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Mr.NO-GOOD´EX  作者: 慎之介
EXtra
68/77

エピローグ③

ここは、ある世界のある大陸のできたばかりの国。


その名をエデン(楽園)と言います。


本当に、最近建国されたばかりの国です。


オリビア:プラム……。


間違えました。すみません。


オリビア:シモンズが、いろいろな人や国の助けを借り、建国しました。


飛ぶ鳥を落とす勢いで、国が大きく成長しています。


この国は、犯罪には厳しい労働の処罰がある代わりに、どんな人も受け入れます。


老人、子供も当然ながら、亜人種でも変わりありません。


条件は、働く事。


建国して間もない上に、拡大中ですので仕事は腐るほどあります。


自分に可能な限りで、無理をさせることは絶対にありませんが……。


大工の仕事や店舗の従業員、果ては草むしりなんて仕事までまわってきます。


この国の人は、皆いい顔をしています。


人間関係に悩むことがないように、細心の注意がされていますし、病院や教育といった国の基礎がしっかりしています。


オリビアの方針に従い、泣いている人を一人でもなくそうと国民全体で動いています。


この国で、差別なんてすれば……。


少しキツイ重労働が待っているようですね。


そんな国民はいないようですが……。


この国の一番重要な資金源は、観光です。


オリビアの義理ではありますが、両親が運営にあたるサーカスに、異国から集めた遊具に動植物。


ゆったりと出来る、保養地や海も客を多くよんでいます。


そして、極めつけはチケットを取るのも難しいはずの、大陸一と評判の歌姫が、この国だけで月に一度はコンサートを開いてくれます。


話は変わりますが、この世界では食物連鎖にモンスターが深く関わりすぎて、容易には消すことが出来ません。


その為、世界中でその犠牲者も減りはしていないのです。


これはどうすることも出来ません。


しかし、この国では被害者が一年前から一人も出ないのです。


それどころか、不思議なことにモンスターがほとんど近づいてこないのです。


セシル率いる強力な軍隊のおかげ?


他国へ要請すれば、どの国の軍も借りることが出来るから?


私が手を貸した?


実は違います。


軍のトップにいるセシルですが、マリーン、ライブ共々、オリビアの手の回らない事務処理や、他国との交渉で飛び回っていますよ。


幾度か、Bランクのモンスターが接近したことはありました。


それに気が付いて城門を飛び出した、マリーン達実力者でしたが……。


金色の羽をはやした謎の影が、モンスターを消し去ってしまいました。


いつも、いつも……。


この国は、なぜか世界の意思と、天使に守られているんですね。


理由は……必要ありませんよね?


そんなこんなで、この国はいつも人でにぎわっています。



いますが……今日はまた一段と……。


なるほど、三日後にカーニバルがあるんですね。


レーム大陸から始まったカーニバル。


今年はエデンが主催のようです。


どおりで人が多いはずです。


中でも、広場に設置され名物になっているモニュメントは、その前で写真を撮りたい人達で……。


すし詰めですね……。


写真……撮れないんじゃないですか?


空に向かって刃を構える彼と、それを支えるように両隣には二人の女性。


オリビアと梓です。


この像には不思議な事が何点か……。


もうすでに気が付いた人もいますかね?


この像には、最高神が再現されています。


そして、梓以外誰も知らないはずのもう一つの刃が、彼の腰に再現されているのです。


もちろん、梓の指示ではありません。


この情報は、私や梓といった完全な時空の力がある者しか、知らないはずなんですが……。


私も知らない間に建造されていました。


立札には……。


ある日、大量の金属を担いだ男性が、自分でそれを溶かしながら一晩でこの像を作った……。


男性は名乗ることなく、去っていたそうです。


これは……。


彼でしょうね。


無くなってしまった未来も、時空の力があれば見えるでしょう。



また、人ごみの中には……。


時間の監視は、今日お休みなんでしょうか?


老人と喋らない女性が歩いていますね。


この世界へは入れるように……梓が手を回したようです。


たまの休暇もいいでしょう。


二人も立派な功労者です。


****


お昼休みに出たはずの……。


オリビアが、町の中に見当たりません。


どこでしょうか?


