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Mr.NO-GOOD´EX  作者: 慎之介
第十三章:時空と真実編
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六話

「くっ! なんだ!」


(落ち着いて!)


分かってるよ!


空気抵抗!?


違う!


魔力の流れに、次元の壁だ!


俺は、自信を覆うフィールドを最大限に引き上げた。


もちろん、灰色の魔力を使っている。


強い力だ、落ちていく力に抵抗できない。


時空魔法とも違う……。


純粋な圧力……。


この!


(駄目!)


おおおおおおお!


握っていた刃を、魔力わざと逆らわせ減速する。


両足はもちろん、体全体で圧力に抵抗する。


それにより、魔力との摩擦が上昇し体表面を焦がしていた。


(このままじゃ! 塵に……)


「こな……くそ! だらぁぁぁ!」


障壁を展開させた。


出してすぐに粉々になってしまうが……。


一気に出せるだけ。


五十枚の障壁を展開させた。


それにより一瞬出来た足場。


(嘘……)


圧力と魔力を、刃で切り裂いた。


それにより、軌道が変わっる……。


何とか……。


(むちゃくちゃ……)


はぁ!?


助かっただろうが!


師匠にスマートには、俺には無理なんだよ!


うん?


熱……あついぃぃ!


空気抵抗!?


(次元の壁も一緒に切り裂いたようね)


どっかの世界か!?


真っ赤になった、俺周辺の空気。


やべっ!


物理法則で燃え尽きるかも!


ふん! がっ!


俺は、空中を全力で蹴り続ける。


止まれ! 止まれぇぇぇぇぇぇぇぇ!


完全に殺し切れていない、さっきの圧力と魔力で……。


うまくブレーキが利かない。


地面にクレータを作り、着地した時には皮膚の五分の三が炭化していた。


でも……。


助かった~……。


****


その場で、目を瞑ると回復と復元を同時に行う。


(貴方といると、驚くことばかりだわ)


ああ、そうですか~。


あれ?


師匠から離れても、会話が出来てる?


師匠達の気配はまだないよな?


(左腕を見てみなさい)


はい?


真っ暗で見えないです。


俺が着地した世界は、夜だった。


(そこは、何とかしなさいよ)


仕方なく、俺の着地の影響で火がついてしまった木に近づき確認する。


なんだこりゃ?


銀色の……吹き出物!?


(違います! それが、私の簡易コアです!)


あ……。


この箇所は……。


もしかして、最初の戦闘で敵の攻撃だと思っていたのは……。


(乱暴になってしまいましたけど、あの時はあれ以外選択肢がなかったんです)


敵の攻撃だと思ってた、銀色の散弾は……。


俺を助けようとした、アリスさんだったのか……。


もしかして、怪我の回復が遅かったのは……。


(貴方の魔力を使って、この仮のコアを作っていたのよ)


それで、復元の光が消えたのか……。


なるほどね……。


確かに、素手で力もまともに使えないのに師匠たちに勝てるはずがない。


ふぅ~……。


師匠。


(貴方はそこで立ち止まる?)


いいや!


進む。


(いい答えです。では、あなたに渡すべき物があります)


渡す?


山火事にならないように、あたりの火をけし、刃を鞘へと戻した俺は、その場から離れる。


現地の人間と接触してる場合じゃないし、いつの時代かもさっぱりわからないからね。


(マスター……貴方の師からの……記憶です)


師匠の記憶。


(もちろん、すべてではありません。私がともにあった間だけの情報です)


それは……。


(もちろん、あの戦いの記憶もあります)


戦いの記憶……。


師匠やルーが俺に望んでいる事……。


悲しみや絶望を味わう時間も……。


無駄って事ですね。


師匠!


確かに、泣きたくなるような現実だ。


でも、それは今は許されないんだ。


俺がやらなきゃいけないこと……。


師匠達を倒して……ユミルを殺す。


都合よく、ユミルを殺せば師匠たちが元に戻るなんて、ありえないだろうな。


でも……だからこそ、俺が師匠達を殺す。


俺が背負わないといけないんだ。


(満点! いえ、百二十点です! 馬鹿弟子さん)


バカっていうな、コラ。


(今、私が貴方にすべてを任せることを、いくら謝っても意味がないと思います)


ああ。


必要ない。


やってやる。


俺がやらなきゃいけないなら……。


いや、俺がやるんだ。


(では、受け取りなさい)


