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リョータ視点で繰り広げられる異世界の物語り

「……ハアァァ」


『どうした愛?いきなりため息なんてついて』


「うん…ちょっと昨日の事で…ね」


昨日…花火大会の事か。まぁ、そりゃリョータや彼女さんは可哀相だと思うよ。


ずっと一緒にいた親友が、人間ではなく、悪魔だった。なんて言われ、しかも、昔の友人の俺を殺そうとしている。


それにムリヤリ魔界に連れ帰った張本人である愛を怨んでいた事を知った愛の気持ちだって複雑だろう。


『気にするな。愛は間違った事はしていない。あのままだったら、リョータにも危害が加わったかもしれないんだろ?』


「うん…。でもね、メディーは人間として育ったから、悪魔とは思えないほど心が優しかったの。それが…私達を狙ってるなんて事も、ちょっとショックで…」


それはメディーだって仕事だから仕方ないだろ。

…って、なんで俺は敵の肩を持ってんだろ?


「メディーなら魔界と天界の争いを辞めさせられるって期待してたんだけどなぁ〜…」


俺は人間時代のメディーは知らないから何とも言えないが、普通の悪魔と何かが違うと言う事だけは分かった。


『敵に情けはかけるな?油断したら俺達は殺されるんだぞ?』


「…うん」



ピンポ〜ン


玄関のチャイムが鳴った。お客さんとは珍しくもない。どうせまた施設のおばちゃんからの差し入れだろう。


『はぁ〜い。今開けます』


ドアを開けると、そこに居た人物は、意外な事にリョータだった。


『おう、どうした?』


明るく話し掛けてみるが、リョータは難しそうな顔をしている。


「あぁ〜…その…なんだ…」


リョータが中々言い出さない時は、照れ臭い時だ。


前回の事をわざわざ謝りにきてくれたのだろうか?


「譲くん!ちょっと来て!」


いきなり愛に呼ばれ、耳を引っ張られた。


「悪魔が近付いてきた。リョータくんには帰ってもらって」


悪魔…そうか。リョータには明の姿は見せられないからな。


『悪いリョータ!ちょっとこれから用があるんでな、また後で!』


…ちょっと冷たすぎたかな? まぁ後で謝れば良いだろう。



ーーーーーーー


今日俺が譲の家を訪ねてきたのは他でもない。


天使にちゃんと謝りたかったし、明の事を聞きたかったからだ。


しかし、こうもアッサリ追い出されるとは…やはり怒っているのだろうか。


それに用事というのも気になる。


二人には悪いと思ったが、後をつけさせてもらった。


二人は慌て気味に走り、ある家に着いた。


中から出てきたのは一人の人間。


話を聞いたソイツは、顔色を変え、譲達についていった。


三人の様子から察するに、この後何かがあると言う事は分かった。


俺にも緊張が走る。



気付かれない様に最前の注意をはかりながら、尾行を続けた。



三人は人気のない道を進んでいき、ついには空き地に到着した。


ここは、周りに家もなく、すでに廃地と化している所だ。…こんな所に、なぜ…?


『さぁ〜て、来たようだな…』


譲が空を見上げて言った。


何か来たのか…? そう思って俺も空を見上げるが、何もいない。


なんだよ…そう思った時、譲達がいきなりバックステップを踏み、素早く身を退いた。


何事だ…と思った瞬間…譲達が立っていた場所に突然の爆発音と共に、地面がえぐれた。


状況がつかめない。


ただ、俺には見えない何かを奴らは見えている…!


そして俺は一つの答えにたどり着いた。


「明…明が来ているのか!?」


もはやそうとしか考えられない。


譲達の瞳は赤くなっていた。これは花火大会の時に見た目だ。


『破壊能力ー!!』


「思考看破能力!譲君、右だ!!」


確に…奴らは誰かと戦っている。


やはり明…明がいるんだ!


俺はいても立ってもいられなくなり、譲の元へ走った。


『リョータ、危ない!』


…え?


ふと上を見上げると、眩しい程の大きな光が見えた。


「くらえ、人間!」


声は聞こえたが、姿は見えない何かがその光を俺達めがけて放ってきた……。



マジかよ!?



強く閉じた瞼を開けても、何かが起きた形跡はなかった。


上空の方では煙が上がっているが、譲達に変化はない。



「リョータ…くん?」



やっと天使も俺の存在に気付いた。


その時、上空に黒いゲートが現れた。


それは俺の目にも確認できた。


一瞬…ほんの一瞬だが、誰かがそのゲートに吸い込まれて行くのが見えた。


あれはまぎれもなく…



「明…?明あー!!」



明だ。悪魔みてぇな格好だったが、あれは一年前に…最後に見た明はあの格好をしていた。遊園地で見た…あの明だ。


「譲!どうなってんだよ!今の奴は明だろ?てめぇ、やっぱり殺したんか!?」


譲の胸倉を掴み、怒鳴り散らしたところで、俺は頬に強い衝撃を受けた。


後方に吹っ飛び、前を見てみると、悪魔がいる。


碧い長髪に鋭い目付き。その目からは異様な怒りが伺え、それは俺に向けられたものだった。


「てめぇのせいで…」


その悪魔は俺に言った。


俺のせい…?

意味が分からねぇ。


何をしたって言うんだよ。


譲、説明してくれよ。



誰だよコイツは。




明はドコ行ったんだよ。



「てめぇが来なけりゃなぁ!メディーは…」


メディー?


誰なんだって。




アイツはメディーなんて名前じゃねぇ。



沖本 明。




そう呼んでたんだぞ?




「メディーは以前関わってた人間と接した。…奴は。奴は!」



悪魔が凄い力で俺の胸倉を持ち上げる。


苦しい。


なのに、頭が混乱してついてこない。



『破壊のうりょーー』

「邪魔するな!アラーム」


悪魔の手が光ったと思ったら、譲の足元が爆発した。


今のは魔法なのか?




「もう…お前らと戦う理由がなくなった。今まで悪かったな」


『メルト…だったか?ちょっと待てよ。友の死を犠牲にする気か?メディーはアンタに手柄を譲ったんだろ?ならかかってこいよ!』


「………」


抜け殻のようになった悪魔は握力を弱め、俺は地面に落とされた。


譲と何か言い合っているが、そんな事はどうだって良い。



「そんな事より…やる事ができた」


『やる事…?』


「メディーを助けに行く。どうせ赤い目の剥奪に与えられた期限は今日まで。もうお前らと会う事はない」


『メディーは助かる…のか?』


「まぁな。かなり危険だが」


『俺も連れてけ』


「貴様には関係ない」


『関係ある。メディーはリョータを助けてくれたからな』


おいおい、ちょっと待てよ。さっきから聞いてりゃメディーってのは明なんだろ?


って事は明は俺を助けるためにゲートに吸い込まれたってのかよ?


「この人間を救ったのは明自身のためだろ。貴様のためじゃない」


『理由はどうあれ、結果はメディーのおかげでリョータは助かった。俺はついてくぞ。』


「人間ってのは損な生き物だな」


『アンタだってメディーのために自分を犠牲にしたくせに』


「フッ、着いてこい。譲!」


『頼んだぜ、メルト!って訳だ。愛、大樹、留守番ヨロシクな』


「止めたって無駄だね」

「いってらっしゃい。必ず帰ってきてね。」


『わかったから泣くなよ、愛。また愛の作ったオムライス食いたいしな』


「…バカ」




そう言って悪魔は譲を連れていってしまった。


今目の前で起きた事は現実か?


こんな非科学的な事が起きて良いのか?



話しが進んでいくのに取り残された俺は放心状態になっていた。

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