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リプレイ第八話〜ゲームでポン


〜ピカ!……ゴロゴロ…〜

「ヒヤァ!」


まだ夕方なのに、どうも外が暗いと思ったら雷が鳴ってるのか…。


愛は脅えて布団を纏って震えてるし…。


『愛、そんなに怖がらなくても電気使わなければ大丈夫だよ』


「カスみてぇな事言わないでよ!雷様〈らいさま〉が怒ってるんだよ?今頃天界は…ヒイィ」


カスって言われた…。ちょっとショック。


ってか雷様って…なんか良くアニメとかで背中に太鼓みたいなのがあってチリチリパーマの鬼を想像してしまう。


「雷様は普段は優しいから、怒ると走りながら怒鳴るの…。神様でもキレてる時の雷様には関わらない様にしてるわ」


雷様こえぇ…!


『って事は、一緒に降ってる雨は雷様の汗か涙かな?』


「海へ流れ込んだ川の水が太陽の熱で温められて、それが集まって雲になり、雲が冷えるとまた水に戻り地面に落ちる。これが雨です。あまりカスみてぇな事言わないで下さい」


うぜぇ〜! 雷様が居るって言ったからロマンチックに合わせただけなのに何この言われ方?


『今日おかずナシな』


「それだけは勘弁して下さい」


いやぁ…ってかどっちにしても雷が止まない事には買い出しも行けないんだけどね。


そもそも愛が買ってきた食材を毎日一つ残らず料理しろってうるさいから常に材料の在庫がないんだよなぁ。


まぁそれで料理しちゃう俺が悪いんだけどさぁ。


『後二時間もすれば止むだろ。そしたら買い出し行くから、それまでおとなしくしてなさい』


「はぁ〜い。じゃあゲームでもやろっと☆」


いそいそとテレビにアダプタを差し込み準備する愛。


…って、待て待て。俺ん家にゲーム機なんてないぞ?


《さそりがため》


始まった! ってかタイトルおかしい!!


ーー舞台は昭和。ある一人のミュージシャンの、たった一言から全ては始まった・・・。


「あぁ〜!さそりがためしてぇ!!」


それが彼の最期の言葉となったのでした…。




FINーー




…終わったぁ〜! なんだこのクソゲーは!


「うんうん、私もラストライブで聞いたさそりがためには思わず涙しちゃったもんねぇ…」


いやウゼェよ。


『ってかこのソフトと本体はどうしたんだよ!?』


「買ってもらったんだよ〜大樹君に。また『すろっと』って言うやつで能力使った事を譲君への口止め料として…………あ、言っちった」


ふーん、また大樹がねぇ〜。アイツ能力なめてんな、確実に。


『ハァ…他にソフトないの?』


「う…ん?あ、コレが合った。二人でできるよ!」


ハイ、とコントローラーを渡されたので反射的に受け取ってしまった。


『ちょっ…俺ゲームとか苦手なんだって!』



そう、俺がゲーム機を持っていない最大の理由がこれだ。


単純にヘタクソなのである。RPGなど長ったらしいのはゴメンだし、格闘系もコンピュータに勝てず、しかもすぐ飽きる。


「大丈夫。恋愛系の心理ゲームだから」


一番苦手なジャンルですな。


『二人用なのにか?』


「そうだよ。まずアタシが質問事項を考えて、状況に応じた解答を譲君がするシュミレーションゲームだよ」


まぁ…用は愛の考えてる事を当てればいいんでしょ?


「じゃあ質問に答えるから、ちょっと見ないでね」


そう言って後ろを向かされてしまい、テレビ画面が全く見えない体制になった。


カタカタと軽快なボタンさばきが聞こえ、途中フフ…など、不気味な笑い声が聞こえてきた。…コイツ、ロクな質問入れてないな。


「はい、できた!もう良いよ」


画面を振り返ると、バーチャルで作られた二人の男女が現れた。


男の方は目が隠れる長さの黒髪に、てっぺんがツンツンと立ち、鋭い目付きに無愛想な表情を浮かべている。


……うん、コレ俺だ。


「似てるでしょ〜?」


どうだ! と言わんばかりに自信満々の愛。


キャラ作成中は俺の顔を見てないのに、良く俺の特徴を掴んでいる。…なんか嬉しかったり。


ちなみに、愛と再会した時は短髪だったが、もう伸びてしまった。長年の間、長かったから、前髪が短いとどうも落ち着かないのだ。


『そっくりだよ』


「私のもでしょ?」


艶やかな緑色の髪はクセがなく、髪と同じく緑色の瞳はクリッとしていて、白い肌にナチュラルメイク。


愛にそっくりだ。


『お前すごいな。たくさんある中から良くピンポイントで選べたもんだ』


さすがにこれには感心してしまった。しかし、今時のゲームも凄いもんだなぁ。


「そっくりだったら、ココを押してね」


画面には、《似てる》《似てない》の二沢が現れた。


愛に言われた通り、俺はためらわず《似てる》を選択。


ピローンと効果音と共に画面右下の、五個ある空ハートの内、一個目がピンク色に染まった。


なるほど、どうやらこのハートは二人の好感度であるらしく、愛と俺の気が合う選択をすれば良いらしい。


これならゲーム音痴の俺にもできそうだな。




ユズル『どこか出掛けよっか』


アイ

「うん。私行きたい所があるんだ!」


ユズル『前言ってた所だな?…確か……え〜と…』



《彼女がやりたい事は?》


A・ボーリング

B・ビリヤード

C・テラマックに挑戦


三つの選択肢が出てきた。


あ〜…ぜってぇコレCだ。


『し…C…かな?』


カーソルを合わせてポチッとボタンを押すと、またピローンと言う音が鳴り、ハートが二個に増えた。


「さっすが譲君!買い出しが楽しみだわ」


この後行く気だぁ〜…。



ユズル『今日はマッキュでテラマック挑戦の日だったな』


アイ

「そうだよ。そのためにオヤツ抜いてきたんだから!」


二人が笑顔になり画面が切り替わり、背景はマッキュになった。


店員

「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」


ユズル『テラマックに挑戦します』


店員

「かしこまりました。何個でしょうか?」


《テラマックは何個?》


A・二個

B・三個

C・もぉあるだけちょうだい!