俺は、大きな岩の上で胡坐をかいて座り、目を閉じた。


師匠の記憶が、流れ込んでくる。


凶暴な星へと降り立った人々は、滅亡寸前だった。


そこで、その世界の賢者が世界の魔力を流用する装置を開発した。


魔力の強いものを、位相をずらしたもう一つに星に隔離したんだ。


そして、二つの同じ星はそれぞれの進化を遂げた。


怪物達の食物連鎖が繰り返される世界と、人間が文明を広げていく世界。


狂った神は、もちろん凶暴な世界へと追いやられた。


そして、装置を作動させた賢者自身も。


再び、世界が元に戻った時のために、賢者は魔法生命体のアリスさんを作った。


今の俺には理解できる。


悪意だ。


神も賢者も、悪意に飲み込まれてしまったんだ。


狂った神が求めたのは、戦い。


己よりも強い相手と、思う存分戦打事だけ。


その先にある自分の死も、どうでもよかったらしい。


いや、それを望んでいたのか?


狂った賢者が求めたのは、自分に苦痛を強いた世界への復讐。


そして、自分が神になること……。


二つに分かれていた世界は、元に戻り人間は凶暴な生物たちに駆逐されていった。


師匠はそんな狂った世界で、戦ったんだ。


偶然手に入れた神の破片で、死なない体になり。


狂う前の賢者の遺産である、アリスさんと共闘して……。


親から受け継いだ剣技で、神とも賢者とも戦った。


勝った師匠に残されていたのは、神を師匠が取り込んでしまったことにより、魔力がなくなった滅びた星だけ。


その時、アリスさんも一度コアを破壊されて死んでいる。


(ここからは、後で教えてもらった情報です)


偶然により、異世界に召喚された師匠は、悪意の存在に気が付いた。


そして、死なない体で戦い続けた。


ただ、世界を守るために。


アリスさんの魂は……。


そうか、ルーが保管していたんだ。


あれ?


いや、今はいいか……。


特殊な存在だったアリスさんを、師匠は見事に復活させた。


苦労して……。


何億年も苦労して、こんな最後かよ。


神様の……馬鹿野郎……。


最後の戦い。


俺がいなくなっても、師匠達は善戦した。


あの場に集まっていた神は、そのすべてをかけて戦った。


それでも、次々に仲間が倒れていった。


メーヴェルさんやエルミラも……。


そして、最後の瞬間。


全てをかけた全員の攻撃……。


これが決まればもしかしたら……。


でも、もしなんてないんだ。


乱入してきた、五人の死神達に体勢を崩された攻撃は不発。


全ての力を使った師匠たちは……。


悪意に飲み込まれた。


残酷だ。


残酷すぎるよ。


守りたかったものが、こんな事で……。


(大事なことは……伝わりましたね?)


ああ……。


(きっとこの記憶は、貴方の力になるでしょう)


もちろん、無駄になんかしない。


悪意への憎悪。


そして、この記憶の本質。


師匠がかけた、五億年の研鑚。


次元流の全てが、俺へと受け継がれた。


すげぇぇよ。


師匠、あんたやっぱすげぇぇぇよ。


最強の剣技を……。


さらに進化させようとしてたのかよ。


(もう、あなたが正当な後継者ですよ)


ああ……。


分かってる。


俺が行くよ。


最強のその先に……。


(はい)


おれは、その場で修練を行う。


体を動かすわけではなく、その場でそのまま目を瞑り……。


力を確かめる。


そして、イメージトレーニングに、魔法の訓練、戦いの作戦を練る。


これを同時に行い続けた。


ふと、目をあけると俺の体から噴き出していた灰色の魔力は、黄金に輝き始めていた。


まだだ。


もっと、先に……。


もっと、もっと先にあるものにたどり着くんだ。


一昼夜……。


俺は、不動の修練を続けた。


****


ん?


なんだ?


弱いせいで、感知が遅くなったが人の気配に目を開いた。


ガキ?


(そのようですね)


木の陰から、恐る恐るこちらをうかがっている。


何見てるんだ?


(傍から見れば、魔力で輝くあなたは不思議にうつるんじゃないですか?)


まあ、確かに……。


向こうに行け……。


って、こっちから話しかけるのもあれだしな。


まあ、ガキ一人に見られたからって、困ることもないか。


俺が再び目を閉じようとした瞬間、ガキは意を決したように俺の前に走ってきた。


何?


