チョメディー第七話〜父が残してくれたモノ・後編
『いたた…』
「大丈夫か?メディー?」
『あぁ、なんとか』
前回ワープゲートに吸い込まれた俺達。
どうやら御茶ノ○博士君は俺達を裏切ってくれたようだ。
改めて辺りを見回してみると、何もない。
本当に何もないのだ。
真っ白な空間。地面すらも同色と化していて、なんか気持ち悪い…。
ドコまでも果てしなく続く空白の世界に、俺とメルトだけがポツンと浮いている。
「フォッフオォ!」
そして上から聞こえる、このクソムカつく笑い方は…
『てめぇ!ティーのウォーター!』
「ティーのウォーター!?」
『早く出せや!何のつもりだよ!?』
「何って…箱の中身を手に入れる為の試験じゃよ」
『試験はさっき合格しただろうが!』
「馬鹿モン。あれは何の試験を受けるかのテストじゃ。これからが本番♪」
大人は汚ねぇや。
いつも僕達ピュアな子供達の心を弄ぶんだ。
ほら、お前の好きなゼリー買ってきたぞ♪ わぁ! パパ、ありがとう……って、これイチゴ味じゃん! 僕はレモン味のゼリーが好きなのに! パパの馬鹿ぁ!
ってな感じで大人は子供に甘い誘いをした後狩るのさ。
「Aの試練、魔力一点集中」
博士の声と同時に、目の前には馬鹿でかい門が現れた。
中心にはドクロの不気味なデザインが入っている悪趣味な門だ。
『あ!あのドクロはさっき博士が持ってた奴じゃん!』
「そのドクロに呪文をぶつけるのじゃ。ある威力に達すると門は開き、クリアーとなる」
用は俺達の魔力を試してるんだろ?
『久しぶりに俺が行くぜ!』
周りは空白の世界。精神を集中させるには持ってこいの場所だ。
『ガマルト!』
名鎌ガマルト。ただ振るうだけでも衝撃波が飛ぶのが分かった今、もはや恐いモノなしだ!
『うらぁ!』
野球のバットの様に思いっきりスイングしたガマルトからは、さっきより凄い衝撃波が発生した。…しかし、それがドクロに吸い込まれていく…喰われた!?
『なんだよコレ!?』
「アラームラディー!」
寒波いれず、メルト十八番の爆発系最強呪文。
が、それも同じくドクロに喰われてしまった。
「…チッ」
そっか、博士はさっきもこうやって呪文を消したんだな。
おいおい、メルトでも駄目となるとお手上げですよ。
出られねぇじゃん!
「フォッフォッ!まだまだ甘いのう」
『おい、ティーのウォーター!』
「何かね、判断力赤点のメディー君」
『ヒントくれ!』
「フォッフォッ、泣き寝入りかね?残念じゃが、魔力を一点に集中すれば呪文の威力も上がるじゃろう、などと教えるわけにもいかんぞい?」
『クソ!なんてこった!じゃあもう完全にお手上げじゃねぇか!まさか呪文を一点に集中すれば良かったなんて思い尽くはずもないなるほどおぉ!!!』
「しまったぁ!!」
呪文を一点集中か。そういや試験のタイトルがそうだったな。
『メルト』
「あぁ」
『俺はガマルトに魔力を込めてみる!』
「俺は魔力を上げつつ爆発の範囲を狭くし、呪文の効力を圧縮する!」
『ガマルト!』
「アラームラディー!」
衝撃波と爆発が同時にドクロに直撃。
また呪文を喰らったドクロだったが、威力に堪えられず、破壊!
門が開いた!
