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チョメディー第八話〜こいつをファイナルラウンドにしようぜ


『ふぁ〜…眠ポ』


おはよう、諸君。今日は珍しくメルトに起こされる前に自分から起きた。


と、言うのも今日は重大な日だからだ。


まるで小学生が遠足に行く前日の夜の様に、緊張してなかなか眠れなかったのだ。


ただ一つ違う所と言えば、『楽しみ』ではない。


それもそのはず。下手したら死ぬかもしれないからだ。


「珍しく早起きだな、メディー。準備出来次第行くぞ」


『了解…』


今日がおそらく譲達との最後の決戦となるからだ。



博士の元で修業を積みパワーアップした俺達だったが、気が付けば閻魔様に依頼を受けて60日が経過した。


赤い目の剥奪に与えられた期間は今日で最後。


これで駄目なら俺達に力がなかったと諦めて大人しく罰を受けるさ。


『行こうか、メルト』

「あぁ、死ぬなよ」

『それはお互い様』


いざ、人間界へ…。




ワープを済ませた俺達は上空に浮いている。


譲達の姿も見える。すでに奴らの行動はお見通しだからだ。


『不意打ちってのは好きじゃねぇからな。正々堂々と行きますか』

「不意打ちも何も愛に気配読まれてるから無駄だっての」


…それもそうだな。


あ〜ぁ。人間のままだったら…命懸けで戦闘なんかしないで皆と楽しく平和な日々を過ごせてたってのに…。


『全く…恨むぜ』

「ふっ…誰をだよ」

『しいて言うなら…こんな設定を組んだ奴かな!』

「生きて帰れたら…地球上のタンポポ踏み潰す旅に出るか?」

『……悪かねぇ』


メルトと拳をコツンとぶつけた後、俺達は譲達の前に降りた。


「待ってたわよ」


愛…もとい、エン・リューファが腕を組んで言った。


じゃあ、行きますか。これがラストバトルだ!


「メディー!俺にまかせろ!」


その隙にメルトが攻撃に移る。


「召喚…ケルベロス!」


メルトが呪文を唱えると、魔法陣から現れた、三つの首を持つバカでかい犬。


博士からもらったマルトさんの形見だ。


「行け、ケルベロス」


メルトが指示すると、人間に牙を向け勢い良く飛び掛かった。


「シールド!」


リューファがシールドを半球に張る。


しかし、ケルベロスの牙はシールドの強度を上回り、いとも簡単にシールドを破壊した。


「さすが父上の下部だ…続けていけ!」


初の実戦にも関わらず息ピッタリのメルトとケルベロス。


こちらの有利は変わらない。



「ヤバイ…召喚、ユニコーン!」


今度はリューファが呪文を唱えると、一本角が生えた馬が現れた。


その大きさは、ケルベロスをも軽く越えていた。


「みんなを守って、ユニコーン!」


ケルベロス対ユニコーン。

なんかコメディー離れしてきましたね。


体制は若干ケルベロスが圧されている。


「うーん…やっぱりケルベロスがユニコーンに勝つのは無理か…」


『いや、冷静すぎるだろ!なんとかしろよ』


「分かってるよ。ケルベロス!」


メルトの声を聞いたケルベロスは、ユニコーンから手を引く。


「ケガさせてゴメンな。よくやった」


そしてケルベロスは、魔法陣の中に消えて行った。


「コイツを試してみるか…ガーゴイル!!」


メルトはネックレスを掲げ、それに魔力を込めた。


ホストでバイト中にババアからもらったインチキ悪徳商業の召喚デター!


本気にするなよメルト、そんなもん嘘に決まって…



「グオォォー」


ホントに召喚したー!


「なんだよあれ!?」


これには譲も驚くだろうな…。


体調五メートルはある化け物だ。全身銀色で紫色の瞳は目が合うだけで恐怖心を植え付けられる。


二つの鼻の穴には輪っかが貫通してあり、鋭い牙は岩をも砕きそうだ。


「ガアァァー!」


身震いしそうな雄叫びと共に、口から衝撃波を繰り出した。


「マジ?…ユニコーン!」


ユニコーンの体から円形のシールドが張られる。

しかし、それごと粉砕したガーゴイルの衝撃波。


すごすぎる…。


「破壊能力!!」


譲の手がガーゴイルに向けられた。いくら強力な破壊能力だとしてもガーゴイルを破壊することは…


〜ガキン〜


ガーゴイルの鼻の輪っかが破壊された…?


「グオォォオ!」


よく分からないがガーゴイルが苦しんでるみたいだ。


「やっぱり魔力の源は鼻の輪っかね☆」


…ちっ、リューファには召喚獣の情報は筒抜けって事かよ。



『こうなりゃ接近戦だ。行くぞ、メルト!』

「あぁ、まずはこの前と同じやり方だ」


素早い動きで人間を翻弄。そして刹那の如く譲の両脇へ。



しかし、俺達が挟み打ちをするポイント。そこをベストタイミングでドンピシャリで手を構える譲。


「…ビンゴ!」


読まれてる…大樹か…!


「能力発動!」


破壊能力。

しかも両手から俺とメルトの二方向に!?


まず…


『ぐわあぁ』

「チッ…」


とっさに防御を唱えた俺とメルトだったが、かなり後方に吹き飛ばされた。



「やっぱり力を分散すると威力も減るな…」


それで死なずにすんだか。しかし、かなりのダメージを負ってしまった。


しかも、動きが読まれている。


「…大樹か」

『おそらく…な』


やばいねコリャ。

大樹に読まれてんじゃん。


「別れるぞ。俺は譲を殺る。メディーは大樹を頼む」

『OK!』




大樹の看破能力…見事な物だ。勉強した甲斐もあって、完全に思考が読まれている。



まぁ、メルトは色々と考えるから、大樹とは俺が戦った方が良いな。


俺の戦い方は、そんな戦略なんてねぇ。


とにかく突っ込むのみだ。判断力赤点野郎なんでね!


