チョメディー〜プロローグ
「こら、起きろ」
ーー我が眠りを妨げる者よ、覚悟はいいな?
「うるせぇよ!もう朝だぞ!?」
ーー我が眠りを妨げる…
「アラーム!」
〜ドカーン〜
『うわぁ!メルト!てめぇ呪文で起こすのは辞めろっつったべ?』
「じゃあ早く起きろ」
…あ、どうも。チョ・メディー改め、人間界での名前は明です。
以前は人間、チョメディーの主人公をやってました。
今、俺は魔界にいる。
人間として育った僕が実はサターンでした…ってオチ!!
もう参っちゃう☆
でもまぁ魔界の暮らしも悪くないもんよ。
寮に入れられて学校に通うんだけどね、今まで人間だったから魔界の学校が楽しいの。
呪文だぜ呪文!?
ちなみに今、同居人のメルトって奴が唱えた〈アラーム〉ってのも呪文の一つ。
目標物一体の頭上に小さな爆発を起こすものだ。
ドラクエで例えるならイオみたいな?
「……鏡、見る?」
そう言ってメルトが手鏡を渡してきた。
フッ、鏡に映った俺の甘いフェイスは5才〜65後半の乙女心を忘れない女性に大ウケでちなみに俺のストライクゾーンは外角低めです!
『フッ、今日もツイストが決まっ……またかぁあぁー!!』
アラームのせいで俺の髪の毛チリッチリ!
好きな料理はエビッチリ!
好きな教科は地理っ地…
「はい、アイロン」
ありがとメルちゃん。
若干滑ってた所を助けてもらって。
そうそう、この服のシワを伸ばすアイロンで……今日もお勤め頑張ってね、あ・な・た☆…って何よこの口紅の後! キィーー悔しい! 浮気したのね!
「お前のボケに付き合ってらんねぇ…リバス!」
自分から振ったくせに…。
またメルトが呪文を唱えると、地理っ地理だった俺の髪の毛が見る見る元のストレートに。
リバスとは元の形(姿)に戻す呪文だ。
以前、閻魔様の銅像をブチ壊した時にメルトが助けてくれた事もあったな。
それも、システム上としては、同居人がパートナー。
俺とメルトは何をするにも一緒で、さらに失敗も連帯責任。
俺の寝坊はメルトの失敗にも繋がるので、毎日メルトは必死で俺を起こす。
その度に俺は危険な思いをしているわけだ。
こっちに来てから俺も何個か簡単な呪文は覚えた。
しかし、呪文とは私欲の為に使うのは禁じられている。
さらに、呪文はメンタル力を使うので仕事の時以外は好んで使わないのだ。
「ほら、今日も仕事だ。また人間界に行くぞ」
メルトが支度を終え、俺に出発の合図を出す。
もう人間界に行けないと思っていたが、実は仕事で何回も行っている。
しかし、これも決まりでターゲット以外の人間との関わりも禁じられているため、昔の友達と合う事はなかった。
「今日の仕事内容はターゲットの血液500ミリの調達だ」
メルトが今日の内容を口にする。
俺達サターンの食料は人間の生き血だ。
メルトは冷静沈着で優秀。さらに卑劣も持ち合わせるエリート。
どんな過酷な仕事も顔色一つ変えないでこなしていく。
「準備できたな、いざ人間界へ…」
メルトの呪文と共に俺の意識も薄れていく。
俺達は人間界の上空に浮いている。
「奴がターゲットだ。行くぞ…」
メルトが蒼い瞳を鋭く尖らせ、艶やかな長髪を風に靡かせて言った。
『OK、美少年』
俺は右手を高く上げ、精神を集中させた。
『コルト!』
指先から黒い光が出ると、それがターゲットに命中。
コルトとは、目標物の運気を一時的に大幅に欠落させる呪文だ。
「ぐはぁあぁ!!」
ほら、ターゲットも口から血ぃ履いてその場に倒れ………あれ?
「馬鹿野郎!また失敗かよ!間接的に血を取らないと駄目だろうが!」
あれぇ〜? 本当はターゲットを転ばせて、転んだ先にガラスの破片が落ちててそれで出血を誘ったんだが…
どうやら失敗みたい☆
ーーーーー。
「また貴様らか…」
「申し訳ありません、閻魔様…」
『わりぃ、またミスっちまった』
「メディー!頭が高いよ!ってか言葉使いに気をつけろ」
メルトは閻魔の前で片膝を地面に着け、頭を下げている。
「まぁよい…メディー、貴様はサターンの血を受け継いでいるためその呪文は強力過ぎるのだ…そのせいで、まだ未熟な貴様にコントロールは難しいのは分かる…ただこう何回も失敗が続くとのう…」
俺の父は名高いサターンらしい。その血を受け継いだまでは良いのだが、18歳まで人間として育った俺は、幼い頃からの修業もしていない。
よって、体と心がついていけないのだ。
閻魔様はため息をはくと、契約書にはんこを押した。
「閻魔様?次の指令は?」
メルトがそれに気付き、恐る恐る聞いた。
「危険度、難易度、共に最高ランクの仕事じゃ☆」
閻魔様はいやらしい笑みを見せると契約書を突き出した。
「…赤い目の…剥奪?」
メルトの顔色は強張ったままだ。
「最近人間界にまた赤い目を持つ者が現れた。その目を奪ってこい」
「私とメディーはまだ修練中ですよ?こんな仕事のレベルまで達していない!」
「心配するな。メルトは同期の中でトップの成績。メディーは強力な魔力が潜在している。これも一つの試練じゃ」
「…そんな」
普段は常に冷静で、滅多な事にしか表情を変えないメルトからは、汗さえも流れていた。
「もし任務が成功すれば二人の階級を上げよう」
魔界にはそれぞれ階級がある。
デビルにA、B、Cと三段階。
殆どの奴はここにいる。
ちなみにAが一番良い。
さらに階級が上がるとデーモンの称号がもらえる。
デーモンになれるのは、ほんの一握りの悪魔だけであり、デビルの憧れだ。
メルトはデビルAのトップ。最もデーモンに近い存在と言われているが、まだ早い…といつも言っている。
これは魔力や、判断力、仕事の成績によって分けられる。
年齢は全く関係ない。
閻魔様の歳が俺より下なのがいい証拠だ。
まだ十歳くらいの毛も生えそろってないようなガキが語尾に〈じゃ〉とか自分の事〈ワシ〉とか言うなよ。
ちなみに俺の階級はデーモンの上をいくサターン〈仮〉だ。
なぜかと言うと、判断力や成績は赤点でも、それを補える程、魔力がありえないくらいあるらしい。
だが、さすがに危険とのことで、今はまだデビルの奴と同じ扱いだ。
それで、デビルトップのメルトとパートナーを組んだ訳だ。
俺がサターンと知っているのは閻魔様とメルトだけだがな。
「ターゲットは日本。名は木下 譲。天使が気付く前に狩ってこい!」
「はい!!」