤くなった目。
治すには逆の感情を持つ事だったし、それで治ったはずだった。
「それが問題点二つ目。あれは私達の勘違いで、一年前に赤くなったのは、能力覚醒の前兆だったの」
うわ、って事は俺ら恥ずかしくね? 前作で普通の高校生だぁ〜とかほざいちゃったの?
「とにかく!次に悪魔が来た時、能力が分からない事を気付かれないようにしてね!」
もしバレれば、それが命取りになるってか…。
しかし、今のうちに何かしらの対策を練らないと…
次こそ…殺される。