「やはり、ここにおったか」


「あ、ルー様」


「二人の時は、梓でよい」


「はい。梓さん」


なるほど、そうですよね……。


二人は、自作のお弁当を作りある場所の前にきています。


そこは、誰にも触れさせないように、結界で囲った場所。


その結界の中には、岩に刺さった一本の刀があるだけです。


二人がここに来た理由……。


ちょうど一年なんですよ。


ちょうど……。


「この前の約束を覚えておるか?」


「はい」


「では、今日はあやつに出会ってからの話を聞かせてくれ。この前は、お互いに時間切れじゃったからな」


この二人は、親友になってしまったようですね。


同じ男性を、命かけて愛したからでしょうか?


彼の背中を押したオリビアを、梓も認めたようです。


オリビアだけが、梓からすべての話を聞きました。


お互いが認め合った、たった一人のライバルで親友なんですね。


とてもうらやましい関係です。



もし、彼がいれば……。



私は彼とそうなれたでしょうか……。



彼の存在が大きすぎて……。



私の心には、まだ穴が開いているようです。



「俺達も混ぜてもらえますか?」


彼の師と、彼の妻である魔法生命体も駆け付けたようです。


今日は、大事な日ですよね。


****


うん?


あっ!


まずいです!


「なんじゃ!?」


「これは、マスター?」


「見たことがない魔力だ……。だが、主神級かそれ以上!」


突然、それに巨大な戦艦と、ロボット……でしょうか?


強大な力を持った何かが、転送してきました。


まさか……私の外から!?


そんな馬鹿な……。


その戦艦に追われるように梓達に向かっていた、小型の戦闘機が地面に不時着しました。


ハッチが開きますね。


中からは、二人の女性……。


見た事のない服装です。


まるで、宇宙服のようですね。


「アシュリー! 怪我はない?」


「うん……大丈夫」


体の小さなアシュリーと呼ばれた女性が、もう一人の女性に助け出されています。


うん?


見たこともない、高度な機器を取り出していますね。


少し不穏な空気です。


{ふははは! 諦めろ、ゴミ虫が!}


戦艦から、声が響きます。


感じのいい人ではなさそうですね。


「くっ! お前達なんかに負けるか! 死んでも、投降なんてしないわ!」


「ダリア……」


梓達は、それのやり取りを注意深く見ていますね。


{二人だけでか? 人間とはそこまで頭が悪いものか……}


「うるさい! 仲間が……仲間がきっと助けに来てくれる!」


真幸はすでに刀に手をかけ、臨戦態勢です。


{あの場所に残った馬鹿共の事か? くくく……これは笑わせてくれる!}


「何がおかしい!」


「そうよ!」


{あの場所には、我らが軍の半分が集結したのだぞ?}


「うるさい!」


{まさか、誰か生き残れるとでも思っているのか? ゴミ虫?}


「くっ……」


涙ぐんで、黙ってしまいましたね……。


どうやら、ダリアとアシュリーという名の二人は、絶望的な戦いを挑んでいるようですね……。


感じた事のない魔力ですが、二人も人間にしてはかなり強い魔力を持っています。


戦士なのでしょうか……。


ただ、敵はその何億倍の力を持っているでしょうか……。


真幸がいれば、何とかなるでしょうが……。


事情が把握できない四人は、動けずにいますね。


これはまずい……。


私の中に、また争いが?


何てことだ……。


****


「ダリア! 転送ゲート反応が!」


{ふはは! 私の軍が追いついたようだな! さあ! どうするんだ? ん~?}


おや?


そんな……。


「あれ? でも……ゲートが小さい?」


「アシュリー? えっ? これって……」


{総帥……このような反応が……}


戦艦の中の会話が筒抜けですね。


中の人……神は、あまり賢いとは言えないようです。


[聞こえるか? ダリア! アシュリー!]


彼女たちが見ていた機器の画面に、男性の顔がうつりました。


通信機能もついているんですね。


「ドノヴァン! よかった……。逃げ出せたのね?」


男性の顔が……。


[違うんだ]


「えっ?」


[重軽傷者は多数だが……死者ゼロ!]