てか、過去のはずなのになんで今回は半透明じゃないの?


ここで、ガキと話して過去変わっていいの?


(もしかすると、この世界は時間の流れとはあまり関係のない世界、なんでしょうかね?)


よくわからない。


確かに、魔力はあまり感じない世界だけど……。


「天魔殿!」


はい?


天魔?


人間ですけど?


(この言語は……)


ん? そういえば、俺の世界の言葉と一緒だ。


(私達の世界とも同じです)


おいおい。


また、何かの因果って奴か?


「お願いがございます! 私に! 私に力をお与えください!」


はっ?


なんだ? このガキ?


頭がわいてるのか?


(少なくても、あなたを人間とは見ていないようですね)


ですよね~。


う~ん……。


よし!


(どうするんですか?)


無視します。


目の前で土下座したままのガキを無視して、修練を……。


はぁ~……。


(どうするつもりですか?)


流石に二時間土下座は、きついみたいだな。


プルプル震え始めてる。


はぁ~……。


どうするかな?


影響を与えていいのかな?


てか、軽く脅して追い返すか?


俺が、目を開いている事に気が付いたガキは……。


「どうぞ! 召し上がりください!」


米?


懐にしまってあった、食料を差し出してきた。


****


……。


食べちゃった。


「で? 名前は?」


「はい! 遮那しゃなと申します!」


「で? なんで力が欲しいの?」


「私の父は、戦で死にました。母は……母は、私を守るために身を怨敵へと捧げております」


小難しい喋り方するガキだな……。


(わかりませんか?)


流石に、わかるよ。


てか、たぶんこのガキ頭がいいな。


(そうみたいですね)


大事な伝えたいポイントだけを、俺に伝えた。


父親の敵である敵がいて、そいつを倒して母親を取り戻したいってところか?


でもな~……。


う~ん……。


「天魔様の、超常を欲しいとまでは言いません。少しでも……」


俺の前に立っているガキは……。


十歳前後かな?


唇を噛みしめて、震える両手を必死に握っている。


う~ん……。


「頭は下げなくてもいい」


考え込む俺に、ガキは再度土下座しようとしていた。


俺はある光景を思い出す。


(そんな出会いだったんですね)


ああ……。


俺も、このガキと全く同じように、師匠に縋ったんだ。


師匠……。


もし、俺が過去に干渉してしまうと……。


なんて、俺が考えるのが間違いなんだ。


もしも運命が決まっているなら、俺はやりたいことをやるだけだ!


俺は……。


「俺にはあまり時間がない……。それでもいいか?」


師匠が答えてくれた通りに、ガキに言葉を向ける。


そう、この言葉から俺の剣が始まったんだ。


「よろしくお願いします!」


「はいはい。じゃあ……」


俺は、俺にできることをした。


ガキに剣を教える。


本当に初歩の初歩だけだが、少しは役に立つだろう。


毎朝早くから、ガキは俺の前に修行に来る。


不動の修練を続けている俺だが、気になった点は指導した。


へっ……。


お前は知らないだろうが、これは最強の破壊神が使う剣なんだ。


ありがたく思えよ。


軌道を変えて、時間がずれたせいだろうか?


師匠達は、まだ来ない。


この世界に、迷惑をかけたくないなんて言ってる場合じゃない。


時間流の中で、俺に勝ち目はまずない。


この世界で迎え撃つんだ。


俺が、あの人を止めるんだ。


ん?


「どうしたんだ?」


「少しだけ……もう少しだけ……」


夕暮れになると帰っていくガキが、その日は当たりが薄暗くなっても帰ろうとしなかった。


「何かあったのか?」


「……実は……」


現在居候している寺の僧と、何かもめて帰りたくないそうだ。


やっぱり、ガキか……。


「すごい! 流石は天魔様……」


俺は、人間です。


わざわざ説明はしないけどね。


俺が担いで戻った猪を見たガキが、びっくりしている。


今日は、これが晩御飯。


「えっ……あの……えっ?」


「なんだ?」


「今のが天魔様の剣技ですか?」


「ただの解体だ」


ガキは、一秒もかからずに猪をさばいた俺に……。


(まあ、驚くんじゃないですか? 普通は)


このガキが、いちいちオーバーリアクションなだけだよ。


それを、たき火で焼いて食べる。


俺の食う量にまで、いちいち反応するなよ。


(完全に人間じゃないと思ってますよ)


はいはい。


もういいよ。


ん?