「フォッフォッ、お見事!メルト君。呪文…特に爆発系の呪文の弱点は、範囲の広さから威力が分散してしまう事じゃった。
範囲を狭めたのに同じ魔力を込める事で威力が上がるのじゃが、まさかイメージしただけで一瞬でマスターしてしまうとは…やはり天才じゃの♪
メディーも、ガマルトをただ振ってるだけじゃ宝の持ち腐れじゃ。武器にも魔力を込めてなんぼじゃからのう」
『そんな御託は良いからさ!早く魔力増強アイテムくれよ!』
「ないわい、そんなもん」
『ホワィ?ティーウォーター?マタダマシタネ…?』
「じゃが、お前らの呪文は強力になったじゃろ?」
大人は汚ねぇや。
「そう落ち込むなメディー。博士に鍛えてもらったと思えば良い」
「フォッフォッ、さすがはメルト君。話が分かる。マルトにそっくりじゃ」
「父上を知っているのですか!?」
「マルトを鍛えたのはワシじゃからな!…もちろん、マディーもじゃよ。あいつらも昔はお前達みたくコンビを組んどった」
ハハハ、親子揃ってお世話になったってことか。
親父もこうやって強くなったんだなぁ。
「Bの試練はもうやる必要もないじゃろう。メディーのガマルトに敵う武器もそうない。何せマディーの相棒だった武器じゃからのう」
『え!?コレって親父のだったの?』
「そうじゃ。鍛冶屋にガマルトを取りに行ったんじゃが、店長がメディーに渡したと聞いてのう。息子も見てみたかったし、こうして修業してやったわけじゃ」
一度ガマルトの威力を体感している博士には分かったのだろう。
…今更だけど、俺そんなスゲェもん持ってんだなぁ。
『じゃあさ!Cの謎の箱って何だったの!?』
「それじゃが…メルト、お前にはコレをやろう」
博士は黒光りしたピアスをメルトに渡した。
コレは…犬? …なんて可愛いモンじゃないな。
邪悪な笑みを浮かべた悪魔デザイン入り。
「ケルベロスのピアスじゃ。試しに使ってみな?」
メルトはこの場で耳にピアス穴を開け、ケルベロスのピアスを付けた。
「Cの箱の中身…それは召喚獣じゃ。メルト、ピアスに魔力を込めてみるがよい。…ちなみにマルトが昔付けていたものじゃ」
「父上が…」
言われるがままに、メルトはピアスに魔力を込めていく。
「解き放て…悪魔の番犬、ケルベロス」
そして魔力を放出。
すると、目の前には体長は軽く4メートルを越え、頭が三つある、凶暴そうな黒い犬が現れた。
「マルト…様?」
喋った!?
犬なのに喋ったよコイツ。
「マルトは父だ。俺はメルト。今日からお前の主人だ。ヨロシクな」
「…ガッテン!」
ガッテン言うた!?
ってか真面目な流れで来てるんだからムリにコメディー入れないで良いから!
「黙れやマディー!今日こそ決着つけんぞ!」
『俺はメディーだ!』
つか親父もケルベロスと仲悪かったんかい!
「召喚獣は主人以外には懐かないからのう」
ケッ、良い喧嘩相手ができて良かったよ!
『博士は最初っから俺達を鍛えてくれるつもりだったのか?』
「フォッフォッ、そうじゃよ?」
『じゃあ、もし…最初の箱選択で不合格だったら…?』
「まぁ、奴らの息子に限って、それはないと信じとったよ。じゃが…もしもの場合、その時でも鍛えてたかものぅ」
なぁんだ。久しぶりにマジになっちゃったじゃんよ。
ま、必死になって頑張ったから価値はあるって事にしとこ、うん。
「ちなみに、奴らも同じく全部って答えたぞぃ?お前らと顔も性格も良く似てるわぃ」
俺と親父が似てる…?
まぁ、ケルベロスが主人を見間違えるくらいだからな。
なんか…嬉しいなぁ。
…親父も俺と同じ歳の頃、マルトさんと博士に鍛えてもらった。
そして時が流れ、今はその子供、つまり俺とメルトが鍛えてもらった。
何か運命的な物を感じるな。
形見となってしまったが、俺には親父が残したガマルトが。
メルトにはケルベロスが。
いつか…俺達は立派なサターンとなります。
どうか、見守っていて下さい。
更新遅れました…。本当はこんなにコメディーをやるはずじゃなかったのに…(笑) 最強武器を手に入れたメディー、召喚獣が使える用になったメルト。能力がコントロールできるようになった譲に、新技を編み出した大樹。 成長した彼らに戦闘が近付いてきましたよ!大樹の新技も、戦闘結果も既に頭の中でイメージできてます。後は書くだけ!メディー達のリベンジなるか!?




