チョメディー第五話〜今回笑いの要素ゼロだぜ
今更言うのもなんだが…
気になる…
気になりまくる。
俺の父さんは名高いサターンと聞いたが、どうゆう悪魔だったんだろう。
なんで俺は未熟児として生まれ、人間界に送られたのだろう。
気になって夜も眠れねぇぜ。
よし、こうゆう時こそ閻魔様に聞きに行こう。
『閻魔様!』
深夜だというのに閻魔様の部屋を訪れてみた。
「ふぁ〜…何?こんな時間に」
閻魔様は寝入る所だったようだ。見かけ十歳くらいの容姿にパジャマ姿の閻魔様は、ちょっと可愛かった。
「ワシが完全に寝ている所で起こしたら打ち首ものじゃぞ?」
サラっと恐い事言わないで下さい。
ってか小学生みたいな顔で一人称が『ワシ』。
さらに語尾に『じゃ』など、顔に合わない事を言う。
『あ、すいません…。ちょっと、父上と母上の事で気になって…』
生まれてこの方、一度も両親の顔を見た事がない。
物心が付いた頃には、既に人間として育ち、自分が悪魔と気付かないくらいだったからな。
「う…メディーの親…」
閻魔様はかなり困った顔をしている。
辞めてよ、なんか聞くの恐いじゃんか。
「メディーももう大人だしのぉ…言ってもいいか」
ゴクリ…。
「まず、これがメディーの父親じゃ」
閻魔様の右手から、ブンッと音と共に、映像が出てきた。
そこには一人の悪魔。
ごっつい顔に鋭い目付き、武将ヒゲが似合うダンディーな印象。
この人が…俺の父親。
「で、こっちが母じゃ」
今度は左手から映像が飛び出す。
優しい顔立ちで、シワが一切なく、まだ若い。
細い目で常に笑顔を保ち、なんでも平気でこなしそうな印象…。
そして………
母親は……人間だった。
「そう、父は悪魔。母は人間。だからメディーは未熟児として生まれたのじゃ」
だから生まれたての俺には尻尾や翼がなかったのか。
「もちろん、これは魔界の掟破りじゃ。なぜ二人とも死んだか、気になるじゃろ?教えてやるわい」
ーーーーーーー
あ、回想シーンに入るぞ?
(そのネタは前回俺がやりました)
メディー父親、マディー。サターンとして数々の伝説を残した最強の悪魔。
しかし、あろうことか、マディーは仕事で命を奪いにいった人間に心を奪われてしまった。
その女性こそが、メディーの母親、沖本 明美さん。
重い病にかかってしまい、二年間の入院暮らし。
その人生のピリオドをマディーが打ちに行ったわけじゃな。
しかし明美さんには霊能力があったらしく、マディーが鎌を振り上げた瞬間が見えてしまったのじゃ。
明美さんは、『これが私の運命』と、マディーにニッコリ笑ってみせたそうじゃ。
その笑顔に心を奪われたマディーは、命を奪う事ができなかった。
それどころか、禁断の呪文で明美さんの病気を治してしまったのじゃ。
こうなればマディーは魔界から追われる身。
結局二人共、追ってに捕まり殺されてしまったのじゃ…。
しかし、明美さんの死体を片付けようとした追ってが、何かに気付いた。
妊娠している事に。
悪魔と人間の子供。
それは人間界にバレてはマズイ。
その追っては、腹の中から子供を引き抜くと、魔界に連れて帰ってきた。
その子供こそ、メディー。お前じゃ。
姿形は丸っきり人間。
悪魔として育てても、自分だけ格好が変だと悟られるだけじゃ。
そこで、人間界に送ったと言うわけじゃ。
ーーーーーーー。
やっと真実を教えてもらった。だが、なぜこんな結果になったのか。
仮に、父さんがあの時、母さんを助けなければ、俺はこの世にいなかった。
魔界の掟は絶対だ。
だが、両親を殺した追ってを怨んでいないかと言ったら嘘になる。
『誰が俺の両親を殺した…?』
「同じサターンのマルト。メルトの父親じゃ」
メルトの親が俺の両親を殺したって言うのか!?
「じゃが、マルトは既に死んでいる。マディーとマルトは親友じゃったからな。同じサターンを殺すなど、辛い仕事を引き受けたのは、外ならぬマルト、自ら引き受けたのじゃ」
…そっか。そんな辛い決断をしたんじゃ責められねぇや。
メルトに当たったって仕方ねぇしな。
『ありがとうございます。閻魔様』
俺は頭を下げると、トボトボと部屋を出て、おとなしく寝床に着いた。
…涙が止まらなかった。