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Mr.NO-GOOD´EX  作者: 慎之介
EXtra
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外伝:それは、あるかも知れない未来の一つ

「違うと言っておるじゃろうが!」


「間違ってないじゃん!」


「じゃから……」


「俺が正しいだろうが! クソジジィ!」


「こ……の……くそガキが」


大量の本が並んでいる部屋で、マリーンが顔を真っ赤にしていますね。


「ダメですよ、ちゃんと賢者様かマリーン様と言いなさい」


「え~……だって~」


「だってじゃありません。はい! 謝って」


「ライブもうぜぇぇ……」


マリーンとライブがため息をつきます。


「わし……もう、こいつの教育係嫌じゃ」


「本当に、ダメな部分ばかり似てきますね」


「なんだ!? 馬鹿にしてるのか!?」


目の前の少年に、二人は手を焼いているようですね。


****


「こら! レオ! 静かにしなさい!」


「姉ちゃん! だって……」


「だってじゃない! なにより、五月蝿くて私に迷惑よ」


「まぁ、レーちゃんの言う事も分かるけどね」


「だろ?」


「でも、ちょっと騒がしすぎるかな?」


「うっ……」


少年は、本を読んでいた少女二人の顔色を伺い、仕方なく自分の席へ戻りました。


「でも、信じらんないんだよ」


「まだ言いますか? あなたは?」


「しつこいガキじゃ」


本を読んでいた金髪の少女が、少し悩んだ後、弟のフォローに入ります。


「嘘だとは思わないけど……。信じられないのよね……」


「も~……。アイちゃんまで」


青い髪の少女は、困ったような笑顔をしています。


「でも、沙織は信じられる?」


「そうだよ!」


三か月違いの姉弟が、青い髪の少女に問いかけます。


「う~ん。確かに、日頃のおじ様を見ていると……」


「ほら見ろ! さっちゃんも言ってるぞ! ライブ!」


「え~……本当ですから」


「説得力ないわよ? ライブ?」


「アイさんまで……」


「若造」


「なんです? 賢者様?」


「馬鹿の歴史は……なかったことにするんじゃ! うん!」


「ちょ……賢者様」


彼の事ですね?