『くらえぇ!コルト!』


まだ大樹に見せていない呪文、コルト。

運気を大幅に欠落させる呪文だが、そんなもんは囮にすぎない。


呪文の効果を読まれるなら、接近戦だ。


所詮人間が悪魔の潜在能力に敵わないってことよ!


「ふーん…」


あれ?

コルトが全く的外れの所に?

大樹の奴、もう避けたのか!?


『くそ…』


接近戦。

これはもう呪文など関係なしに、人間とのタイマンだ。


俺のパンチはメルトですら避けられない程のスピードだ。



そう、あのメルトですら…




俺のパンチは避けられない




なのに、なぜ!

人間なんかが避けられる?



「遅いね」


余裕の表情ニヤリと笑う大樹。


『このッ』


素早く繰り出した右ストレートは、いとも簡単に避けられてしまう。


…今のは何か変だったぞ?


『もう一発だ!』


そしてまた避けられ…


いや、これは避けられたと言うよりも…。


俺が攻撃に移る前から、すでに大樹は避けている。



「《先読み》って知ってる?」


…先読み?


「君の思考どころか、これからする事も読めるって事だよ」


攻撃が当たらねぇ…。


「あとね…もっと読まれたら困るのあるでしょ?」


ちくしょう…人間なんかに…


「もちろん、君の弱点も読めてるよ」


ハッ、と我に返った時、大樹の拳が首の根本を直撃していた…。


「僕達は普通の人間じゃないよ。能力者だって、潜在能力は人間離れしてるんだ」



ーーーーーーー

「メディー、これを首に下げとけ」

『閻魔様?これは??』


「魔后石のネックレス。決して砕ける事はない」

『はぁ…なぜ俺に?』


「未熟児は首が弱くてのう。ま、魔后石が首を守ってくれるのじゃ」

『ありがとうございます』

ーーーーーーー


そっか…魔后石のネックレスは譲の破壊能力で壊されたんだっけ…。


沢田大樹。やるじゃん。

看破能力だけでなく、〈先読み〉の能力まで付けていたとは…。


コイツもまた、天才。


だから言ったんだよ…。人間のままで良かったのに…。


………ちくしょぉ。



「メディー!」

「お前の相手は俺だ!破壊能力!」


「しまっ…」


破壊能力の衝撃をモロに受けてしまったメルト。


遥か後方まで飛ばされ、血だらけで倒れてしまった。

なんとか立ち上がったメルトだったが、翼はもげ、疲労困憊。立っているのがやっとである。


俺はなんとか立ち上がり、メルトと元へ向かった。


体中が痺れている。ダメージは相当なものだ。もう強力な呪文は使えそうにない。


『どうする、メルト…』

「…関係ない」


今のメルトは相当キレている。

下手すりゃ死人が出るぞ?


「読まれたって構わない。用は避けられなきゃ良いだけの話しだ」


…出る。メルトの呪文が。


「あのババアには本当に感謝だぜ。避けられるなら、避けられない呪文を唱えるまでだ」


メルトが呪文を唱えると、人間達の足元に氷が張られた。見事な氷像は足首にまで侵食され、身動きが取れなくなっていた。


『考えたな、メルト!』

「腕でガッチリ抱き抱えられてキスされ続けてりゃ、こんな事も思いつくさ」


あぁ、ホストの時でね。

なるほど、そんな辛い過去があったのね。


「破壊能力!」


譲のパワーを抑えた能力で三人の氷だけが砕かれた。奴もかなり力をコントロールできるようになっている。


「…遅い」


次の瞬間には、メルトの手から、無数の黒い矢が降り注いだ。


威力はないが、この数はとても避けられない。


この数には破壊能力も対応しきれないだろう。


「…くっ」


ナイフの切れ味とまではいかないが、生身の人間の体では、かなり効いているようだ。


「早く回復を!」


まずい、天使にはたいして効いていないみたいだ。

ここまできて回復されては…


「あの天使は回復呪文を唱える五秒間、身動きができない!」


スゲェ、そこまで見抜いてるのかよ。



「アラームラディー」


メルト得意の爆発系最大の呪文。


これで決まった!




!!!!




…プスン







「…メディー、どうゆうつもりだ?」




『…わりぃ』






「なぜ、ここまできて…俺に魔力封じの呪文をかける?…なぜだ!」



『友達がいたんだ。巻き添い喰らっちまうだろ』




「クソ野郎!俺が罰を喰らうはずだったのに……なんでだよ、メディー…」



『やっぱりな。近くにいる人間に気付かないなんてメルトらしくないと思ったよ』



「マディーさんの事…すまなかった」


『どうせメルトの事だ。自分の父親が俺の父親を殺したと聞いて、俺に申し訳ないと思ってたんだろう。


だからワザと自分が掟を破り、手柄を俺一人にしようってか?メルトの判断力も赤点だな』


メルトのその計画も、簡単に崩れさった。


よりによって…


巻き添いを喰らいそうになったのが…




リョータだったから。


なんでリョータが…ここにいるんだよ…。


「分かってるのか?お前は以前関わった人間と接したんだぞ?」


『それは掟破り。つまり、魔界追放を意味する』



でも、もう決めちまったんだよ。


友達は俺が守るって…。


俺達のせいでリョータが死んだら、舞にまた泣かれちまうからな…。


『じゃあな、メルト』


「この…判断力赤点野郎が…」


突然黒いホールが現れ、俺はそこへ吸い込まれていった。

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