おかしいおかしい!

何で一個って選択肢がないの?


コレは…愛のノリ的に…




ユズル『あるだけ下さい』


店員

「お客様、お会計が足りない様ですが…?」


アイ

「もぉ〜見栄張らないでよ。恥ずかしいわ、プンプン」


《彼女の機嫌を損ねてしまいました》


デレレ〜ン…と、ハートの半分が減少。どうやら選択肢を間違えた様だ。




「いくら私でもそんなに食べないよぉ〜。正解は、二個!譲君と二人で挑戦しようと思ったのにぃ…」


『わ…わりぃ』


これ正解すれば良いけど間違えると結構雰囲気が気まずくなるなぁ。


まぁ、愛を知っておく良いチャンスかもしれない。



アイ

「ふぅ…楽勝だったね♪」


ユズル『そ…そうだな』


アイ

「さ、晩御飯の買い出し行こうか!今日のメニューは何?」


ユズル『今日はアイの好きな〜…』


《彼女が喜ぶメニューは?》


A・おかずナシ

B・外食

C・霜降牛肉のワイン煮にデザートにはメロンのタルトだよ



…この野郎。


「さぁて、今夜のおかずは何かな〜?」


『それは現実リアルな質問かな?』


「ううん、ゲームの中だよ」


『じゃぁ…Cで…』


「やりぃ!今日はご馳走だね☆」


……この野郎♪



テロリロリーンと、一気にハートが増え、現在三つ目が染まっている。残り二個、早く終わらせなくては破産するぜ。




ユズル『でも手持ちがないから、銀行でお金下ろしてくるね』


アイ

「うん、わかった」







《口座の暗証番号は?》



『ふざけんなぁ!!』


「早く早くぅ〜」


『早くとかじゃねぇから!お前パクる気だろ!』


「…テへ☆……ダメ?」


当たり前だろこの野郎♪



この質問はスキップだスキップだ。



《次が最後です》


おぉ、助かったぁ〜!


《すっかり日も落ち、辺りも暗くなりました。そろそろ帰らなくてはなりません。公園のベンチに腰掛け、今日の事を話していると、そっと彼氏が手を握り、真面目な表情になりました。》


アイ

「ユズルくん…?どうしたの、急にあらたまって」


ユズル

「アイ……」



《デートの締めに、一言甘い言葉を入力して下さい》


…だからふざけんなぁ!



「早く早くぅ!私見ないから」


クルッとテレビに背中を向ける愛。


いや…でも…ねぇ?


さっきまでの流れからしてゲームの内容を現実に捕えやがるし、かと言って…いやいや! だって愛はエン・リューファ、天使ですぜ?


一緒に暮らしてるが、何より俺は人との関わりを避けてきた罰として、女の子との会話がどうも苦手だ…。


学校のクラスでだって男友達としか話さない。


愛とは普通に話しているが、それはコイツが《天使》だからだ。姿形は同じものの《人間》ではない。



ただ、蘇る…。花火大会での、あの変な気持ち。


手を繋がれた時の……今まで感じた事のない、あの変な気持ちだ。


現に、もし今、愛が天界に帰られては…俺は…。




おぼつかない手付きで、セリフを入力していく。




ユズル『オレは』




これは俺の素直な気持ちだ。



ユズル『オレはアイと』




一文字一文字打つ度に、意味が分からない程緊張しているのが自分でもよく分かる。




ユズル『オレはアイと出会えて』




隣で愛が楽しそうに、ワクワクしながら笑っているのが見えた。




ユズル『オレはアイと出会えて……………………』









『できた。見て…良いぞ?』



「う…うん!」


バッと勢い良く振り返る愛。




しかし、その時…




〜プツン〜



…………。


「『はて?』」


一気に黒くなるテレビ画面。そして電気も消え、薄暗くなった部屋の中。


『あぁ、そういや雷鳴ってたんだ。ブレーカー落ちたなコリャ』


「えぇ〜!?なんでこのタイミングで!?もぉ〜雷様の馬鹿ぁ〜!!神様の意地悪ぅ〜!!!」



これは…もしや神様が人間と天使がくっつく事は許さないと言う意味ですか?


それとも、ただの偶然か…。


「譲くん!何て入れたの?口で直接言って!せぇーの!」


『愛の大食いは食費に響きます』


「ウソだぁー!そんなのヤダァー!本当は?さんハイ!」


『言わない…ってか言えない』


「もぉ…こうなったらゲーム通りの展開を再現して最後に特訓した公園行って同じシュチュレーシャンで…」


『それでも言わない♪』



「シールド!さぁ、言うまで出さない…」


『破壊能力♪』


「いとも簡単に壊された…能力使うなって自分で言ったくせにー!」


『それはお互い様♪』



「あぁ〜気になるぅ〜!」






俺は愛と出会えて本当に良かったよ。できる限り…ずっと、このまま…。

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