文武共に優秀な三人の子供達……。


その子供達に、この事だけはエデンきっての知識人である二人が、うまく説明できていないようです。


まあ……。


仕方がないんですがね。


「これを何とか伝えるのも、私達の仕事ですよ。賢者様」


「どうしたもんじゃろうな……」


頭を抱えて唸っていたライブが、何かを思いついたようです。


「あなた達三人の、信じられない理由を並べてください」


「なるほどな。一つ一つ誤解を解くわけじゃな?」


「そうです。さあ」


三人が、迷いなく不信の原因をあげていきます。


「年中、ママと母さんに怒られてるじゃん」


「大事な会議の日に、みんなの分まで食事を作って、遅刻って……。国のトップとしてどうなの?」


「あ~……。おじ様は、よく辞表をだそうとしますよね?」


「沙織の言う通りよ。酪農がしたいとか…….居酒屋になりたいとか……」


「俺は、父さんから責任感を感じたことがない」


「でも、おじ様よく働きますよ?」


「使用人とか……どうでもいい仕事ばっかりね……」


マリーンとライブは黙って聞いていますが……。


「レオに剣を教えてるのも、真幸おじさんだし」


「そう! それだよ!」


「お父様は、おじ様の師匠でもあるから……」


「さっちゃん! それも限度があるって! 一回も教えてもらってないんだよ、俺」


「父さんが、現在継承者のはずなのにね……」


「そりゃ、父さんが弱いとは思わないけど……」


それからも、三人は彼の事を……。


「どうするつもりじゃ?若造?」


「え~……」


正確に否定しています。


身内だけに容赦がないですね。


「何一つとして、間違えておらんぞ? 誤解ではなく、真実じゃ」


「どうしましょう? 賢者様?」


「自分の発言には、自分で責任を持て」


「はぁ~……」


「お前も、奴のオフ状態をよく知っておるじゃろうが」


「ええ……誰よりも、ダメな人ですからね……」


「この国にいる間は……」


「ほぼオフ状態ですよね……」


二人は、再び大きなため息をつきます。


「わし……」


「賢者様?」


「わし! 引退する! うむ! 無理じゃ!」


「ちょ! 賢者様ぁぁぁ!」



「ライブ~?」


「ああ……え~……少し、考えさせてください」


「わかったわ。自習でいいのね?」


「はい」


金髪の少女は、すでにかなり威厳がありますね。


当然かもしれませんが。


三人は、それぞれが経済や魔法の自習を始めます。


十三歳。


同じ年齢の三人は、どう考えても年齢に不相応な本を読んでいます。


学園にも通っていますが……。


彼らに、学業としてそれは必要ないのかもしれませんね。


ほとんど、人間関係の勉強の為だけに通っていると、言えるでしょう。


****


「賢者様? どう思います?」


「何がじゃ?」


「レオの事です」


「う~む」


「沙織さんはあの方と、アリスさんのお子さんです」


「もうすでに、普通の神に負けんじゃろうな」


「アイさんも、最高神の子供……」


「将来は、主神級……以上かもしれんな」


「レオだけ、両親の魔力が強いだけの……」


「普通の人間じゃな」


「気が付いていないなんて、言いませんよね?」


「魂に何らかの力を秘めておるな……」


「魔力もすでにAランクを超え始めています」


「今は何とも言えんが……」


「ええ。心をしっかり育てないと、大変なことになりかねませんね」


「親も面倒なら、子も面倒な奴じゃ」


「まったく……」


きちんと勉強をする三人を眺めて……。


愚痴を言っていますが、なんだか二人はうれしそうですね。


****


おや?


その部屋に、兵士らしき人物が走りこんでいきますね。


どうしたんでしょうか?


「大変です! 代表が! 代表がぁぁぁぁぁ!」


「どうしたんじゃ?」


「どこにもいません!」


「ちょ! これから……」


「はい! 各国首脳との会議です!」


「あの馬鹿!」


「若造! 探すぞ!」


「どこをですか!? 気配を消されたら……」


それを聞いていたレオが、呟きます。


「確か……父さん昨日、新作のゲームが発売って言ってた」


「それじゃぁぁぁぁぁぁぁ!」


こんな光景を毎日見ていれば……。


不信感も出てきますよね……。


少しだけ補足をしておくと、態度はよくありませんが、彼もちゃんとこの国をいい方に導いています。


人が思いつかない、人の為になる法を作り……。


皆が笑顔になれるように、頑張ってはいるんです。


馬鹿なことも、よくしますが。


「賢者様! 私は街中のゲームを販売している店、すべてに手配をかけます!」


「わしは、兵を引き連れてあぶりだす!」


彼はいったい何をやっているのでしょうねぇ。


彼らしいですが。


「待った!」


「なんです? レオ?」


「父さんは、そんなに甘くない!」


「ぬう! 確かに……」


三人は、彼の思考を読み解こうとします。


「母さんとママが、今日はいるんだ……」


「見つかれば引き戻すでしょうね」


「奴は人をだます天才じゃ……」


「下手に街中に出てないと思うんだよ」


「「「う~ん……」」」


そこに、彼の娘が口を挟みます。


「父さんなら、まだ城の中じゃない?」


「姉ちゃん?」


「人が出払った後の方が、動きやすいわよ」


「父さんを探すために、みんなが城を手薄にする」


「その間に、隣町まで走る……」


「それじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「オリビアさんと梓さんを呼び戻します!」


「あっ! 俺も行く!」


****


男性三人は、部屋を飛び出していきました。


「はぁ~……父さんが、世界を救ったなんて信じられないわ」


「ふふっ」


「沙織もそう思うでしょ?」


「実は、私……。おじ様のすごいところ、一度だけ見たことあるのよ」


「えっ? 嘘」


「お父様とお母様の仕事について行った時に、一度だけね」


「で?」


「うん。あっちのおじ様なら、信じられるよ。誰が見ても」



「そっちじゃぁぁぁぁぁ!」


「早く! 早く取り囲んで!」


中庭から、マリーン達の声が聞こえます。


彼が見つかったようですね。


皆から必死に逃げています。


「待たんか! アホの子!」


「止まりなさい! ダメ人間!」


「待てよ! 父さん! こ……このやろぉぉぉぉぉぉぉ!!」



その光景を窓から見つめる金髪の少女が、ため息をつきます。


「私には、信じられそうにないわ」


「ふふふっ」



中庭の壁に、息子からのタックルを受けた彼が……。


顔面からですか?


痛そうですね。


歯も折れています。


まあ、すぐに回復するでしょうが。



****



その後、オリビアと梓が彼の前に……。


もちろん彼は正座で、泣きそうになりながら空を見上げています。



今日は快晴です。



いい日になるでしょう。



雨の日も雪の日も、いい日は続くはずです。



これから先もずっと、ずっと……。




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