「うそ……」


[うそなもんか! やってくれたんだよ! あいつが!]


{馬鹿な! 我が軍が人間などに……}


おやおや。


盗聴とはいただけない趣味ですね。


{総帥……その軍から、最後と思われる通信が……}


向こうにも、何か情報が届いたようですね……。


{そんな……何かの間違いだ! 救難信号だと?}


「あいつって……まさかあいつなの!?」


[そうだ! それで……お前の兄さんの形見だった、ブレードが壊れてしまったんだ。すまない]


「そんな事はかまわないわ……」


[よかった……。あいつの出力に耐えられなかったみたいでな。そっちで怒られると……]


「うそ……うそよ! だって……あいつは私達よりも、ずっと弱かったじゃない」


[戦っているところを見れば、納得するさ]


「それって……」


ゲート呼ばれた丸い光から、人影が浮かび上がります。


[こっちには、もうほとんどエナジーが残っていなくてな。話し合った結果、あいつ一人をそっちに送った! 大丈夫だ! 奴ならやってくれる!]




ゲートから、ぼろぼろでドロドロの服を着た青年が出てきました。



「あ~……勘弁しろよ、まったく。こっちは三か月もろくに飯食ってないのに……」



青年は、気だるそうに頭をボリボリとかいています。



そして、ため息をついて……。



「やってらんね~……」




ええ……。


そうです!


彼です!


よかった……。


本当によかった……。


生きて……生きててくれた。


彼の魔力から、情報が私に流れ込んできます。


よかった……。



彼の声を聞いたオリビアは、振り向かずうつむいて涙を堪えます。


梓は逆に空を見上げながら……。


二人の間を、当たり前のように通り抜けた彼は……。


梓が張った結界をデコピンで壊しました。


本当に変わらずむちゃくちゃなんですから……。


「お昼ご飯……ちょうど持ってきてますよ、あなた」


「わしも、手作りの稲荷寿司を用意してある」


真幸とアリスはただ黙って笑っていますね。


「そりゃ、楽しみだ。あの馬鹿殴った後で、もらうよ」


「はい」「うむ」



ダリアと、アシュリーが何かの計器をみて驚いていますね。


「うそ……位相が元に戻ってる」


「じゃあ、まさかここがあいつの故郷なの?」


「あの二人も話しかけてたし……たぶん」


ここは、情報を読んだ私から、少しだけ補足をしておきます。


ありえない事だらけですからね。


無限で分解された彼は、私以外の私と似た存在が作った世界へ紛れ込んでしまったのです。


本当に偶然が重なり……。


その世界には、物質を分解して転送する装置があったんです。


つまり、分解した物質をもとに戻す機能も持っていました。


迷子の彼は、偶然にもその装置で復元されてしまったのです。


ただし……。


毎度ながらの、艱難辛苦。


唯一の救いは言語が、同じだった事だけでしょうか?