「何読んでるんだ?」


「これは、兵法書です」


力が欲しいか……。


う~ん……。


なんて書いてあるか、さっぱりだ。


(私にも読めません)


この世界の文字なんだろうな。


「つまり、ここで右翼の陣形を……」


俺が興味ありげに見ていると、ガキが書いてあることを説明してくれた。


この世界に、魔法はないんだな。


(そのようですね)


「あのさ……。それ、後ろから攻め込めばいいんじゃないか?」


「後ろ? しかし、そのような卑怯な真似は……」


おいおい。


「これ、戦争の戦術だろ?」


「はぁ……」


「殺し合いに、卑怯もくそもあるかよ。勝った奴のいう事が、正しくなっちまうんだよ。たとえ正々堂々戦っても、負ければ卑怯だったってねつ造されることだってあるんだぞ?」


「なるほど……」


「で、そこは槍でも持って待ち伏せれば……」


「では、この場合はどのように?」


「夜の闇にまぎれて、少数でいいから伏兵を潜ませてだな……」


ガキが眠気に負けるまで、ガキと兵法とやらの話をしていた。


****


俺は、ガキが眠ってから修練を再開する。


俺には、もっと力が必要だ。


師匠達に対する、作戦も立てたが……。


勝率は笑えるほどしかない……。


「……うん?」


眠っていたガキが起き上がり、目をこすっている。


トイレか?


草むらの入ったガキを見て、再び俺は目を閉じた。


って……おい。


用を済ませて帰ってきたガキ……。


寝ぼけたガキは、俺の太ももを枕に眠り始めていた。


邪魔すんなよ。


はぁ~……。


「おい」


「うぅん……天魔様……」


うっすらと目をあけたガキは、笑ってるよ。


なんだよ?


「天魔様は、私の知る他のつわもの達と全然違う」


はっ?


寝ぼけるなよ、ガキ。


てか、何が違うんだよ?


「皆、独特の圧力があって、恐怖で近寄りがたい。まるで、鋭い刃物のようです」


まぁ、強い人独特のオーラはあるよな。


てか、俺にはないの?


確かに、よく人に舐められるけどね……。


「そんな人達より、天魔様が強いのは私でもわかります。なのに、こんなにも優しくて、安心できて、引き寄せ……られ……る」


おいって!


どきなさいよ~!


ガチで寝るなよ!


もう少し敬おうよ!


一応、師匠っぽい事してるじゃんか!


(でも、この子の言う通りです)


何が?


(その柔らかな柔軟性ですよ。天地と一体となったような、自然の強さ)


自分じゃわからないよ。


そんなの。


(……マスターでさえ、まだ鋭い部分が残っています)


そっちの方がいいんじゃないの?


なんか、格好いいし。


(そんな貴方だからなんでしょうね。きっとそれは、貴方自身を支える力になりますよ)


抽象的すぎて、何を言いたいかさっぱりだ。


俺は、まだまだ弱いんだよ。


まだな。


「……母上……」


眠っているガキが、涙を流した。


てか、せめて父上だろうが!


俺は、男なんですけど?


(ふふふっ)


このガキも、ガキにしては苦労してるんだろう。


「ふん……」


俺は、目を瞑り修練を再開する。


ガキを起こさないように、そのまま。


(マスターもそうですが、お人よし)


うるさい。


****


翌日、俺は木刀で木を斬り捨てる。


「こ……これが、奥義!」


「そうだ。奥義は技であって技じゃない。自分自身の体をいかに使うか……。それだけだ」


「心得ました」


「今、見せた技も……生涯に一つできれば、普通の人間には十分だろうよ」


「はい! しかし、すべての技と名は記憶いたしました」


「まあ、どう使うかは任せるが……」


「なんでしょうか?」


「出来れば、弱い者を虐げる為じゃなく、守るために使ってほしい」


「はい……。あの……」


「なんだ?」


「この流儀に、名はないのですか?」


「次元流。最強の剣技だ」


「しかと……心に刻みました」


一週間ほど、ガキに手ほどきをした。


まあ、どこまで使いこなせるかは知らないが、十分だろう。


ちょうど、時間も来たみたいだしな。


ガキに修行の終わりを告げ、寺に帰るよう言い聞かせた。



巨大な悪意の魔力が三つ。


戦いだ。


(ええ)

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