その世界では、戦艦に乗る側の神が、自分たちで作った人間を奴隷として扱い、虐げていました。


挙句の果てに、別世界を見つけたので人間たち全員をその移動エネルギーにすると、殺し始めてしまうような世界。


牢屋に投獄され……。


とてもひどい扱いを受けていたようですね。


ダリア達反乱軍に助け出されても、肩身が狭く、これまた蔑まれて、殴られて、蹴られて……。


その世界では、不器用な彼は力がうまく使えなかったようです。


その上、無限の影響でほとんど魔力が残っていない状態。


それでも……。


彼はいつもの通りです。


なんだかんだと文句を言いながら、戦場を駆け抜けます。


彼が戦うのは、力があるからというだけの理由ではないのですから……。


必死に、命の瀬戸際で人に手を差し伸べます。



本当に……。


本当に何も変わらない彼です。



{馬鹿な! お前が何故生きている!?}


「死んでないからに決まってるだろうが! お前は馬鹿か?」


「ダリア見て! この数値!」


「そんな……まさか、あいつの言っていた言葉は……。全て真実だったのか?」



彼は、その世界でも命からがら活躍しました。


しかし、強さ=数値……という、魔力をはかる計器のせいで、ある誤解をされていたんです。


異世界人の彼は、位相というバイオグラフのような線がずれてうつりました。


その上、魔力もその世界ではうまくはかれていないようです。


まあ、彼自身が百分の一も力をうまく使えなかったせいですが……。


この事から、位相がずれているのでダメージが少ない、特異体質なだけの馬鹿。


これが、彼のその世界での評価です。


もちろん……。



それは、間違いですが。



{馬鹿な! こんな数値が……。貴様! いったい何者だ!?}


「ただの人間だよ、この野郎」


元の世界で、魔力が戻ったようですね……。


それ以前に、半分と言っていた軍と戦った時には、かなり強さも増していた事でしょう。


戦いながら強さを増していたでしょう。


{それほどの力を持ったお前が……何故だ?}


「お前らが気に入らね~んだよ! くそったれ!」


{この……この! ゴミ虫が! 何の価値もないお前達が、私に逆らうなど言語道断だ!}


「その何の価値もない俺に……殺された奴は、それ以下って事だよなぁぁぁぁぁぁぁ!」


彼は久しぶりに、自分専用の刃を抜きます。


{こ……攻撃準備!}


「おおおおおおおおお!」


彼は大地を蹴り、空を蹴り、敵に向かい走り出しました。


****


「マスター? フォローは?」


真幸は、刀を抜くと……。


飛んでくるロボットの破片を、衝撃波で切り裂きます。


「必要ないだろう。それよりも、瓦礫でけが人が出ないようにそっちのフォローだな」


「まったく……不器用なお弟子さんです」


アリスは、飛んできたエナジー砲を障壁で空へはじきます。


「何? あの二人……」


「それより見て! あいつの数値……」


「すごい……でも……」


「うん……。まだ、勝てる可能性は二割くらい……。厳しいわ」


その会話を聞いた、梓とオリビアがアシュリーとダリアに話しかけます。


「どうじゃ? おぬしら? わしと賭けをせんか?」


「はっ!?」


そうなるでしょうね。


「私達は、彼の勝利に賭けます」


「わしはこう見えても、この世界の神でな。負ければ、それ相応の代価を渡すぞ?どうじゃ?」


ほら、混乱してますよ?


「でも、私達は負けません。この世に絶対はありませんが、絶対に!」


オリビアは……。


彼の特性に気が付いているのでしょうか?


梓が教えたのかな?


「巨大な敵に、理不尽な力……条件をそろっておる」


「そうですね、梓さん。でも、一番の条件は……」


二人は顔を見合わせて、同時に声を出します。



「「ここに泣いている女性が(おる)いる」」



異世界の女性は、きょとんとしてますね。


「どうじゃ? 賭けにのるか?」


異世界の二人は梓の圧力に、反射的にうなずいてしまいました。


「よし! お前達が負けた時は、笑顔を頼むぞ? それも、飛び切りの笑顔じゃ! いいな!」


そういうと、オリビアと梓は戦いに目を移します。


「さあ行け!」


「私の……」


「わしの……」


「「愛しい……」」




「「最強のダメ男!」」




少し皮肉のこもった呼び方ですが……。


彼女達の言葉には、好意とまだ戦っている彼への思いが詰まっていますね。


それと、一年も帰ってこなかった、怒りも少々。


****


空中では巨大なロボットが、爆散します。


その粉塵から、二人の彼が飛び出しました。


彼お得意の、残像でしょうか?


{な! うて! 両方だ! 撃ち落とせ!}


二人の彼に向かったエナジー砲は、彼の二つの残像をすり抜けます。


町に向かったその力は、真幸とアリスが弾き飛ばしました。



彼は……。


ああ、彼の技は詭道が基本でしたね。


粉塵の中から、刃を構えた彼が飛び出してきます。


もちろん、驚くほどの速度で……。




{う……うわあああああ!}




「逝ってこいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

END4:やっぱりか! ……おかえり

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